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六:漢のロマン

 



「・・・はぁ!? なっ、コレ、嘘だろ・・・」


 アタシは風呂に入る前の脱衣所で、叫んだ。


 相対する鏡には、この姿になってから初めて写し出される姿があってーーーーー見慣れないモノが、ついていたのだ。


 そっと触れてみても、きちんと感覚がある。


 そして、直前まで女性の身体だったから違和感があるけれど、元々こうだった事も思い出す。そう、両性の種族だったのだ。

 ストンと理解したが、未だ落ち着かない心を静めながら、改めて前側から後側を鏡に写して、翼の観察に入った。

 付け根から先まで、とりあえず状態確認と広げた状態のサイズなど確認してボディチェックを終え、あとは下半身を見ないようにして浴室に移動した。


 魔動式シャワーも適温で、使っても自動補充のお風呂セットで全身洗い、温泉に浸かる。

 足もゆったり伸ばせるサイズなため、アタシは久しぶりにのんびり入浴を楽しんだ。

 途中、何故かメシアが乱入して来そうになるのを全力で阻止したりとアクシデントはあったが、無事に風呂から上がってキッチンで水を飲む。


「お帰りなさい姉さま~、コレ使う?」

「お、さんきゅー」


 そのままリビングへ行き、ゆったりソファに寄りかかって、メシアから化粧水を受け取って肌ケアをし、温風を魔術で生み出して、長い髪をドライ&ケアする。

 この肌ケア&ヘアケアの用品も、無限の腕輪に入っていた。

 あのオネエ、本当に流石オネエだわ。

 オレンジフラワーのような、ネロリのような良い香りに包まれて、全身ケア終了したのでメシアの隣に座る。


「とりあえず、ひと休憩入れたら、寝ようか。」

「うん、夜も一緒に寝ましょうね、姉さま~」


 メシアからハーブティをもらって、まったりしてから、アタシたちは寝室へと移動し、眠りにつくのだった。





 その頃、外の闇の中では。

 この一帯、深淵の森の名に相応しく、多種多様な魔物が蠢き、森への侵入者を排除すべく追跡を始めていたーーー


 そして、時を同じくして。


 時間が逆行したため、館の地下深くにて、永き眠りに付いていた者が、目を覚ましたのだった。





 翌朝。


 まだ、日の昇らない位の早朝に、アタシは目覚めた。

 外は日の出よりも早い為か、空色と藍色を足したかのような、美しい色。

 アタシは喉が渇いたので、リビングまで降りて、窓の外を眺めながらコーヒーを淹れた。

 ーーーうん、やはりマンデリンは美味しい。



 しばらく、独りでゆっくり寝起きのコーヒータイムを満喫していたら。


 ーーーキィ・・・・カタン・・・・


 音が、鳴った。しかも地下から。

 アタシはそっとコーヒーカップを戻し、音がしたであろう方向へ足を向けた。

 リビングを出て、キッチン、風呂場を過ぎ、更に奥の部屋。

 多分、キッチンの奥の位置にあるから、酒蔵的な食品倉庫、だったと思う。

 とりあえず、そこまで行って、中に入ってみる。

 薄暗い光量のなか、物凄い数の洋酒?ワイン?が収蔵されている、更にその奥。

 不自然な位置に、地下へ続く階段があった。多分、音はここから聴こえて来たのだろう。


 さて。未知の生物が下にいるとして。一番ビックリする方法は、何かないだろうか?

 少し考え、蔵の中と周囲と地上に結界を貼り、被害がないように準備してから、階段の降り口に移動する。そして、階下へ向かって。


「特殊召還!津○海峡の激流と本マグロ、そしてみんなの理想の最強な人類(性別問わず)!!

 地下でおおいに暴れちゃってください!!」


 宙に浮かぶ召還陣から物凄い勢いで激流と100キロオーバーの各種鮪たちが雪崩れ込み、それを見て入口付近でいそいそ太い竿とゴツいリール、餌はイカや何ヵ所か折られたサンマにて、一本釣りを始める最強と思わしき女性。

 扱う竿さばきは、まるで餌のサンマが泳いでいるように繊細でかつ正確、そしてその餌に食らい付いたマグロを、全身の筋肉とバネを使って全力で釣り上げてゆく!


「うおぉ・・一本100万のバクチだ!これが、漢のロマンだ!!」


 釣り上げた後のサポートをしながら、既に陸に上がったマグロの血抜きをこなし、ついに彼女は、200キロレベルのクロマグロを釣り上げた!!


 流石に陸に揚げるのは独りでは難しそうだったので魔術でサポートし、ラストは感動のハイタッチ!!

 今夜はみんなでマグロづくしだっ!!


 人類最強の女性は、其から更にまだ残っていたマグロを次々揚げ、そして、ついに謎の人型をも、釣り上げたのだった。




これぞ、漢のロマン!!


マグロは血抜きした後は速攻、無限の腕輪に収納されております。

いつでも美味しいマグロを食べられる!!

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