第49話 勉強しよう
「やっぱり、勉強する時間を増やすしか、ないか」
色々考えた末にたどり着いた結論がそれだ。
「でも、どうするの?塾が駄目なら、過去問?」
「とりあえず、東大、京大の過去問あるだろ」
「みーくんは東大とか京大行きたいの?」
「俺達の志望校のランクって東大京大より下だろ?だから、ランクが上の大学も見ておいた方がいいと思うんだ。あと、他の旧帝大のも一通り見ておきたいな」
旧帝大は、東大や京大以外には、
・北海道大学(北大)
・東北大学(東北大)
・名古屋大学(名古屋大)
・大阪大学(阪大)
・九州大学(九州大)
がある。
「北大とか九州大はちょっと遠い気がするけど……」
「まあ、帰省するときとか大変そうだよな。でもまあ、とりあえず過去問探すだけなら。でも、一通り過去問集買うと出費が痛いな……」
うーん、悩ましい。
「それだったら、高校の図書室に過去問集置いてあったと思うよ?」
思い出したように言う古織
「図書館か。すっかり忘れてたけど、それもありだな。明日、探してみよう」
「うん!」
というわけで、翌日の昼休み、学校の図書室に出かけた俺たち。
「考えてみると、図書室って案外使わないんだよなあ」
特別、必要性を感じたことがないというのが正直なところ。
「あ、でも。必要な本は言えば仕入れてくれるって言うし、節約生活にも活用出来るんじゃないかな?」
「それもそうだな。実用書買うにしたって安くないし……。そういえば、ラノベとかはOKなのか?いや、言ってて駄目な気がしてきたど」
「確か、図書室で借りたラノベ読んでる子居たと思うよ。言ったら入荷してくれるんじゃないかな?」
「マジか……。結構自由だったんだな。うちって。そうすると娯楽費の節約にも使えるな。ううむ」
考えてみれば、その他にも図書室には、いわゆる古典文学のような堅っ苦しいものだけでなく、娯楽や実用書が結構あるかもしれない。これは盲点だった。
「て、みーくん、今日は過去問探しに来たんでしょ?」
「あ、ああ。そうだったな。つい」
図書室を如何に使って娯楽費を節約するかとか考えてしまうのは悪い癖だ。
「えーと、参考書の類はあっちか……?」
突き当たって左の奥が参考書の類があるコーナーらしい。
「あー、あった。あった。東大、京大、東北大、……一通りあるな」
「全部借りて帰る?今日だけだと無理そうだけど」
「過去の年度含めりゃ、かなりいっぱいあるしなあ。とりあえず、去年の分の過去問だけ借りてこうぜ」
というわけで、まずは東大、京大、東北大等について、各科目の過去問集などを借りて帰ることにした。のだが、
「お、重い……」
図書室で借りられる冊数には制限を設けていないらしく、両手に持った紙袋いっぱいまで詰め込んでみたのだが、ずっしりと両手に重みを感じる。
「だから言ったのに。一度に借りようと横着するから」
古織は紙袋を片方だけ。無理の無い程度に詰め込んでいる。
「いや、全くその通り」
片っ端から借りようとしたのを、古織に「一気に借りて帰るのは無茶だって」
と止められたのだけど、「大丈夫、大丈夫」と言って聞かなかったのは俺だ。
「片方持つから、貸して?」
「いや……俺が横着したのが原因だし」
「いいから。今更、そんな見栄張っても仕方ないよ」
と少し強引に、紙袋の片方を奪われてしまう。
「なあ、重くないか、それ?」
「だい、じょう、ぶ。鍛え、てる、し」
確かに古織は鍛えてるが、それでも重い方の紙袋を持つのは辛そうだった。
「じゃあ、半分ずつ持とうぜ?ほら」
ぎゅっと、古織が持った取っ手を一緒に持つ。
「なんか、変な絵面だよな。二人で大量の参考書抱えて帰るとか」
「みーくんのせいだと思うけど?」
「ま、そうだけど。これはこれで楽しくないか?」
「そうかも。少しだけ、だけど」
夕日の中を、そんな会話しながら帰ったのだった。
そして、数日後。
「「志望校に東大・京大を入れることにした!?」
いつものように四人で集まった朝に、ちょっとした報告をすることにした。
「まあ、絶対にってわけじゃないけど、過去問見る限り、十分行けそうだったし」
「みーくんの場合、文系科目が辛そうだけど……」
「まあ、その辺りはなんとかなるだろ」
一通り過去問を見た俺たちは、東大と京大も射程圏内に入ると判断して、志望校のランクを一つ上げることにしたのだった。
「でも、なんでまた急に志望校変えることにしたの?」
雪華からの疑問。確かに、そりゃ当然か。
「いやさ、最近、将来どういう職業につくかって話をしててさ。結論として、大学行かないと、進路選びようがないってことになったんだ」
「それは同感よ。でも、今、私達が狙ってるランクの大学でも、結構選べると思うんだけど?」
「もちろん、今狙ってるところでも、全然悪くないんだけど、どうせなら上を狙った方が、進路の幅も広がるかもだし、それに、面白そうだしな」
「そうそう。それに、いざとなった、お父さんに塾の費用出してもらえばいいから」
「それは、最後の手段にしたいんだけどな……」
とはいえ、東大、京大クラスになると簡単に行かないのは承知だ。
今までよりも勉強に身を入れる必要があるだろう。
「いいんじゃないかい?君たちなら十分現実的だと思うし。進路指導の先生には、色々聞かれるだろうけど」
「お前に言われると、嫌味にしか感じないな。幸太郎の方こそ射程圏内だろ」
俺たちの学力に順番をつけるなら、
古織 ≧ 幸太郎 > 俺 > 雪華
といったところだ。
「否定はしないよ。でも、僕はそこまで難関校受験するモチベーションがないし」
「まあ、今のとこでも十分っちゃ十分だしな」
ただ、俺達は、幅広く選べるように、ランクを高めに見据えただけのこと。
「でも、京大と東大で随分と問題傾向も大学の傾向も違うけど、どうするんだい?」
「どうだろうな。正直、実家が近いって意味では東大だろうけど、やっぱ問題は東大の方が難しいし。あと、大学生活は京大生の方が面白そうなんだよな」
「そうそう。毎年、変なことやってる京大生さんが居て楽しそうな感じ!」
日本で一番の大学と言われる東大。しかし、調べてみると、京大生の方がどちらかというとちゃらんぽらんで、先生の姿勢や学生の講義に対する取り組み方も違うらしい。
「確かに、東大生って優秀だけど、色々変な噂は聞くわよね」
「最近流行りの、東大生ネタ番組とかな」
現役東大生という触れ込みで、クイズに出たり、芸能人ぽいことをしているけど、逆に微妙な印象を受けてしまったというのが正直なところ。
「ま、とにかく、志望校のランク上げる以上、今までより勉強頑張らないとな」
「ねえねえ。せっかくだから、今度集まって、勉強会やらない?」
「お、古織、ナイスアイデア。じゃあ、来週でもやるか。過去問持ってきて」
というわけで、俺と古織は志望校のランクを一段階上げることにしたのだった。
結局、将来の事を考えてみても、「まずは大学行っておいた方がいい」
なんて平凡な結論になるとは、なんとも締まらないけど。
主人公たちは、そこそこ以上の進学校に通ってるので、東大・京大辺りも
若干ランク上げてよければ普通に射程内に入るって設定です。
受験の話はこれでいったんおしまいで、次は再び節約に戻るか、
二人の過去話に行く予定です。
引き続き、お楽しみください。




