怪物と現状確認と
チート具合ってどれくらいがいいのか難しいよね…
「こりゃ……とんでもない自体になったのう」
映らなくなったテレビを見ながら儂は一人つぶやいた。
「しかも……ドラゴンって……本物初めて見たぞ」
それだけ先程の映像が衝撃的すぎた。あのインタビューしてたお姉さんの安否も気になるところだが、明日の命の保証も無くなった今の状況ではドラゴンの方が最優先事項だ。
「大きさは見た感じビルの半分ぐらいはあったから8mぐらいかな?あんなもんミサイルでも勝てないじゃろ………」
子供の頃に電車を見て凄えと思ったことがある。あの時はこんなものに引かれたら死ぬなとか幼いながらに思ったりした。
しかし何故だろう?
何故かあのドラゴンを見ても『凄え』とか『勝てるのか?』とは思うが、自分が負けるとは思えないのだ。
幼い頃から化け物だの怪物だの言われ続けたせいか?
ただ直感的に今の儂じゃ勝てない気がするだけだ。殺されるんじゃないかという感情は微塵も湧き上がってこない。
「まぁ……流石にそれは驕りが過ぎるか」
あのドラゴンが儂の家の近辺にいるわけではない。むしろ遠いぐらいだ。儂の家は現在『兵庫県』にある。
だからあのドラゴンに現段階で怯えることはない。
飛んでくるとなれば話は別だし、この近辺にもとんでもなく強いモンスターがいるかもしれないから油断は出来ない。
「とりあえず……今何が出来るか探っていくか」
まずは電気が通っているかだ。料理するときなどには必要不可欠だし。
「まぁ…止まってるわな」
案の定止まっていた。上空にはモンスターも飛んでいるんだ。電線なんてすぐに切られるだろう。
「次は水道だが……幸い貯水されるタイプだから今は無事、と」
これで水が止まってたりしたらそれこそヤバいな。
幸いにもうちはまだ出るし、買い占めていた水や2ℓのお茶が残っている。人は水を飲まなくても生きられるが流石に1週間程が限界だからな。
「そして電波は繋がらない、と」
あれからテレビはうんともすんとも言わなくなった。そして携帯もずっと圏外のままで情報の1つも入手することができない。
「クソっ……外がどうなってるのか情報が欲しいのに……」
現状家の外にはモンスターが闊歩しているから全国的にもそうなのだろうが、もしかしたら被害が無い地域もあるかもしれない。
それにクラスメイトの安否も気になる。
現在の時刻は午前10時。今日は平日で別に学校が休みだった訳ではない。がっつり儂が寝坊して遅刻しただけだ。だからみんな学校にいるだろう。
別に仲がいい友達がいるわけではない。殆どが儂のことを怖がって避けておったしな。未練があるのかと言われれば、無いと即答できるくらいには思い入れがない。
だからといって心配しない訳ではない。
だがどうすることもできないから、全員が無事であることを祈っておく。
「生き残るための資源は何とか確保できたが、問題はどう切り抜けるかじゃな」
警察や自衛隊はもう動き出していると思うが、あんなドラゴンに勝てるとは到底思えない。しかも人数に限りがあるからやはり自分の身は自分で守らなければ。
「やはりステータスとかあるのか?ステータス!」
試しに唱えてみた。すると……
東雲 雲竜
【ジョブ】 ステゴロウォーリアー
【HP】 890
【MP】 0
【筋力】 690
【耐久】 480
【魔力】 0
【敏捷】 200
【知力】 120
【固有スキル】 剛力無双
…………なんか出た
「なんじゃこれ?これがファンタジーでお馴染みのステータスか!!」
やはり世界はおかしくなってしまったと思うと同時に儂のステータスにおかしな点がかなり見つかった。
「まずこの『ステゴロウォーリアー』とはなんだ!?頭悪そうな響きじゃのう」
職業がステゴロウォーリアー。名前からして脳筋感溢れでている。まぁ、現にステータスを見る限り脳筋タイプだと思う。
「魔力なんぞ現代に生きていたら誰しも使っとらんから全員が0であろうな。断じて儂が脳筋だからではない。全国テストでも100位以内だし」
何を隠そう儂はどちらかというと頭が良い部類だ。
学校でもいつも上位だし、全国テストでも100位以内には入ることができる。
にもかかわらず知力が120ということはステータス判定はよっぽど厳しいのだろう。
「だからこそ儂の体力、筋力、耐久 のステータスは狂ってるんじゃないか?」
儂が読んだような小説では大抵が10とかではなかったか?690などゴリラと同じくらいではないか?普通の人の69倍だぞ?そりゃペンや机が折れるわ。
そして謎の固有スキル。剛力無双ってまた名前から脳筋臭が凄いのだが気のせいか?
「説明などないのか……? おっ、でたでた。『武の神様の寵愛を受けし者に与えられるスキル。接近戦闘のキレが上がり、威力に補正がかかる』、と……」
…………うん。チートじゃな。
なんじゃ武の神様って。寵愛を受けていたからペンが1週間に10本ほど壊れるのか。寵愛を受けていたからあらゆる武術を極めることができたのか。寵愛を受けていたからあらゆる者が逃げていくのか。
「………素直に喜んでいいのかわからんな…」
確かにこの世界で生きていく上にはとんでもない代物だろう。だが1つ言いたい。
なら正直な話、今欲しかったな!?
普通の日常ではこのスキル要らないな!?このスキルなかったらもっと友達できたかもしれないではないか!?損失をもっと控えれたかもしれないではないか!?
「あ〜〜もう、考えても仕方ない!有り難くスキルを頂戴しておこう!」
これで自分の確認も終わった。
そして後は最後の確認だけだ。
そう、本当に俺のステータスが異常かどうかを確かめることだ。
それと、モンスターを倒せるかどうかということだ。
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