表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の時代  作者: ブルーベリージャム
始まりの時
12/16

安西煌 4話

ご評価いただきました。ありがとうございます。

安西は再び駅を目指して歩き始める。

途中コンビニにでも寄って一息つこうと思った。

土くれとの激突で痛んだ身体は回復したようだが、服には土汚れが目立つ。

この恰好では、ファミレスには入れないだろう。


2つ目の交差点では事故があったようだ。

黒のミニバンとパトカーがぶつかっている。

ミニバンは家族連れで避難中だったのか、車内に荷物が多い。

運転手らしき男性と警官が話をしている。

もう一人の警官は他の車を誘導していた。


日常の中の非日常の風景。

だが、昨日からの出来事は非日常ではない。


安西は思う。


これは、異常だ。

この状況はいつまで続くのか。

短期か、長期か。

終わりはあるのか、永続するのか。

日常に適した社会と社会のルールは異常の世界では役に立たないのでは?


さっきの不良達。

もし警官が到着したとして、対応できるはずがない。

空を飛んで逃げてお終いだ。


昨日の犬。

あれは、拳銃で撃って倒せるモノなのか?


あのでかい鳥。

不良をエサとして持って行った。


あんなのが、もしかして、たくさんいるのか?


右手を見る安西。


自分は火を点けられる。

火を消すこともできた。

だが、これで何ができるのか?


あの子達は順応していたなぁ。

ヒーロー戦隊。

土を操り、俺を助けてくれた。

石を飛ばしてミサイルだと言っていた。

あの木の枝はどうやって使うんだろう。

たしか、あの貴志って子は剣の担当だって言っていた。


(ヒーローかぁ)


でも戦隊ものは、最後にロボットに乗って戦ってたよな。

この能力(?)はどう考えても魔法だ。

火の魔法使い。

そういえば漫画でみたな。

火球を飛ばしたり、火の壁を作ったり、全身炎の塊になってモンスターをなぎ倒していた。


(俺にもできるかな?)


道路の案内板が目に入る。

このまま直進すれば300mで駅だ。

右折した先には"中の島公園"がある。

大きな公園で大きな池があり、池の中に浮島があることで有名だ。


(広い場所で、ちょっと試してみるか。)


安西は公園へと向かった。



――――――――――



公園に近づくとムッとした緑の香りが強く漂っていた。

こんなものか。と、安西は歩を進める。

車の通りはなく、人通りもない。

土曜日の朝9時30分。

普段ならかなりの人がいるだろう。


昨日からの火事騒ぎもあるし、停電も続いている。

公園に遊びにくる余裕はないだろう。

それに、安西の目的を考えると人がいない方が都合が良い。

安西は都合よく考えた。


公園が見えてくる。

大きく古い公園なのだろう、樹も大きく緑豊かだ。

ザワザワ

と木の葉が風に揺れる音が心地よい。


公園横の通りを進み、公園入口を目指す。

公園側の敷地は低木が植わり、すぐに大きな樹が立ち並び公園内は見えなくなっている。

ザワザワ

ザワザワ

葉の音が聞こえる。

安西は足を止めた。

(鳥の鳴き声がしないな?)

樹の上方を見上げるが木の葉が多く、見通しは悪い。

先ほどの"異常事態"の考えがよぎり、様子をみるが特に変わった動きはないようだ。

(気にしすぎか。)

再び歩き出し、公園入口に近づくと様子が一変した。

「えっ?」

公園前の道路はひび割れ、木の根が見えている。

奥の方に行くにつれ見えている木の根は多くなり通りの反対側の住宅街まで伸びているようだ。

ミシリミシリ

ボコボコ

ズズズズ

重低音が足元から伝わってくる。

ひび割れはその数を増し、めくれたアスファルトから土が見えている。

さらに木の根がうねり、アスファルトを破壊していく。


(これは、根が成長しているのか。)


ブワァ

そんな音が聞こえた様に感じた。

公園の樹の連なりから花粉の塊が吐き出される。


安西は振り返り走り出した。


あれは根じゃない。

樹が成長しているんだ。

そして、信じられないが、自ら土を耕している。

自分たちの敷地を増やし、森を作るために。


一体どうなっている。

情報が欲しい。

停電でテレビは見ていない。

新聞はとっていない。

スマホは圏外で時計の代わりにしかならない。

そのバッテリーも残りは30%しかない。

情報だ、情報が欲しい。


通りに戻り、駅を目指した。

キャリーバックはどうでも良い。

今、何が起きているのか知りたい。

管理会社?不動産屋?

こんな世界でどこに行けば良いんだ。


安西は歩みを早め、小走りになり、ついには全力で走り始めた。



――――――――――



安西は自宅マンションに帰ってきた。

結局、駅には辿り着けなかった。


駅前広場は大勢の人で溢れていた。


皆、避難しようと駅に集まったが、電車は動いていない。

駅前の商店やコンビニの商品は全て買われ、棚は空だった。

そして、皆、今の状況がどうなっているのか知らなかった。

ここだけが異常なのか。

日本中が異常なのか。

世界中が異常なのか。


安西は、あきらめ、帰路についた。


マンションに着いた時には日が暮れていた。

一日中歩いただけで終わった。

ふと、肉の焼ける良い匂いがした。

空腹であった事を思い出す。


(くそっ。)


非常階段を上ると匂いが強くなる。

どうやらマンションの住民が肉を焼いているらしい。

ほとんどの住民は避難したと思ったが、自分の様に残っている者もまだ居るようだ。

3階の廊下を見ると換気扇から煙が漂っている部屋があった。


(くそっ。)


6階の自室まで駆け上がる。

冷蔵庫を開け、水のペットボトルを出し、一気に飲む。


一息つくと自分が薄汚れている事に気づいた。、

手も顔も汚れ、服には土汚れが乾燥した跡がこびりついている。

綺麗にするには水が要る。

だが、今や水は貴重品だ。

水と食料を確保しなければ、生きてはいけない。


(くそっ。)


安西は顔と手をタオルで拭い、部屋に置いてあった服に着替えると部屋を出た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ