魔族の宴
着替えを済ませてちょっと休んでから、みんなで夕食をとることになった。
もちろん魔王であるお父さまも一緒だ。
離宮の庭に長テーブルと長椅子を並べて、そこでみんな同じ料理を大皿からいただくスタイルだ。
まるでヴァイキングの宴会みたいだ。普段はお父さまと二人だけなので、ちょっと楽しい。
「おとうさま、どうしてきょうはみんなでたべるの?」
「ん……そうか、そなたは初めてであったな」
お父さまは目を細めて言った。
「特別な日にはこうして宴を催すのが魔族の習わしなのだよ」
そんな習慣があったとは。
私が三歳のお披露目の際もこうして宴会をしたらしい。なにそれ聞いてない。絶対楽しいじゃん!
まあ、私は疲れて寝ちゃった(とお父さまたちは思ってる)ので仕方ないんだけど。
戦士団の人たちは乾杯して騒いで歌ってまた乾杯してと大いに盛り上がっている。
さすがに魔王であるお父さまと私はさすがにそこには混じれず、一段高いところにあるいわゆるお誕生日席でそれを眺めた。
時折り、戦士団の人が私たちの前にやってきて魔王を讃える言葉を告げて乾杯したり、武勇伝を語って乾杯したりした。ていうか、ほんと乾杯好きだな。
そうしているとニコラスのお父さんこと戦士長さんがやってきた。
「陛下、この度は我ら鉤爪の戦士団をお呼びいただき感謝いたします」
「そなたらは城の守りの要だ。鉤爪の戦士団があるからこそ他の戦士団も前線に向かうことができるのだ。だが、たまにはこうして外に出るのも悪くあるまい」
「はっ! 仰る通りであります」
「今宵は多少羽目を外しても目を瞑ろう。大いに楽しむがよい」
「ありがたき幸せ!」
お父さまは威厳を感じるような言葉で戦士団を労う。
さすがは魔王って感じだ。普段は眉間あたりに苦労を滲ませたような顔をしてるのに。……主に私のせいかもしれないが。
「どうしたアリステルよ。私の顔に何かついているか?」
そうやってマジマジと見ているとお父さまが微笑みながら聞いてくる。
「おとうさまがすごくまおうっぽいなとおもってみてました」
「いや、ぽいではなく実際に魔王なのだが……」
何を言っとるんだ。みたいな顔をされてしまった。
「姫様には、父君としての陛下のお姿にしか馴染みがないのでしょう」
戦士長さんが豪快に笑いながら言った。
確かにそうかもしれない。基本的にお仕事中は邪魔しちゃダメって言われてるしね。けっこう邪魔してる気もするけど。
「姫様はご存じないでしょうが、陛下もかつては戦士団に所属しておられたのですよ。そして剣の腕では並ぶ者はいないと言われたほどお強かった」
「え、そうなの!?」
それは以外だ。お父さまってどっちかっていうと穏やかで細身だからきっと戦うにしても後衛で魔法をピシュピシュ撃ってるようなタイプかと思ってた。
「そして、亡くなられた妃殿下の護衛として召し上げられたのをきっかけにお互い愛を育まれ──」
「こ、これ戦士長よ! そのくらいにしておけ!」
なにそれお父さまってば婿養子的なアレだったの!?
しかも、もともとお母さまの護衛だったとか、ロマンチックすぎる!
めちゃめちゃ続きが聞きたいんですけど!
「そんなに期待を込めた目で見てもダメだぞアリステル。この話はお前がもっと大きくなってからだ」
目をキラキラさせながらお父さまを見上げてみたけど、あっさり却下されてしまった。
仕方ない。後で誰か別のヒトに聞こう。
そんなわけで宴は大いに盛り上がり深夜まで続いた。……らしい。
私は途中で眠くなったのでエルマに寝所まで運んでもらって、そのまま朝までぐっすりだった。
そして翌朝。ついに私たちは『人間』たちと式典の場へと向かった。
魔王の恋の物語はそのうち書きたいですね。




