怪物と収納と
アイテムボックス、現実でも欲しいよね
「準備は整っているんだが……食料を外に持ち出すすべは無いのか?」
大抵の小説の主人公ならここで“アイテムボックス”なるスキルを発現させるんだが、儂はどうなんだ?
アイテムボックスが有るか無いかでは話が違ってくる。アイテムボックスが有ればいちいち食料や水を取りに戻ったり、カバンを持ちながら戦わなくて済む。
一方、アイテムボックスが無い場合は疲れるたびに家に取りに戻り、カバンに気を取られながら戦わなければならない。
さらに地球がファンタジーのようになっているなら、もしかしたらモンスターを倒したらアイテムがドロップする可能性もある。
その場合アイテムボックスがあった方が効率的に事が進む。
「何が何でもアイテムボックスは欲しいところだが……」
使い方がわからない。もしかしてスキルとかは無いのか?じゃあこの剛力無双は何なんだ?
その後も試行錯誤を繰り返すが、一向に食料が収納される気配はない。
「やっぱりアイテムボックスは無い感じか……しゃーない、しばらくはこの辺りから動かない予定だから家と外を往復するか……」
そして手に持っていたペットボトルの水を机に置いたつもりだったがそのまま倒れて転がってしまった。
諦め掛けていたその時……………
ペットボトルが一瞬にして消えた
「はっ……?」
何が起きた?転がっていったペットボトルが突如として消えた。まさかアイテムボックスに覚醒したのか!?
「どこだ!?どこに行ったんだペットボトル!?いたら返事してくれ!!」
無論ペットボトルが返事するとは思ってないがそんなことを言っている場合では無い。儂にとっては所轄問題な事象が目の前で起きた。
「この辺か!?この辺で消えたのか!?」
ひたすらペットボトルが消えた場所を探しまくる。寝転んだりしゃがんだり跳ねたり。
するとその場に落ちていたウエストポーチに儂の直感が反応した。
このウエストポーチは修学旅行のお土産で買ったものだ。班行動していたはずなのに気づけば班のメンバーに逃げられ、泣きそうになりながら買った思い出の品だからよく覚えている。
「まさかこれか?」
ウエストポーチを手に取り中を覗いてみると、漆黒の闇のように真っ黒だった。
試しにスマホを入れてみると無事に跡形もなく収納された。
しかし問題がひとつ………
「これどうやって取り出すんだ?」
その後スマホを取り返すべく10分ほど格闘した。ポーチに手を突っ込み思い浮かべたら手に持っていたよ。一瞬スマホパクられたんじゃねえかと焦った。
次はポーチより大きめの物が入るか実験してみよう。ポーチは大体20㎝ほどの大きさだ。
それより大きめの物、とりあえずテーブルでいいか。
テーブルをポーチの入り口に触れさしてみた。すると吸い込まれるようにポーチの中に収納された。
「おおっ!この物理法則を完全に無視した収納方法!!マジで地球はファンタジーな世界になってしまったようだな」
そしてポーチからテーブルを取り出す。容量がどこまで入るかわからんがとりあえず片っ端から食料や水をポーチにぶち込んでいく。
「本当ならその辺から発動できればよかったんだが、贅沢は言ってられんな。それと腰に巻くウエストポーチでよかった。リュックとかカバンだったら戦闘の邪魔になるからな」
その後もどんどんぶち込んでいく。そう思えば家に食料こんなにあったんだな。非日常にならなければ気づかないこともあるもんだ。
ひとまずポーチに収納作業は終了。
後は何が必要かな?武器とかか?
儂は剣道や長物を使った武術も嗜んでいたから使えるには使えるが家にはそれらしきものはない。あるといったら物干し竿か?
物干し竿も一応使えそうだから収納しておくか。
「後は包丁とかいるか?大抵始めの武器は包丁とかナイフ、カナヅチとかが武器となるが儂は別にいらんのだよな」
接近戦自信あるし、負ける気は無いし。
でもこの油断が後々の大怪我に繋がると思ったら持って行った方がいいのか?よさそうだな。
「よし持って行こう。もしかしたら調理するかもしれんし。あるに越したことはない」
後は…………
その後も20分ぐらい何を持っていくか いかないかで一人で思索していた。
儂は神経質なんだ。
小学生の頃、お菓子300円で何を持っていくかで軽く1日は考えた男だ。
しばらくして…………………
そして遂に外に向かう準備が完成した。作業が長く感じたかもしれんが儂はそうではない。これから外に出たら絶対的な命の保証は無いからな。慎重になって損になることはない。
「さてと……後は儂自身がどこまで通用するかだな」
筋力が690あるからといって油断はしてはいけない。
もしかしたらファンタジーの世界の平均筋力は1000です!とかかもしれないからな。
喧嘩や武道、試合で負けたことがないからといって油断してはいけない。
もしかしたら身長3mほどの武術を極めたムキムキゴリラが現れるかもしれないからな。
トラックに轢かれても傷一つつかないからといって油断してはいけない。
もしかしたら音速でミサイルが飛んでくるかもしれないからな。
そんな訳はない、と思った方も多いと思うが、今日から地球はファンタジーな世界に変わったしまった。
何が起こるかは未知数だからこそ『かもしれない』という心を忘れてはいけないと思うんだ。
だがしかしワクワクしないわけでもない。
もしかしたら儂も本気を出せる相手が見つかるかもしれん。
今までは力を出す前に全て壊れてしまったからな。
「準備は整った!儂の体調も万全!さぁ、至高の一歩を踏み出そうか!!」
そうしてドアに手をかけ、酒池肉林の世界に踏み出した。
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