プロローグその3
一応プロローグ最後です。
ついに第一軍と公国軍が激突した。はじめは動かされたかたちになった第一軍が勢いに身を任せ公国軍を押していた。開戦して三十分程度で公国軍は三桁を越える歩兵の被害がででいたほどであった。そのため、もしかしたら剣聖を撃退できる、と考えてシャーロックはさらに攻めを激しくした。
が、やはり数的な有利は平野では絶大な力を誇った、公国軍が巻き返しのために、歩兵を全面的に押し出すことで第一軍の勢いは半減し、そこから激しい消耗戦にもつれ込んだ。乱戦となるときっかけがない限り無駄に被害を被ることになるため通常は、乱戦となったら強軍を投入したりすることで戦況の改善を図るものだが、どうしてか、剣聖は出てこない。
シャーロックは未だ現れぬ剣聖を不気味に思いながらもそれ以上に開戦してはや一時間はたっているのに未だ側面を突かぬ別動隊を気にかけていた。が、何か嫌な感じに気づいた時、伝令がボロボロになりながら、
「閣下」
と叫びながら飛び込んできた。
その頃ライカルは気分を悪くし、泣いてしまっていた。遠目だが人が死んで行く様は大人でもみていて気分の優れるものではなく、さらにずっと壁の中の明るい世界の住民だったライカルはまだ六歳なのだ。清濁併せ呑むことができるはずもなく、大声で泣きに泣いた。そのせいで商会の人間に見つかり、両親にばれてしまった。が、ライカルは親に怒られたことが嬉しかった。ちゃんと両親がここにいると分かり、さらに泣き出してしまった。
そのときであった。剣聖ローエスが乱戦となった戦場の側面に現れたことで一気に戦場が動いた。
「剣聖」それは剣の一振で敵に死を振り撒く人間に与えられる称号であり、味方にとって、希望となる者を指す言葉である。
そんな剣聖の名を冠するローエスが弱いはずがない。弱くてはいけない。周りからの羨望、敵味方関係なしに向けられる嫉妬。いついかなる時であろうと、一瞬たりとも気が抜けぬ生活を送るローエスは戦場であろうと、敵に囲まれたとしても焦りは一切ない。実際、別動隊と偶然、遭遇戦となろうとも、さして動揺せず、淡々と敵を斬った。ローエスが率いるは騎馬500ほどで別動隊と当たったら、通常は苦戦するはずである。それを1騎の犠牲も出さず完勝するのは流石剣聖といったところか。
シャーロックは副将がローエスにやられたと理解し、すぐさま軍の一部の向きを変えさせローエスに抵抗する構えをみせる。伝令が届いて1分程度で完全に対騎馬の陣形を完成させるのは流石の練度である。そのおかげでローエスの攻撃が来る前に兵を整え万全とは言いがたいがしっかりとした対策がとれたのである。
が、その対策は通常の騎馬に向けてなのであり剣聖にとって槍を構えられてもそれを断ち切るだけのことであり、「弓騎士」といわれる大国である帝国が誇る弓の名手の矢さえも見切ったこの男にとって、普通の弓兵がどうこうできるはずもなく、ただただ殺戮が起きていた。シャーロックも槍の名手であるが、その槍の術理が一切通用せず三太刀で崩れ落ちた。その場は四帝連合にとってまさに地獄であった。腕に覚えがあるものも、弱兵といわれるものも、皆等しく物言わぬ肉片となる。
だが、その場から離れたところから眺めるライカルは親に何か言われていたような気もするが構わずその光景を眺めていた。ライカルはその圧倒的なまでの強さに魅了された。子供が物語、英雄譚に出てくる英雄に憧れを抱くように彼はこの世界でただ一人「剣聖」の名を冠する男に憧れた。その理由で軍人になりたいと思うのはしょうがないことであろう。
ここまででライカルがなぜ軍人を目指そうとしているかの説明をさせていただきましたがいかがでしたでしょうか。ここからは、軍学校での生活等を書こうと思っているのでこれからもよろしくお願いします。また、問題点やパクったと思われるような部分がございましたらしっかり指摘していただけると幸いです。