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正しい勇者の倒し方  作者: 冷田和布
人間の世界へ
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旅は続く

「ええっ! 商隊、もう出ちゃったの!?」


 やっとのことでイルランド王都にたどり着いた私が聞かされたのは、商隊がタッチの差で出発してしまったという話だった。


「次に商隊が来るのって……」

「一ヶ月後だね」


 受け付けのおじさんから無慈悲な現実を聞かされた私は商会を後にし、トボトボと街を彷徨う。


「商隊が昨日出発したばかりだなんて……そうだ! りっくんに乗せてもらって今から追い掛けるってのどう!?」


 りっくんがカバンからひょっこり顔を出す。


「そんなことに妾を使うでないわ。だいたい、どうやって追いついたか聞かれたらなんと答えるのじゃ」

「う……」


 確かにりっくんの言う通りだ。


「でも、一ヶ月も先なんて……ここで待つにしてもさすがにお金が保たないよ……」

「金がない? 例の金貨はどうしたのじゃ?」

「忘れてきちゃった……」

「大事な旅の資金を忘れてきたじゃと!?」

「し、仕方ないじゃないドタバタしてたんだから!」


 持ち歩くのは危険なので屋根裏部屋に隠しておいたのが仇となってしまった。


「金貨なんてこっちじゃ使えないってマトゥーカさんも言ってたし。どっちにしろお金は足りなくなってたのよ」

「だからといって、そなたのうっかりミスの言い訳にはならんぞ」


 誤魔化しきれなかった。

 

「ぜんぶあの陰険眼鏡(ルエイム)のせいよ! あいつが邪魔しなきゃ商隊の出発に間に合ってたし、金貨を置いていくことにならずにすんだんだから!」


 許すまじルエイム・ランフォード。

 そのうち仕返ししてやる。


「そなたが誰に責任転嫁しようと勝手じゃが妾はメシ抜きは嫌じゃぞ」


 養ってもらってる身分のくせにさっそく文句を言うりっくん。


「私だって一ヶ月も宿無しは嫌よ」

「じゃあ、どうするのじゃ?」


 お金が足りない。

 なら、やることは一つしかない。


「働く……しかないよね」


 おかしい。

 私、お姫様のはずなのに。

 悠々自適な第二の人生を送るはずだったのに、なんか普通に働いてばかりだ。

 おまけに紆余曲折ありまくりで、どんどん当初の目的から逸れていっているような気がする。

 この先、聖王国にたどり着いてもこんな調子だったりして……。


「いやいや! 諦めちゃダメよ私! 勇者を倒すんでしょう!」


 決意表明という意味もこめてあらためて自分に言い聞かせた。

 道のりは険しいがここで立ち止まっているわけにはいかない。

 遠回りでも、地道にコツコツ積み重ねていくしかないのだ。


「そういうわけだから……まずはバイト探しよ!」


 勇者を倒すための第一歩はここから始まるのだ。

第一部完結です。

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