道中
揺れる荷馬車の中、自分は未だ興奮冷めやらぬファリとの会話を続けていた。積荷にふと目をやれば赤く熟した真ん丸なトマト、ぶどう酒でも入ってるのか小型の酒樽が数個転がっていた
「随分と熟れたトマトを積んでるんだな」
「はい、街の市場に入れようとお父様が言ってました。おひとつどうでしょうか?」
差し出されたトマトを手に取る
トマトは甘く芳醇な香りが鼻をくすぐり、しっかりとした艶やかな丸みを帯びている
一口かじれば甘酸っぱい
酸味、糖度、鮮度も抜群だ
「日持ちはしなさそうだがとてもいいトマトだな」
「街からちょっと離れた産物なんですが、収穫時期は男手が取られるからってウチに配達を注文するんですよぉ」
ーまぁ、比較的安全な街道とはいえ群れからはぐれた魔物等が街道脇近くまで来る事も珍しくない
夜は夜で野党、盗賊なんかもたまに被害があるとか無いとか……
「街に行ったらやっぱり冒険者ギルドに行くんですか?」
「あぁ、旅をするにしても登録はしておきたいかなと思ってね……」
「バッツさんなら剣士としてパーティに欲しい人沢山いるんじゃないですかぁ」
トマトを胸の前でコロコロ転がしながらモジモジとファリは言う
「んー……旅しながら色んな所や歴史、文化に触れたいとは思ってるかな」
「ふーん……凄いですね…私は野菜を仕入れる事で人生終わりそうですよぉ…」
あははとバッツは乾いた相槌を交わしてふと外の景色を見ると、遠くに城壁が見えてきた
「あっ、そろそろパーラルの街外城壁が見えてきましたね」
村からあまり離れることがなかったバッツは、城壁を見るや疑問に思った
ー城壁があるという事は敵対する領地が近いのか……はたまた生息する魔物の防衛か……物騒だなぁ
頭をポリポリ掻きながらブツブツ考えてる間に、ナーサムの荷馬車はパーラルに入っていった