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第47話 受験生な俺たちと将来

高校3年生の半ばということで受験のお話です。

「そろそろ、受験に本腰入れないとまずいよなあ」

 

 朝の教室でぼんやりとつぶやいてみた。

 気がつけば高校3年の7月初旬だ。

 うちは私立のそれなりな進学校なので、大学進学が前提。

 受験対策もある程度は学校の授業に入っている。とはいえ。


古織こおりはいいよなあ。志望校全部A判定で」


 全国模試で古織の奴は志望校はオールA判定という優等生っぷりなのだ。


「みーくんもAABBBって感じだし、気にすることないんじゃない?」

 

 何気にしてるんだろうみたいな感じで古織が言ってくる。 


「私なんかは、AABCCって感じだけどね」


 雪華せっかは少しため息気味だ。


「僕はAAAABって感じかな」


 幸太郎こうたろうは古織と同等の優等生っぷりだ。


「私……CCCBCとかですよ」


 先日知り合ったたちばなはどこか暗い顔だ。


「別に今から十分挽回できるだろ。元気出せって」

「ううう。人の情けが身にしみます」

「大げさな」


 こんな俺達は周りからは優等生グループとして認識されている。

 とはいえ、志望校のランクを上げれば途端に判定は下がるだろう。


「さすがに東大とかの最難関校だったら塾必須だろうなあ」

「クラスにも塾行ってる子多いよね」

「節約生活してる俺たちには関係ないことだけどな」


 塾に行く学費など出せるはずもない。


「お義父さんに頼んでみたら?出してくれると思うけど」


 その提案に俺はうへえという顔になる。

 お義父さんに頼むのはギリギリまで避けたいんだよなあ。


「最難関校目指す必要ないし、今のままで行くさ」


 職業の幅を広げるには、それなりの大学に行くのが手っ取り早い。

 でも、別に東大京大クラスを目指さなくてもいいだろう。


「私は、塾行った方がいいいんでしょうか……」


 暗い顔の橘だが、こればっかりは本人の問題だしなあ。


「橘は志望校のランク下げるとか考えないのか?」


 橘の地頭は悪いとは思えない。ちょっとランク下げるのもありだ。


「うちは両親が、これ以上志望校のランク下げるの許さん!って煩いんですよ」


 橘の家は親御さんがどうも厳しいらしい。本人の好きにさせてやれよと思うけど。


「それはめんどくさいな。塾とかは?」

「そろそろ、考えようかと思ってます」

「でも、塾行くと遊べる時間減るよな」

「それが問題なんですよ。小説書ける時間も減りますし」


 ため息をつく橘。

 俺たちをモデルにした小説はそれなりに人気らしい。

 現在ですでに50話まで到達しているようで、大したもんだ。


「いっそのこと、お父さんと大喧嘩してみるとか?」

「iPadもですけど、さんざんお金だしてもらっといて、気がひけるんですよ」

「じゃあ、やっぱり塾か」

「はい、それしかないかなあって思ってますよ」


 憂鬱そうな橘の様子に、俺達は苦笑いだ。


「そういえば、さ」


 帰り道、ふと思い出したことがあった。


「どしたの?みーくん」

「いや、俺たち、全員理系クラスだよな」

「ひょっとして、文転(ぶんてん)したくなった?」


 古織の言う文転とは、理系コースから文系コースへ変えること。

 クラスのやつでも、時々するやつがいる。

 逆の理転(りてん)は難易度が高いので、ほとんど見ない。


「いや、俺は理系の方が肌にあってるし」

「私はそこは賛成。みーくんは理系の方が合ってるよ」

「現国の人物の気持ちを答えなさいって、嫌いなんだよな」

「みーくんはいっつも苦労してるもんね」

「きっと、作家さんはあんなこと考えてないぞ」

「あれは、出題者の思う正解を答えるものだよ」

「わかってるんだけど、モヤるんだよ」


 ともあれ、だ


「今までよりも勉強時間増やさないとなあ」


 現時点でAかB判定辺りだと言っても、勉強せずに合格出来るわけじゃない。

 あくまで、調子を維持出来たらの評価だ。


「みーくんは、志望校どうするの?」

「そりゃ、もちろん、お前と一緒のとこ行ければと思ってるけど……」

「けど?」

「別にやりたいことがあるわけじゃないんだよなあ」


 理系科目は大体好きだと言ってもいい。

 実際のメリットも大きいし、何よりも楽しい。

 なんとなく勉強して、それなりの成績という宙ぶらりんな状態。

 それが今の俺だ。


「みーくんだったら、それこそ、情報関係とか?」

「まあ、パソコンいじるのは好きだけどさ。プログラミングとかそういうのは全然出来ないわけだし。古織は、何かやりたいことあるか?」


 こいつは文理問わず何でも出来る方だ。

 だから、道はいくらでもあると思うんだが……。


「どうなのかな。やりたいこと、叶っちゃったから」


 嬉しそうに、でも、少し寂しそうな表情をする古織。

 その表情に何故だか胸を締め付けられる思いだった。

 

「そのやりたいことってのは、ひょっとして」

「うん。みーくんと家庭を築いて一緒に暮らしたかったの」

「そりゃ、もう叶っちゃってるよなあ」


 しかし、これはこれで困りものだ。

 なんとなく楽しい日々を過ごしていられるのは今の内だけ。

 いずれは仕事を選んで、お金を稼いでいかないといけないのだ。


「ちょっと今夜ゆっくり考えてみるか」


 ぬるま湯のような今の生活はとても心地良い。

 でも、それはお義父さんの助けがあってのものだ。

 いずれは、二人だけで幸せを築く必要があるのだ。


「そっか……。でも、そうだね。私も、考えてみる」

「帰ったら、どんな職種があるとか調べてみようぜ」

「そうだよね。私達、そんなこともよく知らないもんね」

「あと、どのくらい稼げるかも、な」


 いずれ二人の家庭を持つことを考えると、必要なことだ。


「もう少し、好きなことを先に考えてもいいと思うんだけど……」

「出来るならそうしたいけどさ。貧乏生活よりは余裕あった方がいいだろ?」

「それはそうだけど、夢がないよ。みーくん」

「飯が食える夢なら大歓迎なんだけど」


 ほんと、将来、俺はどんな職業についているんだろうなあ。

主人公たちはやたら優等生ですが、高校の雰囲気によっては、割と楽勝ムードで

のんきこいてる風景も割とあったりします。


というわけで、次話は将来の職業のお話です。

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― 新着の感想 ―
[一言] でも、理系なら選択肢が一番ゆるいのが東大なんですよね。多分。入ってから考えられるから。他は受けるときに決めなきゃいけないし。 まあ学費的に国立縛りも入っているでしょうし、首都圏限定もあるでし…
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