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序
夜。
住宅街からやや離れた道路沿い。
夜間でも交通量の多い幹線道路を照らす街灯の反対側。
その暗がりの中にその穴は現れた。
穴、暗闇よりもなお暗い漆黒の穴。
直径は1mほど、地上から30cmほどの空間に開いている。
穴、といったが空中に在ることから球体なのか。
しかし、それを見る者がいればやはり、穴、というだろう。
ややしばらくして、その穴から漂い出るものがあった。
直径10cmほどの球体。
その輪郭はぼやけて、はっきりとは判らないが球体である。
中心部が赤く光っている。
穴よりふわふわと漂い出てくると、そのまま空中へと漂い出した。
穴からはさらに球体が漂い出てくる。
赤い球体、青い球体、緑の球体。
色とりどりの球体が出現し、空中に漂い出る。
数十の球体が、やがて数百の球体となり、数千、数万となる。
球体の奔流は続き、やがて止まる。
穴は、その役目を終え、消失した。




