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正しい勇者の倒し方  作者: 冷田和布
魔族のお姫様
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勇者の真実

 私たちが『勇者』?

 なにそれどういうこと!?


()()()()()はぁ、邪神と戦うために女神様に呼ばれて別の世界からこの世界にやってきたのぉ。その頃は『勇者エインヘリヤル』って呼ばれてたのよぉ」

「べつのせかいからよばれた……?」


 それって、私の状況と似てない?

 私の場合は喚ばれたっていうよりアリステルとして()()()()()()()わけだけど。

 もしかしたら最初の魔族たちがいた『別の世界』っていうのは私の前世と同じ世界なのかも。


「そのゆうしゃだったっていう“さいしょのまぞく”のヒトたちってどうなったんですか?」

「邪神との戦いで『大樹』が折れちゃったせいで女神様とこの世界の繋がりが途切れちゃったのねぇ。それで元の世界に帰れなくなっちゃったのよねぇ。だからそのままこの世界で生きていくしかなかったみたいよぉ」

 

 つまり、その彼らの子孫が私たちってわけね。

 でも、だとしたら気になることがある。


「なんでいまはにんげんとてきたいしてるの? このせかいをたすけたんでしょ?」

「私たちもぉ、詳しくはわからないのぉ。この『大樹の知恵』にはそのあたりのことだけがなぜか欠けているのよねぇ」


 『大樹の知恵』っていうのはこれまで捧げられた霊核に刻まれていた記憶の蓄積だってスウェルさんは言っていた。

 ということは、最初の魔族──当時は『勇者』だったらしいけど──そのヒトたちの霊核は捧げられなかったってことなのだろうか。

 お城にあった歴史書は片っ端から読んだけど、肝心なところが抜け落ちていたのはこういう理由だったのか。


「じゃあ、このせかいに『ゆうしゃ』はもういない……?」

「『勇者』を召喚できる女神様がこの世界にはもういないからねぇ。いないんじゃないかしらぁ」


 じゃあ、私がお披露目で見た『あの光景』はなんだったのか。

 てっきり未来の出来事だと思いこんでたけど、そうじゃなかった……?


「アリステル様、大丈夫ですか……?」


 考え込む私を、銀髪狼耳ショタっこが心配そうに覗き込んでいた。

 この生活を守りたくて始めた『打倒勇者』活動だけど、それがただの取り越し苦労だとわかった今、なんとも言えない徒労感が私の胸におちていた。でも……ま、いっか!


「ゆうしゃがないならわたしがしんぱいすることなんてないわよね! ばんじかいけつ! もんだいなし!」

「よかったぁ、アリステル様が元気になって」

「あら、しんぱいしてくれたのねニコラス。ありがとっ」


 気持ちも切り替わったし『勇者』のことはきれいさっぱり忘れよう。

 あらためてこの異世界ライフをエンジョイするのだ。


「満足したようだな。ならばそろそろ城に戻るとするか」

「うん! そうしましょ。あ、かえりにまちによってもいい?」

「ああ、少し寄り道をするくらい構わんだろう」

「やった! ニコラス、まちをあんないしてちょうだい!」

「は、はい、アリステル様!」


 魔王の娘である私の短い戦いは終わった。

 これからはなんの気兼ねもなくお姫様ライフをエンジョイするのだ!


 『正しい勇者の倒し方』はここに完結しました!

 ご愛読ありがとうございました!













「あ、そうだ。もうひとつだけ『たいじゅ』にきいてみてもいい?」

 

 帰る間際、ふと思いついたことがありイルミナ様にお願いしてみた。

 

「いいわよぉ、でもさっきみたいにならないよう気をつけてねぇ」

「だいじょうぶだいじょうぶ。なんとなくコツはつかんだから」


 てててっと『大樹』の根元まで走って戻ると、私はふたたびその美しく透き通った幹に触れる。

 質問はもう決まっていた。


 ──『地球』『日本』『東京』……それから『遠山リカ』。この中の言葉をどれか一つでも知ってる?


 この聞き方なら、答えはほぼYESかNOの二択だろう。

 そもそもこれまでの説明から考えると『大樹の知恵』がこれらを知っている可能性は低い。

 だからこそ、あえて質問した。

 『大樹』にハッキリと示してほしかったのだ。

 『遠山リカ』はもういない。私は『アリステル』なのだと──


『──リカ・トオヤマ』


 それはひどく無機質な声だった。

 しいて言えば女性の声で、どこかで聞いたことがあるような……だけど、親しみや懐かしさはあまり感じない。

 むしろ不安や焦燥をかき立てるような響きがあった。


『委譲──証明──確認──プロセス──開始──承認』

『源理──機構──再起動──承認』

『&%$>?権限──確認──=00)$>?'%(&△──』


 意味不明な言葉が頭の中に流れ込んできた。

 どういうことかわからないけど、何か大変なことが起きている気がしてならない。


『遠山さん……ごめん』


 え……。

 今度は男の人の声だった。

 先ほどまでとは打って変わって感情に溢れた声。

 それも、ひどく落ち込んでいるようだ。

 私のことを知っているようだけど、いったい誰なんだろう。

 それになぜ謝るんだろうか。

 

『せっかく君が────僕たちのせいだ────』


 声は途切れ途切れでちゃんと聞き取ることが出来ないのがもどかしい。


『君は怒るかもしれないけど、こうするしかないんだ。こうするしか……』


 ねえ待って。何があったの?

 あなたは誰!? 『遠山リカ』とどういう関係なの!?

 お願い! 答えて!


「アリステル様!」

「ニコラス……?」


 急に現実に引き戻された私は、思わず何度も目を瞬かせる。

 よく見ればニコラス以外のみんなも何か言いたげな様子で私を見つめていた。


「えっと……なにかあったの?」

「なにかあったかと聞きたいのはこちらの方だ」

「姫様ぁ、いったい何をしたのぉ?」


 ティウル先生どころか、イルミナ様まで疑うような目を向けてくる。

 私は無実だ! ていうか何が起きたっていうのよ!


「姫様がふたたび触れると、『大樹』から見たこともない強い光が発せられたのです」


 なんじゃそりゃ!?

 スウェルさんが言うには『大樹』全体の光が強くなった後、幹や根から何本もの光の線が空に向かって伸びていき最後にはすべての光の線が合わさって巨大な光の柱になったのだという。

 なにそれ私も見たかったんですけど!


「姫様はぁ『大樹』に何を聞いたのぉ?」

「えーと……」


 どうしよう。いきなり前世の話をしても信じてもらえそうにないし、それどころか変人扱いされそうだ。

 そもそもどうやって説明すればいいのかわかんないし。

 よし、決めた! すっとぼけよう!


「じ、じつはわたしもよくわからないのよー。きこうとおもったらニコラスによばれて……」

「本当に、姫様は心当たりがないのですか?」

「ないない。ほんとこれっぽっちもない」

 

 そうやって適当に誤魔化してみたけど、みんな微妙に私を疑っているようだった。

 ひどい信用のなさである。

 とくにスウェルさんにいたってはあからさまで、『大図書館』を後にするまでほっぺたあたりにずーっと刺すような視線を感じていたのだった。

完結しました!(ウソ)

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