宿屋
パーラルの門をくぐって冒険者ギルドへと足を運ぶ時には、賑やかだった露天はいそいそと店仕舞いを始めており家の灯りがちらほらと見受けられた
「さて、夕飯をご馳走になる前に私達が泊まってる所に行かないかい?あそこは宿泊と飲食店も兼ねてるから便利なんだよ」
「あー……確かに宿泊の事を決めてませんでしたよ……ではそこへ行きましょう」
ギルドへ討伐の報告と魔物の素材を渡して依頼金を受け取ると、レイレテさんとその宿屋のへと向かって歩み始めた
しばらく歩くとワイワイと賑やかな声が聴こえる店へと入る。中に進むと猫耳の女性獣人がつかつかと床を鳴らして向かってきた
「レイレテさんお帰りなさーい!あれ?そちらの若い人は見かけない方ですね……彼氏ですかぁ〜」
「マーナ……冗談は可愛らしく装う格好だけにしてくれよ……」
「にゃんですか!私は容姿端麗で毛並みも可愛いんですぅー」
「ゴブリンに格闘戦をぶちかます奴が……いやいやそんな話よりお客さんだよ」
「あ、しばらく宿を借りたいのと夕飯もお願いしたいんですが……」
少し困惑しながらそう話し出すと、マーナという獣人は奥に居たオーナーらしい女性と話をしだし、振り向いて顔の前にOKサインを出すと部屋の鍵を手渡して貰った。
部屋に着きひと息落ち着くと、トントンとノックと共にレイレテさんともう一人背丈が高い女性が立っていた
「紹介するよ、彼女はこの宝槍を作ったカロ。カロは加工の素材集めに一緒に討伐したきっかけで知り合ったんだよ。夕飯を共にしても良いかい?」
「はじめまして、バッツと言います。宝槍のお話も聞きたいので嫌じゃなければ喜んでご一緒したいのですが……」
そういうと照れくさそうに顔を真っ赤に染めて、モジモジと手の指をクルクル回したかと思ったらレイレテさんの影に隠れてしまった……大きな人族が小さな小人族に隠れる訳がなく、オロオロと挙動不審にチラチラこちらを見ては小柄なレイレテさんにしがみつく……とりあえず下の食堂へと三人は階段をキシキシ鳴らしながら降りていった