第一章新たな戦い(ライカル)その2
ライカルたちが知らぬところで四帝連合を揺るがす大事件が!
突然だが、四帝連合は経済でいったら、他国を圧倒する程に発達している。世界三大都市と言われる聖都、カラーズリス帝国の帝都は、ともに、都市そのものが巨大な芸術品であり、見るものをその存在感だけで圧迫する程であり、そこに住む者も、一般市民ですら、一定の教養を身につけ、準貴族と称される程に洗練されている。そして、覇国として大陸の約4割に匹敵する領土を抱え、国教であるルースカルト教の影響力は計り知れないものがあるロースベルン聖皇国の各地の特産品、金、情報が集まる聖都や、新興国ではあるが、怒涛の勢いで軍事的、経済的発展、国土の拡大を続け、ついには強国と認められたカラーズリス帝国の領土、大陸の約2割近くから産み出される作物、嗜好品、「大陸の鉄床」と称される鉄の一大産地から鍛造される武器、日用品が集まることで経済が発展した帝都は、大陸で見ても富の一割程度をお互いに確保する経済力を持つ。が、四帝連合の帝都カルーフェはさらにその上を行く。南、東を海に囲われたことで豊かな海産資源を手に入れ、大陸から見て東にあるラッケルデスク=グリテスク諸島に巣食う異教徒(ルースカルト教以外の教徒)達の連合国家、ラッケルデスク=グリテスク諸島国家連合との貿易をするという、諸島国家連合と唯一無二のパイプを持つことによる利益を独占し、他国の商会に資金を"国家"として融通して、骨抜きにして経済的な影響力を持ち、四帝連合の中心近くにそびえ立つグレンベルク山のまわりに点在する金山、銀山から出てくる貴金属、聖皇国との国境に存在するオーラズ山脈以東にある大陸でも数少ない宝石の産地より採掘される宝石、その二つを合わせた指輪、ネックレス等の貴重品による利益が集まるカルーフェはついに大陸の3割を超える富をたかが一都市で手に入れ、四帝連合全体だと大陸の六割の富を持つ程である。
その経済力は四帝連合の戦争に大いに役立っている。国土は大陸の一割程度であり、人的資源は少ないが、その経済力を使い、軍を最新の武具防具で固め、他国の優秀な人材を厚待遇で引き抜いたりと、軍自体の平均的な強さで見たら、大陸、いや、世界最高水準の強さを誇るほどである、戦術の相性で時折、負けることはあっても、その何倍もの勝利を得てきた四帝連合軍は、最強と唱われた先代の四将が率いることで、向かうところ敵無しであった。四将が集えば世界を獲れるとされ、覇国・ルースベルン聖皇国の将兵ですら、平伏するほどであった。四将の内、三人が、若き超新星であった、『剣聖』『閃光』『守護騎士』『破槍』によって墜ちて、勢いを失ったが、それでも軍事強国である。兵士は未だ最高峰の装備を持ち、士官たちにも高度な教育を受けさせ、侮ることなかれと言われていた。
が、二度の大敗北により、世界は思ってしまった。[四帝連合の黄金期は過ぎ去った]と。
小国地帯のある国の王宮にて、
「シャルロー将軍並びにレステュス将軍が参られました。」
衛兵の掛け声とともに王座の間の荘厳な装飾が施された重厚な扉が開かれると、其処から、鎧を身につけた筋骨粒々の大男と、こちらも鎧を身につけた男が入室した。最も後者は長身ではあるが、すらりとした体型で、隣の大男と比べいささか頼りない印象を受ける。
そして、王座の間の真ん中を通る通路の両方にいる国の重鎮達の目線に晒されながら、玉座の五メートルばかし前に辿り着くと、息の合った動きで臣下の礼をとった。その動きは、一糸乱れず、洗練されたようにも感じる動きであった。
「よくぞ、我が命を受け戦線より舞い戻った。いつも感じるが、お主らの動きには、何度見ても見入ってしまうものだな。」
「は、陛下の御言葉は、矮小たるこの身に対し、大変名誉なことであります。」
「して、何故レーンドール攻略が佳境に差し掛かった今、我ら二人をお呼びになられましたでしょうか。」
「決まっておろう、我が国と国境を接する四帝連合が公国に二度目の大敗北を喫した今、かの国の混乱に乗じて国土を削ろうかと思ってな。そこでお主ら二人に、軍を率いてもらおうとな。」
「了解いたしました。ただ、少しばかし疑問があるのですが宜しいでしょうか?」
「よかろう。寧ろ、この国の将来を賭けた戦いなのだ。質問をして、最高の作戦をたててもらわねば意味がない。」
「は、御言葉に甘えさせていただきます。陛下は我らに軍を預けるおつもりのようですが、四帝連合は我が国にとって強大です。その為、万全の備えをしたいのですが、我が国が今その作戦に動員できる兵士は、現在の作戦等でかなり少なくなってしまっており、最大でも六万程度と愚考するのですが、それでは、四帝連合軍を打ち破るにはいささか心許ないと感じる次第に御座います。どのくらいの目標かは、存じ上げませぬが、如何お考えでしょうか?」
「フフフフッ、驚くなよ、私は公国が為せなかった、北部最大都市のケルメルデを手に入れることを目標としている。」
「陛下ッ、流石にケルメルデまでの進軍となると、最低でも二十万の将兵が必要です。さらに、補給だけでも二十万という軍勢は我が国を苦しめます。流石にケルメルデは不可能です!」
「その通りです陛下。我が一撃はいかなる敵をも打ち倒すと言われますが四将たちが出てきたら、例え一騎討ちに持ち込もうとも、大幅な苦戦を強いられます。数が足りなければこの戦いは惨敗いたします。どうかご再考を。」
「四将はボルヌンディアしか、動けるものはいないはずだが?」
「いいえ、陛下、現在第一軍をまとめ軍としての機能を取り戻させた第一軍の副将ソーラス・シャベリは四将級の逸材であります。そして、さらに四帝連合側もこれ以上の敗北を許すまいと先代の四将が一人『槍神』が復帰する恐れもあります。そうすると、四帝連合はたちまち息を吹き返すでしょう。」
「数で優位をとれない限りは、我が軍が軽率に動くことは、やめるべきです。」
「それくらい分かっておるわッ!馬鹿にするでない。数と将両方で優位を得るため、我が国は隣国たちと、三国協定を結ぶことにしておる。」
「「なっ!!」」
これより、泥沼戦争の始まりである。
筆者は小説家になろう初心者なので読みにくい文章も多々ありますが温かい目で宜しくお願いいたします。
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