第一章決戦その2
この戦いの最後です。
四帝連合軍側はケルメルデを拠点にして消耗した北部軍の補充、十万を越える陣容を抱える連合軍の補給、公国軍に対する抵抗を続けていた。だが、公国軍も本国からの援軍も集結しており、陣容が大幅に強化されていた。それに対し連合軍側は不審な動きをする小国地帯に軍を割かないといけなくなっており、聖皇国方面はギリギリまで減らし、余剰戦力は全てかき集めてしまったため更なる増援は見込めず、さらに、公国が聖皇国に対する軍を減らして更なる援軍を送ろうとしているという噂が広がり、連合軍上層部は「長期戦は相手にも利する」と判断し、「強力な一撃を公国軍に加え公国軍を撃退させる。」短期戦に切り替え、帝都より出陣して五日目、第一軍が防衛戦を初めて三日目、ついに四帝連合北部にて決戦に踏み切った。
四帝連合軍は軍をレンベルク率いる第二軍主体の50000とシャーロック率いる第一軍主体の50000、そしてシャベリ率いる40000の三つに分け、平野の中央部にシャーロック軍、西部にシャベリ軍、東部にレンベルク軍がそれぞれ布陣した。
それに対し公国軍は西部に30000、東部に40000の部隊を配置し中央部にはローエス率いる50000が布陣した。
まずは、公国軍が世界に誇る快速騎馬隊、馬力は無いが、それを押して余る瞬発力、速度、持久力を備える公国原産のアングレケルブと幾多の実戦、訓練を経験した一騎当千の精鋭が合わさった、公国の進撃を支える世界最速の部隊が各戦線で機動力を活かした速攻を加え、戦場を乱した。それにより、連合軍は混乱に陥り数の利を活かせず、多大な被害を被ったが、一時間もすると、四帝連合軍の主力、重装部隊がその持ち味を活かし始め、騎馬隊の脚を止め、四帝連合軍の戦の代名詞と言われる重い戦を展開し、公国軍にも被害を与え始めていた。
二日目も初日と同様の展開となっていたが、昼前に、公国の侵攻が起きてより一度も先陣を切ることのなかった、レンベルク、シャーロック、シャベリの三人がついに親衛隊等を含めた主力を率い、三軍同時攻撃を仕掛けた。一人一人は剣聖に遠く及ばないが、剣聖は一人なのだ。三方面を同時に対処することなどできるはずもなく、ローエスがいる中央部はシャーロックが逆に壊滅しかけるほどの攻撃を喰らい、公国軍が圧倒的優勢を確保したが、西部、東部はまともな軍の指揮官がおらず、劣勢になり、このままでは、中央軍が三方より攻撃を受けるような危機に陥るが、やはりローエス率いる公国軍。歩兵の一兵にいたるまでが熟練であり、連合軍の攻勢をなんとか耐えていた。
だが、ついにローエスが動いた。自分と自身が率いる騎馬隊が東部に向かい、攻撃をかけていたレンベルク軍の右翼に攻勢を掛けレンベルク軍の脚を完全に止め、本陣に向けて再度突撃し、レンベルクこそ討ち取れなかったものの、一騎討ちを制し、深手を負わせレンベルク軍を壊滅させるとすぐさま軍を反転させ、西部方面へ向かった。
レンベルクはローエスに気付き、右翼に重装歩兵、弓兵を使った、防御陣形を敷いたが、やはり、剣聖の突貫は並みではなかった。
『東部方面壊滅』 その一報はすぐさまシャーロックとシャベリの二人に届いたが中央のシャーロックは劣勢で援軍を送る余裕もなく、シャベリは戦場をひとつ跨いでいるため、援軍がどうしても遅れてしまうため援軍を出さずにいた。それよりもローエス本隊がこちらに向かっていたため速やかに撤退の準備をしていた。殿部隊など多大な被犠牲を強いた撤退戦だったがケルメルデ付近は無事で対公国の要塞群も大丈夫だった。ケルメルデなどで守備の構えを見せると公国軍は撤退していった。
最終的には、公国軍残存兵力116000 死者3000 負傷者(戦線復帰が厳しい)1000程だったが、四帝連合軍の残存兵力は63000 死者30000捕虜27000 負傷者20000の大敗北を喫した。領土の減りはほぼほぼなかったものの、四帝連合全体の士気を下げる結果になった。
そしてこの一戦は四帝連合の周りの国々の戦略に少なからず影響を与えており、四帝連合はこれから『泥沼戦争』といわれる一時も休むことのない戦争に明け暮れる一年を経験することになる。
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