表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/74

第69話 文化祭その1

イチャイチャ&男同士の語らいです。

「もう文化祭当日とは、早いもんだなあ」

「うん。あっという間に過ぎてっちゃった気がする」


 華やかな飾りつけがされた校門を通りながら、話し合う。


「にしても、古織(こおり)とシフトずらされたのは痛い」

「仕方ないよ。私も、見てる側だったら、そうしてたと思う」

「そうだな……」


 とはいえ、せっかくの高校生活最後の文化祭。


「お互いシフト空いてる時は、一緒に回ろうな」

「みーくんはどこ行きたい?」


 と問われて少し考える。正直、あまり考えてなかった。


「そうだなー。お化け屋敷なんかどうだ?」

「私もみーくんも、別に怖がらない方だと思うけど」


 正論だ。確かに、今更お化け屋敷で怖がる年齢でもない。


「こう、古織が、「怖い!」て抱き着いてくれるとか」

「それ、既に「ごっこ」になってると思う」

「もちろん、冗談だけどさ。遊園地のお化け屋敷とか、いつでも行けるだろ?でも、高校のとか、今しか機会ないと思うんだよ。どんな工夫してるのかも見て楽しめそうだし」

「その楽しみ方はどうかと思うけど……わかった」

「古織はどこか行きたいところないのか?」


 と問うと、しばし、うーんと、悩む様子。こいつも考えてなかったらしい。


「私は、映画同好会の映画見てみたいな」

「映画好きの古織らしいチョイスだな」

「普段、映画館とか動画で見るのって、「完成品」だから、もうちょっと制作過程みたいなものも知りたいし」

「ああ、確かに。どうやって作ってるのとか、考えたことなかった」


 というわけで、お化け屋敷と映画は決定。あとはまあ、適当でいいか。

 としゃべり込んでいると、気が付けば自分たちの教室の目の前。


「まあ、後のことは後で考えるとして」

「メイド&執事喫茶、しっかりやろ?」


 お互いにうなずきあって、教室に入る。祭りの始まりだ。


「みーくん、みーくん。どう、似合ってる?」


 開店の準備作業中のこと。

 メイド服に着替えた古織がくるんと一回転してみせる。


「似合ってる、似合ってる。月並みだけど」

「えへへ……。みーくんも、似合ってるよ?」

「ありがとな。……っと」


 周りからの視線を感じて慌てて離れる。


「やっぱり、シフト離して正解だっただろ?」


 ふふんと矢沢(やざわ)が勝ち誇ったように言う。くそう。

 しかし、待てよ。


「なあ、別に俺が客として、こっち来る分にはいいんだよな?」


 盲点だったが、これはアリじゃないだろうか。


道久(みちひさ)、お前なあ。そこまでして、嫁さんとイチャつきたいか」

「そうだ、そうだー。散々、家でも学校でもイチャついてる癖に」

「家ではもちろんイチャつけるけど。文化祭でイチャつけるのは今日だけだろ」

「なんて屁理屈だ……」


 口々に、好き放題言ってくれる。しかし、今日の俺はもう開き直ったのだ。


「それに、家でケチャップ文字書いて欲しいと言っても、たぶん、恥ずかしいから、と言って断られるだろ?」

「私に聞かないで欲しいんだけど。でも、そうかも……」


 先日のメイド喫茶の件でも、テンションが高かったから出来た芸当だ。


「バカ夫婦につける薬なし、ね」

「まあ、好きにすればいいんじゃない?道久の言う事も一理あるし」


 相変わらず呆れた様子の雪華(せっか)幸太郎(こうたろう)

 幸太郎が擁護してくれたのはありがたい。


 ともあれ、我ながら名案だ。それに、なんだかんだ言っても。

 皆、しょうがないと諦めた雰囲気だ。


◇◇◇◇


 というわけで、最初のシフトから外れた俺は、一人学校を探検-

 のつもりだったんだけど。


「別にいいんだけど。どういう風の吹き回しだ?」

「いや、こういう機会でもないと、夫婦の裏話とか聞けないだろ?」


 一緒について来たのは、先日仲良くなった矢沢。


「裏話ねえ。もちろん、話せてないことは山ほどあるけどな」


 ともあれ。


「で、何が聞きたいんだ?」

「お前たちって、幼稚園の頃からの付き合いなわけだろ。それってどんな気分なんだろうなって。俺は今のカノジョとは高校からの付き合いだし」


 どんな気分、か。


「正直、どう言えばいいんだろうな。ただ、一つ言えるのはだ。なんかのイベントの思い出には、だいたい、あいつが一緒に居たな。お互いの誕生日パーティなんか典型だし、引き取られてからは、家族でもあったからな。食事は基本一緒だし、年末年始だって、初詣だって一緒だった」


 思えば、本当にずっと一緒だったと思う。


「兄妹みたいなもんってことか?」

「ん?矢沢は兄妹いるんだっけか」

「三つ下の妹がな。絶賛反抗期で、全然可愛くもないけど」


 反抗期、ね。あの時は、あるいは、反抗期でもあったんだろうか。


「妹さんなりに思うところがあるんだろ。口出す気はないけど、見守ってやれよ」

「やけに大人視点だよな。なんかあったのか?」

「まあ、俺も早すぎる反抗期って奴を経験したかもしれないから、な」

「そっか。で、妹が居る身としてはだ。まあ、気を遣わないでいい間柄なのは確かだけど、お前らみたいに、ずっと仲良しってのがちょっと想像湧かないんだよ」


 ずっとか。ひょっとしたら、俺も最初から、古織の家で育っていたら。

 あるいは、お互いを異性として意識することもなく。まさに、兄妹だったかも。


「俺の場合は、小学校の途中で引き取られたって経緯があるからな。当時、既に「こいびと」とか思ってたのはともかくとして、親友ではあったと思うんだよな。そこからの同居だからな。色々違うんだろうよ」


 家族ではあっても、でも、兄妹ではない。そんなところか。


「ほんと、世にも珍しい間柄だな。大事にしてやれよ?」

「言われなくても大事にしてるよ」

「教室でバカップル……いや、バカ夫婦だったか。そんなだしな」

「ほっとけ。今更距離取るとか考えられないんだよ」

「距離取れとは言ってない。なんだかんだ、面白いしな。お前ら」

「俺のことはそのくらいにして、だ。そっちの事も聞かせろよ」

「妹については、特に言うことはないぞ?」

「そうじゃなくて、カノジョの事だよ。門限が惜しくなるくらいなんだろ?」

「あー、言うんじゃなかった。ま、こっちもさんざん聞いたしな」


 しばし、男二人、お互いの家庭環境について話し合ったのだった。

 文化祭の時に話す事じゃないかもしれない。

 ただ、なんだかんだ、見守られてるんだな、とそんな事を感じた。


 こうして、祭りは続く。 

文化祭当日編、あと数話くらい続きます。

文化祭編が終われば、いよいよ終盤。もうしばらくお付き合いください。


応援してくださる方は、ブックマーク登録、感想、評価などいただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ