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地球とは違う世界の物語  作者: 週刊M氏
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第二章 ジャーベラの死闘

ジャーベラ平原にて衝突した四帝国連合軍とアドベナント王国軍の総数は二十万を数えた。


軍の規模で言えば数年前に起きた四帝国連合軍と公国軍との間での決戦にこそ劣るが、今回は質が違った。


四帝国は四将のシャーロック、レンベルクに加え副官のソーラスといった主戦力にラストランやカーセン、ジョンと言った猛者達が参戦しており、新しくできたレーズリー三百人将等に代表される四帝国の若き新鋭達も総じて揃っている。


対するアドベナント王国軍は、言わずもがな最強戦力である大将軍二人に、守戦を極めた上将四人。それだけでも十分であるのに加えてデランダルト率いる近衛戦士団を含む一万の王都軍。


両軍とも出せるだけの人材を活用しており、敗北は何があろうと避けねばならない。


しかし、だからといって消極的な策も取れない。両軍とも手段はともかく、目標は決まっていた。


相手を短期決戦にて打ち破る、たったそれだけである。


故に…


「レンベルク軍に通達、暴れてこいとな。」


「ドーラストに伝えよ。貴様の大好きな正面衝突とな。」


両軍ともに主力を惜しみ無く出し合う。


その場にいた将兵は皆こう語る。


「あの場には安心出きる場所はなかった。生きるためには味方を見殺しにして、味方を盾にしなければ、命は繋げなかった。まさしく死闘だった。」


レンベルクが直に率いる精鋭部隊はレンベルクがその豪腕から繰り出される大矛の一撃で人を無造作に引きちぎり、馬さえも吹き飛ばすことでつくった道を驀進しており、屍の道がアドベナント王国軍にできていた。


しかし、アドベナント王国軍の先鋒を率いるドーラストも常人ならば押し潰されるであろう大矛を自慢の怪力によって自在に操り、精強な四帝国連合軍騎兵を馬ごと押し潰し、壊滅させていった。


双方ともに自軍の被害が著しいと判断すると、進行方向を自陣の方へ向け、救援に向かった。


だが、その道中、二人は遭遇してしまった。


そこからは両軍の将軍同士が一騎討ちを行うことになった。


どちらも、怪力を自負するだけあり、矛が交わるごとに発生する音は、剣が交わる際の甲高い音ではなく銅鑼を鳴らすがごときであり、乱戦の中一際存在感を放っていた。



しかしながら、兵数の差が大きすぎた。戦局を覆し得るレンベルク、ドーラストが動けぬ今、軍の地力の差、数の差が勝敗を分ける。その中で軍の地力は決して優劣がつかず、残るは数の差だが、レンベルク軍は二万だったのに対し、ドーラスト軍は直下の一万に加え、浮いていた兵約二万を全て指揮下においており、数は圧倒的にドーラスト軍が多かった。戦局はドーラスト軍が圧倒的ではない、だが確実に優勢であった。


平野中央にて死闘が繰り広げられている頃、その左でも、火蓋が切られ、戦闘が始まっていた。


四帝国軍左翼と王国軍右翼との対決である。数は四帝国軍二万、王国軍四万である。数なら中央戦線を超えていた。


指揮官は四帝国軍がラストラン。王国軍はディムセル、カッセン、ウィリアム、ジャルアットの上将四人である。


王国軍は守戦に徹しており、少しの動きも見せなかった。そのため、しばらくは牽制のみに限られていた戦場であるが、ジョン・ジャックソンが出撃し、戦局が動く。


ジョン・ジャックソンは、武力だけでも四将と同等以上、さらに勘が鋭く、相手が攻められたくないところ、守りきれてないところ…そして罠さえも気付く。



最初に襲撃を受けたディムセル軍は前線の守備が崩壊し、ジョンに食らいつかれてしまっていた。


当初は相手をただの猛牛として、側面から攻撃を仕掛けて撃退、もしくは討とうとしていたが、相手は此方の動きを知っているかのごとき用兵で尽く避けられ、数千規模の兵を蹂躙されてしまった。


その状況を見た隣のカッセンは救援に向かうがそれは、ラストラン率いる本軍が前進を開始したことにより、止めざる得ない。


ラストランは自慢の鉄騎兵を使わず、歩兵部隊を戦線に押し上げた。


流石に長きに渡りラストランに従ってきたラストラン軍である。カッセン、ジャルアット、ウィリアムの三人が騎兵を運用し揺らぎをつくろうと試みるが、崩れない。


上将達の軍は守戦に長けているが、攻撃に関しては、さほどである。いや、十分な攻撃力を有してはいる。しかし、それはアルデュスの治世の頃より戦争を経験する彼等にとって脅威足り得ないのだ。


二倍の戦力差が有るのにラストランは優勢に戦局を進める。


さらに彼の軍は未だもう一人の副官、カーセンを動かしておらず、戦力的に余裕がある。


実力絶頂であった先代上将達を打ち破った彼等の力は衰えるどころか、ますます強くなっていた。





中央、左で戦闘が繰り広げられているなか、右では戦闘が起こってすらいなかった。


数は四帝国二万で指揮官はソーラス・シャベリ。王国軍四万で指揮官がデランダルト。


双方ともに自身から動こうとせず、膠着状態が続いた。



しかし、他の戦線では戦闘が開始されていることに経験の少なく、堪え性がなかったデランダルトは旗下の約七割を超す約三万の兵を敵兵二万に向けて動かした。最初の内は数と勢いに任せた王国軍が四帝国軍を押し込み、デランダルトの気分を大変よくさせた。



しかしながら、四帝国軍の指揮官たるソーラスが本陣の兵力を率いてデランダルト軍本陣に向けて突撃を開始すると、状況は一変する。


主力を惜しみ無く前方にぶつけたため、デランダルトの守りが疎かになってしまっていた。


近衛戦士団が奮戦し、本陣の壊滅は防いだものの、デランダルト軍は一時的ではあるが、大幅な撤退を余儀なくされた。


初日は四帝国軍が左右の戦場を、王国軍が中央の戦場を優位に進めた。


しかし、王国軍は未だメストルノ=デ=サロモスという大駒を残しているのに対し、四帝国軍は将の予備がいない。


その差が出てくるのは三日後のことだった。

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