第一章軍学校入学
ライカルたちは偉大なる四皇帝像前にて合否を確認した。成績を見ると上位一割の中でも十位であり特待生扱いでの入試となった。
入学式ではとくに変なことはなく、生徒代表挨拶等の至って普通な入学式となった。
そして入学後は弓兵や歩兵部隊等の士官となるに必要な知識と騎乗、野外実習、そして間引きされた剣等を使う戦闘技能訓練、身体基礎向上訓練等と普通教育機関と同じ基礎授業と多岐に渡る教育プロセスを踏み、時折、学校祭と呼ばれるような行事等に参加し仲間と仲を深めていった。
そして軍学校に入学し、四年がたち、数週間したら進級し、ライカルたちが最高学年となろうとしていた頃、国を震わす大事件が起ころうとしていた。それは公国にいる間者より伝えられたひとつの情報に起因する。
「公国・サルグルーフェ公が四帝連合に侵攻する下知を下した。」
その情報を受け取った瞬間帝都カルーフェには激震が走った。何故なら、公国はつい昨年、カラーズリス帝国が誇る若き新星『殲戟』ライザージルと、その副官で剣聖と切り結び、ボロボロになりながらも生還を果たした勇者『斬剣』アーシュの率いる帝国軍主力60000と公国が誇る『剣聖』と並ぶ大英雄『破槍』ザルグース=フォン=ゴルークラス率いる50000強の 公国軍が三ヶ月近く激戦を繰り返し、遂に『破槍』が『殲戟』と正々堂々と武器を交え、その「華槍」とは比べ物にならぬくらいの絶技にて、ライザジールを破り、戦争に勝利した。
その勝利に公国が熱狂し、今なおその熱を保っているため、此度の侵攻も、かつて四帝連合が経験したことのない程の物量、質を持ったものになることが目に見えていたからである。
そして、今回の公国はラールサール平原の戦いのように北部の一部を掠めとるだけのようなものを狙うはずがなく、確実に北部で最大都市ケルメルデ及びラスクール要塞都市群、ラズガーラン城をはじめとする北部要塞群まで奪取するようなものくらいのはずで、この四帝連合の喉元に刃を突きつけようとしてきたのである。そして駄目押しと言わんばかりに続報が入ってきた。それは公国軍の規模とそれを率いる者の名であった。
『公国軍実戦部隊推定規模 およそ75000/内訳 公都守備軍25000、公国各地余剰戦力10000、公国軍南部方面軍10000、四帝連合方面軍30000。非戦闘用員推定規模(衛生兵、兵站要員、工兵等)約25000、公国軍侵攻部隊総大将ローエス。』
その一報は四帝連合に更なる絶望を味会わせた。総大将ローエスもさることながら、その軍の規模が圧倒的であった。推定なので多少前後するであろうが、それでも二万、三万と変わるわけではない。そして非戦闘用員の数からも、確実にこの戦争に勝つという強い意志が感じられる。
そして、上層部が多少たち直り、対策をたてようと苦悩していた頃、
ザルグルーフ公の名の元にローエス率いる約110000の公国軍が四帝連合の北部全域に向けて進撃を開始した。
そして、それに遅れてアウグスト・フォン・ダルヌールの名の元に公国軍撃退軍が発足し、四帝連合防衛の為、進軍を開始した。
カルーフェでは四将が一人「華槍」シャーロック率いる帝国軍第一軍及びカルーフェ軍を含めた60000が進軍を開始した。
そして帝国各地より余剰戦力約20000がケルメルデにて撃退軍に合流するため集結を始め、時間を稼ぐため、これまた四将が一人「豪撃」レンベルクが、自身の帝国軍第二軍と北部方面軍、公国方面軍の混合軍約60000を率い、ラールサール平原の戦いで造られた簡易的な防衛陣地等を活用した遅滞戦闘を行った。
剣聖率いる公国軍の攻勢にレンベルク軍は万を超す犠牲を出しながらもなんとか撃退軍が到着するまでの時間を稼ぎきった。
そして遂に、四帝連合と公国の総勢200000を超す後の世界史において大々的に取り上げられるであろう大戦が始まった。
読者のなかには軍学校の生活については、これだけかと心配される方もいらっしゃる可能性がございますけども筆者の文章力及び構成力では無理でした。誠に申し訳ない。