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第12話 甘く見ていた二人

だだ甘になったりふざけあったりする二人です。

「ただいまー」

「おかえりなさーい」


 引っ越したばかりの新居に帰って、玄関で定番の挨拶を交わす俺たち。


「なんか、少しおかしいよね。一緒に帰って来るのに、「ただいま」「おかえり」って」


 古織が振り返って、少し照れくさそうにして言う。


「いやいや、そっちのほうが新婚ぽいって」

「そうかなー」


 いまいち実感出来ていない様子の古織。なら。


「じゃあ、こうしたら、どうだ!」


 古織をぎゅうっと抱きしめて、背中を優しく撫でる。


「ちょ、ちょっと。いきなりは照れるよ……」


 抱きしめられた古織はアワアワしている。


「未だにお前の照れポイントがわからないな。さんざんやってきただろ?」

「みーくんの不意打ちの、「ぎゅー」はすっごい照れるの!」

「じゃあ、これからも不意打ちでしてやらないとな?」


 ぐふふと邪悪な笑みを浮かべる。嫁が照れてくれるというのは、旦那にとっては最高に嬉しいのだ。


「やっぱり、みーくんはサディストだよ!」


 自己紹介の事を思い出したのだろうか。


「じゃあ、飴をやらないとなあ……」


 わざと邪悪な感じの声を出しながら、背中から脇腹、胸と触れていく。


「ちょ、ちょっと!?このタイミングで……?」

「駄目か?」


 いい加減にしてよ、もう、とか言って躱されるだろうとわかって言う。


「いいんだけど。せめて、寝室で……」

 

 頬を朱く染めながらも、拒む様子がない。


「……ええと。いいのか?」


 もちろん、古織がOKなら全然いいんだけど。


「私達、新婚さんだし。それに、だいぶ慣れて来たし……」


 なんともいじらしい事を言ってくれる。


「ま、まあ、古織が魅力的だから……」


 しかし、照れる。考えてみると、かなり長い付き合いと言えど、まだエッチな事の経験は浅いのだ。


「じゃ、じゃあ。睦事(むつごと)、する?」


 古織の親父さんから聞いた、睦事、がいつの間にか俺たちの間での共通のワードになっていたのだった。古織曰く「睦事っていうと、秘められた感じがしてドキドキする」らしい。確かに、エッチする、よりもなんだか響きがエロい感じはする。


 というわけで、鞄をその場に置いて、小柄な古織を抱きかかえて寝室に直行。


「そ、そういえば……。制服でって初めて、だよね?」


 横たえられた古織が、ほぅと息を吐きながらそんな事を言う。


「制服汚れそうってか?全部脱いでもいいけど」

「そ、そうじゃなくて。裸よりもエッチぃよぉ」


 かすれそうな声でそんなことを言う古織。


「ま、まあ。俺もそこらへんは同じだけどな。なんでだろうな……」


 皆が見ることを想定した制服で、二人だけの事をするミスマッチさだろうか。そんなことをぼーっとした頭で考える。


「でも、睦事。どんどんハマっちゃいそう」


 そんな言葉に情欲を掻き立てられる。


◇◇◇◇


「というわけで、ピロートークの時間でーす!」


 行為を終えた後、古織の奴が妙な事を言い出した。


「そのノリは一体なんだよ?」


 まあ、ツッコミ待ちだろうけどな。


「ピロートークって別に言うことないなーって思ったから、ちょっと盛り上げてみようかなーって」

「なにアホなこと言ってるんだよ」

「本気だよー。だって、「気持ちよかったな」「うん、気持ちよかったー」の後、無くない?」


 またムードのかけらもないことを……。


「「幸せだな、古織」「うん、みーくん」とか、幸せを確認し合うとか、そういうのがだな」

「でも、別に睦事のあとに確認しなくてもよくない?」

「そう言われるとそうだけど……。で、どうしたいんだよ」

「それは……こういうこと!」


 ぎゅっと抱きしめられて、キスをお見舞いされる。


「んぐっ」


 いきなりで息が出来ないというのに、吸い付いて離れない。


「ぷはっ。息止まるかと思ったぞ」


 10数秒経ってようやく唇を離してくれたが、肺がしんどい。


「やった。勝った!」


 そして、古織はといえば、何故かガッツポーズで勝ち誇っていた。


「なんで勝ち負けの話になってるんだよ」


 俺はといえば呆れるばかり。こいつのノリがおかしいのは今に始まった話じゃないが。


「だって。睦事の時って、一方的にみーくんにされてる感じじゃない?」


 不満げな顔でそんな事を言われる。


「まあ、そうじゃない体位もあるみたいだけど。で?」


 だからなんだというのだろう。


「なんか、みーくんに良いようにされるのが癪なの!」


 それで勝ち負けかよ……。でも、


「ひょっとして、あんまり気持ち良くなかったりするか?」


 結婚してから数日、毎日のようにしているが、肝心の古織が微妙だったら……。


「気持ちいいよ。でも、だから癪なの!私がみーくんのモノになったみたいだもん」

「俺はそれがいいんだが」

「私は、みーくんを自分のモノにしたいの!」

「なんか頭痛くなってくるけど、要は自分が上位のプレイをしたいってことか?」

「プ、プレイとかそんな事言わないでよぅ」

「じゃあ、どう言えと」

「普段のもいいけど、たまには私がみーくんを襲いたいってこと!」

「この、肉食系女子め……」

「これくらい普通だと思うけどなー」


 そんなどうでもいい事を言い合う俺たち。


「ぷふっ」

「ははっ」


 そして、どちらともなく笑い出す。


「こうやってふざけ合うのが俺たちらしいピロートークなのかもな」

「それでうまくまとめたつもり?」

「じゃあ、甘い甘いピロートークするか?」

「ううん。こっちのほうがいい」


 ずっと一緒に過ごして来た俺たちだから、きっと、これくらいのほうがいいのだろう。


◇◇◇◇


 二人だけの睦事の後。夕食の席にて。


「しかし、そろそろやりくりの事、真面目に考えないか?」


 俺は考えていた議題を切り出した。


「そこは私がお嫁さんとしてちゃんとやるって言ったはずだけど?」

「いや、しかしな。おまえ、夕食にいい食材使いすぎだろ」


 今晩はビーフストロガノフにご飯、味噌汁、サラダといった献立だけど、牛肉にせよ、玉ねぎにせよ、やたら高いものを使っている。まあ、美味しいんだけど。


「大丈夫。まだ結婚生活5日目だから!後々節約すればなんとかなるよー」

「なんか、夏休みの宿題を慌ててやるやつの逆パターンな気がするんだがな」

「むぅ。みーくんは私の事信じられない?」

「信じてるからこそ不安なんだよ。たぶん、明日も「まだ結婚生活6日目だから」って言ってるぞ」

「じゃあ、明日からは節約するから」

「ほんとーにほんとーだな。信じるぞ?」


 この日の話し合いはそうして終わったが、その後も、なんだかんだと古織が食材に妥協しなかった結果、月末に残金1000円という羽目に陥ったのだった。


◇◇◇◇

 

 そして、時は4月29日に戻る。


「なあ、節約の話だけどさ」


 イチャついた後の俺たち。


「むー。ピロートークで節約の話はどうかと思うよ?」


 古織は口をヘの字に曲げて不満顔だ。


「適当なノリでいいって言ったのはお前だろーが」

「それでも、すっきりして気持ちいいところに、それ持ち出さないでよー」

「とにかくさ、固定費はこれ以上削れないとして。食費ももうちょいなんとかしないか?」

「お嫁さんとしては、旦那様においしい食事を摂って欲しいんだけど」

「確かに、古織の飯は美味いよ。でも、食材のランク落とすとか」

「うー……でも、固定費は6000円削れたし」

「その分、全部食費に注ぎ込むつもりか?映画も思う存分見られないぞ?」

「そ、それは困るけど」

「じゃあ、今月乗り切ったら、食材選びもちゃんと考えようぜ」

「むー……」

「スーパーで食材の値段に頭悩ませるのも、デートみたいでいいじゃないか」

「デート、か。うん。そうしよっか。映画は惜しいし……」


 というわけで、固定費に続いて、我が家の食費の見直しも決定。

 

 俺たちの節約道はまだまだ始まったばかりだ!(完)


 なんて冗談はおいといて、こうして、俺達の節約しながらの新婚生活が始まったのだった。

2章はこれで終わりです。3章からようやく、節約を意識した新婚生活が始まります。

時系列がかなり前後したので、混乱したらすいません。


新婚バカ夫婦の二人を応援したい方は、ブックマークや感想、評価いただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] がっつりと、睦事(本体除く)/w 睦言はあり(むつごとだとこちらしか出ない) しかし、キスの最中って、それがディープでも気道はふさがれていないのだから鼻呼吸すれば済むような気がしている。な…
[良い点] 俺たちの夫婦生活はこれからだー 完
[一言] 現実で自炊している身としては、食費をやりくりしつつ常に栄養バランスの取れた食事をするために、基本的に買う食材といえば、 卵、もやし、玉ねぎ、豆腐などの大豆食品、ニンニク、その他の肉と野菜、 …
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