二十三:事情聴取
翌朝、早朝。
アタシたちはセエレの部下と共に、街へとやって来ていた。
とりあえず部下が各々の仕事場へ散るのを見送り、アタシたちは目的の肉屋へと足を運ぶ。まだ店は開いてはいなかったが、店頭で支度をしていた店主が慌てて此方へとやってきた。
「ああ、あんたら、大丈夫だったか?とりあえず、ここで話すのも何だから店に入ってくれ。」
やっぱり何かあったのかな?とアタシたちは顔を見合せつつ、店主の後に続いた。
店内に入り、作業場手前の扉から室内に入ると、そこは休憩所のような場所だった。
店主に指し示されるまま、大きなソファにアタシたちは腰掛けた。
目の前に座った店主が、口を開く。
「あんたらがあの日、入荷したばかりの不揃い卵を買って行った後、王都の騎士と王の側近を名乗る奴が店に来てよぅ。それで、今日入荷した卵はあるか?って聞いてきたから、聞かれるままあの卵の山を指したら、これじゃない、って言ってな。それで、買って行った奴の特徴を教えろ、言わないと牢獄行きって言われて、アンタらの事を話す羽目になっちまった、すまん。」
ふむ、やはりか。。
王が裏にいるのか、王の裏側で何かが動いているのか。
とにかく、面倒な事に巻き込まれた感じデスヨネー。
平謝りする店主を落ち着かせ、もう少し情報を聞き出したあと店主自身の身の安全を気を付けるように言って、アタシたちは店を出た。
みんな、何かを考えてる顔をしているな。
アタシは他の二人と共に、半地下の喫茶店へと足を運んだ。
喫茶店の店主にお願いして、商談で使うような個室に案内してもらう。
ここは、セエレの部下から聞き出した店で、昼間はほとんど客はおらず商談にはうってつけの場所なのだそうだ。
雰囲気から察するに、夜のバー経営の方が儲かるのかもな。
席に付いたアタシたちは、思い思いのモーニングセットを頼んで、話し始める。
「ちょっと面倒になりそうだよな、今回のは。」
「そうねぇ。フランちゃんたちも、変な事目的で別のお家に行くのを防げて本当に良かったとは思うけど、相手がアレだと、しつこい事になるかもね、姉さま。」
「ええ、相手が誰であれ、裏でどう動いて来るかによって、対応が違って参りますからねぇ。こちらでも少しお調べ致しますね、ご主人様。」
そういって、セエレは腕輪で何処かに指示を送っていた。
「それにしてもさ、この件ってどういう目的でこんな真似したんだろうな。」
「そうねぇ。支配する為なのか守る為なのか、それとも下克上の為なのか・・・それとも普通に食べる為なのかしら?それはそれでメシアは怒るけれど。」
「な。でも、食べる為なら直輸入するだろうし、それはないか。あとは普通に飼う為?いや、それは無理があるかぁ。」
「そうねぇ。あとは、相手の出方次第じゃないかしら?姉さまにとって、悪!と感じたらお仕置きすれば良いと思うわ。」
「んだな~。」
と、ここで美味しい珈琲や紅茶が運ばれてきた。
一口飲んで、これはブルーマウンテンのブレンドの様な味わいで、気に入った。あとで珈琲を買って行こうと思う。
メシアの紅茶も、ルイボスティの様な水色で、香りが少しリンデンっぽい優しい味わいだというので、そちらも購入する事にした。
通信と言う名の隠密作業から帰ってきたセエレも、この珈琲は美味しいと言っていたので、ここの常連になるかもなぁ。
「ああ、そういえばご主人様、よっすぃ~さんにも現在の様子を伺いましたよ。」
「お、向こうは平和にやってた?」
「ええ、外で皆で軍事訓練を行ったそうで、その際一緒に森の仲間たちも加入して、大規模訓練となったそうです。現在、森に侵入した見知らぬ者達を追跡して、目的調査中との事。どうやら、3部隊ほど森に侵入してるそうです。闘鶏達の隠密行動にとても評価が付いているそうですよ?」
「ぜんっっぜん平和じゃなかった!!」
「いえ、ご安心を。相手は森の仲間達よりもレベルが低い模様なので、きぃさんやミュールの実地訓練には持ってこいとの事でした。」
「え!?いつの間に鍛えられてるの!?」
「まあ姉さま、昔からよっすぃ~さんにかかれば、大抵の人は強くなっていたじゃない?山でのアウトドアの時とか?」
メシアの一言で、そういえば、と思い出す。
山に3人で泊まりに行った時、キャンプ場で他の利用者たちと夕飯作りするとき、皆に簡単、手軽で美味しい、現地で素材を調達した調理法を伝授していたっけ。
あの時は魚が沢山釣れたから、手持ちの器具でどうやって作るか、とか、こうしたら時短になるとか、獣対策で軽く講習したりとか、よっすぃ~にしては滅茶苦茶喋って、あとで疲弊していたっけ。
案の定、深夜にデカイ猪がやって来たけれど、よっすぃ~がハリセンと太めの木の棒で誘導してキャンプ地には影響なし!というオマケ付きで。
「そういえば、そんなこともあったなぁ。今回も其の延長線上かぁ。なら、大丈夫かな。」
「そうよ。鶏さんたちも沢山卵を生んでくれるから、いなくなったら困っちゃうし。護り手が強くなるのは必然的だわ。」
「ええ、私の部下も、農場エリアでよっすぃ~さんに鍛えられながら作業してるお陰で、以前よりも倍近く強くなっております。ご心配はご無用ですよ?」
「ここに来てから一週間しか経ってないと思うけど、そんなに!?」
もう、よっすぃ~隊長様々だわ。と感謝していると、みんなの分のモーニングセットが届いたので、とりあえずアタシ達は腹ごしらえすることにしたのだった。
これで、この世界に来てまだ8日目の出来事なのです。
巻き込まれ過ぎぃ!!