第一章新たな戦い(ライカル)その3
やっと主人公と軍が交わりますね。
この政令の狙いは精鋭の多い北部軍の中でも特に損害が少なかった小国地帯方面軍で公国方面の穴を塞ぐためである。その為、ライカルたちが到着すると数日の引き継ぎ期間を過ぎたら元々、その地にいた歴戦の部隊の大半が公国方面に移動してしまった。小国地帯も不審な動きをしていたのだが、第一は公国であった。
ライカルたちは残った歴戦の部隊から戦いのノウハウを吸収し、北部の戦いの特徴などを知り、少しずつ力を伸ばしていた。が、先の戦の傷が癒えぬうちにと、小国連合軍が二十万を超す兵を引き連れ進行を開始したことにより、上層部が意図していなかった大戦に巻き込まれることになってしまった。
小国地帯方面軍司令官はラストラン将軍である。平民上がりの歴史上数少ない将軍であり、功名心のようなものも少なく、現在の四帝連合軍の中では最長の戦歴を持つため隙が少なく、いつも安定した戦いを見せており、四将以外で最も上層部に信頼されている将軍である。少し前から怪しい動きをしていた小国地帯に対して防衛陣地を築き、補給も少し多めに要請したことにより、小国連合の侵略に対して初動が遅れることは防ぐことができた。が、それでも二十万を超す軍勢は想定外であり、さらに『双璧』と唱われる二人の名将や、帝国から『軍神』と言われるほどの策略を操る稀代の軍師等の時代を駆ける輝きを放つ将軍たちが率いるとなると、かなり厳しいものがある。
「ラストラン閣下ッ!我が軍の流し者(指揮官直属のスパイ:敵に潜入しての情報収集、撹乱を主な任務とする者達の総称)より、敵方の情報が届きました。」
「そうか、して、詳細は。」
「はっ、まず此度の二十万の軍勢は小国地帯の中において特に多い3ヵ国の連合軍である模様です。そして、陣容ですが、「双璧」擁するカンドス王国軍八万、「軍神」率いるヤールザス王国軍七万、ラスカホース率いるトウールフォン王国軍五万とのことです。」
「カンドスは分かっていたが、ヤールザス、トウルールフォンが組んだのか。そして三国連合軍二十万だけでも厳しいのに、『軍神』もか。これ程までの大軍を指揮したことはないはずだが、ヤツは帝国陸軍をカサルー湿地での殲滅戦のように、散々、蹴散らしてきた実績がある。搦め手に注意せねばならぬな。」
「閣下、如何いたしますか?」
「カーセンよ、現在連合軍と小競り合いをしておる部隊を除いた指揮官全員を召集せよ。」
「分かりました、しかし、どうしますか?」
「ん?作戦についてはまだないぞ?」
「いえ、新しく入った特殊士官についてです。」
「かぁー、そうだった、上層部も好き勝手してくれるのぉ。」
「同感です。それでどうしますか?」
「此処には確か、アルメアの倅と、スーラン、ガーラードの奴らに、バルディア、商家の者ら7人だったな。全員呼べ、上層部も此処でとにかくそいつらを使えるようにしろとのことだろう。」
「分かりました。」
〈ライカル〉
「ラストラン将軍指揮下の千人以上を指揮する指揮官及び、特殊士官7名は急ぎ、大天幕に集合せよ。これより、作戦会議が始まる、もう一度言う。千人隊以上の指揮官と特殊士官7名は急ぎ大天幕に集合せよ。」
「特殊士官ということは、俺らも呼ばれているぞ!!運がいいぞ。」
「騒ぐなバルディア、腕力だけが取り柄のお前が居ても、理解できぬだけだ。」
「なんだと。」
「いがみ合わないでよレーズリーにバルディア。貴重な体験なんだからしっかり物にしないと。」
「なんだ、此処でも優等生気取りか?ガーラードはこれだから、言動、行動が嫌みったらしいと言われるんだ。」
「なんだ君も学校ではおしとやかな淑女を演じていたのにね。やっぱり馬鹿の一つ覚えで成り上がったスーランは所々に取り入らないと、やっていけないらしいねww」
「貴様らいい加減にせよッ。他の指揮官はもう移動しておるぞ。新米がなにをやっておるか。」
(やっばー。なんでこいつら小言を言い合うんだよ。というか、俺はしっかりしてたじゃん。小言とか言わずに移動してたじゃん。)
「閣下、本当に奴ら大丈夫ですか?中央の奴らが"選別した"とのことなのですが?」
「わかるが、そう嫌みったらしく言うな。まだ、まだ初陣なのだ、わしは信じておる。」
……初っぱなからマイナス評価だがこいつら大丈夫だろうか。
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