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精霊の時代  作者: ブルーベリージャム
始まりの時
9/16

江山静江 3話

「さすがに疲れたぁ。」

「おなかすいたねぇ。」

6件目の消火活動を終えたところで、日が暮れる。

自宅マンション周辺の火災は収まったが、遠方の方ではまだ黒煙が上がっている。

「申し訳ないけど、今日はこれまでにしよう。集中力切れたらあぶないし、疲れたら休むのが鉄則だし、本職さんに頑張ってもらおう。」

「うん。晩御飯は何食べよう。」

「そうだねぇ。チャーハン作ろっか。冷凍エビ残っていたし。」

「ふふ、しずのお得意エビチャーハンね。」

「そう、エビピラフじゃなくて、エビチャーハン!そこがおいしさの秘密なのさ。」

「うん、私も好きよ。」


自宅マンションへの帰路につく二人。

すると、右下のコンビニから黒煙が立ち昇り始めた。

「あら。」

「ええっ、あそこって、いつものコンビニじゃん。」

響子はコンビニに進路をとる。

「あっ、ひとり出てきた。」

コンビニ入口から店員らしき男性が飛び出し、地面に倒れこむ。

さらに、火に包まれたモノが出てきて、男性に覆いかぶさった。

「何だあれ?」

「犬?が燃えているのかな。」

「響子、急いで。」

「はい。」

響子は飛行速度を速める。

静江は両手を前方に突き出し、まだ距離があるが放水を始める。

狙い違わず、水は一人と一匹に命中し、消火に成功したようだ。

だが、倒れた男性に動きはなかった。

一方、男性に覆いかぶさった犬は水濡れを気にする風でもなく、首を動かしていた。

「えっ、ちょっと、あれって・・・。」

「うん、食べてるね。」

響子の耳には犬の咀嚼音が届いている。

しばし、言葉を失う二人。


「コンビニの消火、しよう。」

「うん。」

二人は半ばあきらめてコンビニの消火を始める。

そう、今日の消火活動で何人かの焼死体を見てきた。

犠牲者はでるのだ。


平屋の建屋なので、上空からの放水をザバァとやって駐車場に降り立つ。


「響子、さっきの犬がこっちを見ている。」

「うん。」


犬は二人を見ている。

ブルルッ

と、体躯についた水分を飛ばした。


(消火中に襲ってくるかな?)

放水をあてて追い払おうと思った静江は左手を犬に向けて突き出す。


その動きを敵対行動と捉えたのだろう。

グルルル

犬はうなり、頭を下げ力を溜める。そして、その体躯が炎に包まれた。


「しずっ!」

「響子!飛んで!」

犬が突進してきた。

上空へと逃げる二人。

犬は二人を目掛けてジャンプしてくる。

「うわぁ」

響子が進路を左にずらし、犬をかわす。

犬は二人の横、やや下方を通り抜けていった。

「なんてジャンプ力。」

「逃げます。」

通り向かいのマンションの屋上まで飛び上がり着地する。


顔を見合わせる二人。

「何なのあの犬!?」

「びっくりしたねぇ。もしかして、あの犬が火事の犯人かな?」

「きっとそうだ。あれが犯人だよ。」

屋上の端から見下ろす。

コンビニからはまだ黒煙が立ち昇っている。

火の犬は駐車スペースにいた。


「あいつをやっつけないと、どんどん燃やされていく。」

「うん、私たちがいくら消火してもきりがないね。」

「やっつけよう!」

「うん。でも、どうやって?」

「えっ、うーーん。」

本日数回目の作戦会議である。

しかし、今回はすぐに方針が決まった。


「うまくいきますように。」

響子が手をあわせる。

「うまくできますように。」

響子のまねをして、静江も手をあわせる。

「よし、行こう。」

「はい。」

二人は飛び上がり、火の犬へと向かう。

犬は駐車スペースを出て通りを歩いていく。

その体躯に炎を纏ったまま、ゆっくりと進む。


二人は犬の後方上空5mぐらいの位置まで近づく。

犬には気づかれていないようだ。

犬のスピードに合わせてゆっくりと飛ぶ響子。

静江は両手を合わせて突き出し、ゆっくりと水を出す。

響子はその水の周囲を風で包み込み、水球を作っていく。

みるみる水球はその容積を増し、その直径が2mほどになった。

水球は素早く犬に接近すると、犬を飲み込む。

と、同時に響子は犬ごと水球を空中に持ち上げた。

水球内で暴れる犬。

だが水球内で地に足が着いていない。

犬かきの様にバタバタともがくが、水球に捕らわれたままだ。

体躯から噴出する炎の熱気によって水温は上昇し、気泡がポコポコと現れる。

静江は水を送り続け、周囲を旋回する風によって水球にも激しい水流が起こる。

やがて炎は収まり、犬の動きも止まる。

四肢を力なく伸ばし、その体はぐったりと水中に漂う。


「終わったかな?」

「うん。」

「念の為、もうちょっと様子を見よう。」

静江は放水を止め、心の中で20を数えた時、水中の犬の体躯が崩れた。

細かい灰色の粒子となり、形を崩し、やがて水球の中心に灰色の球体を作る。


「終わったね。」

「うん。」

響子は水球を包んでいた風を開放する。

水球と灰色の粒子は道路に落下し、周囲に流れ出す。


「さて、コンビニの消火を終わらせて、帰りますか。」

「うん。お腹ぺこぺこだよぉ。」


彼女たちは振り返り、コンビニへ向けて飛行する。


灰色の粒子の塊の中から赤色の球体が出現し、彼女たちの方へと漂い出すのには気づかなかった。


コンビニの駐車場から内部へ向けて放水を開始する静江。

内部の仕切りが無い分すぐに消火できそうだ。

静江は背後から風を送っている響子に振り返る。

「よし、上から放水したら終わり・・・響子!後ろ、逃げて!」

「えっ?」

響子が背後を振り返る。

前方、すぐそこに赤色の球体が浮かんでいた。

それは響子のほうに引き寄せられるように、すぅっと寄ってくると響子の体内に侵入した。

「響子!」

倒れこむ響子。

静江が抱き起す。

「響子!」

呼びかけるが反応はない。

息はしている。

外傷は無い。

寝ている様だ。

だが、呼びかけても目は覚まさない。


静江は何とか響子を背負い、マンションへ向けて歩き出した。



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