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二十二:龍三昧

 

 うーーーーーん、


 うううーーーーん、


 ・・・・うん。


 やっぱり、これにしよう。




 思考の海から帰還して、アタシは白龍に向かい合う。

 白くて、紅い瞳。

 とても純粋な眼差しで見つめる白龍に、アタシは告げた。


「アタシがメシアと一緒に住んで、初めて咲かせた白い花の名前にしよう。

 今日から君は、木苺。『きぃ』だよ。」


 これを聴いたメシアが、慌てて立ち上がって此方にやってくる。


「ええ!姉さまも一緒なの!?メシアもこの紅龍に、あの時の実から取ってフランボワーズ・・・フランって名付けたの~!」


 とても嬉しそうなメシアとアタシは顔を見合せ、笑った。

 二人でメシアの家に住みだして、殺風景な庭に果樹を、と最初に買ったのが木苺だった。

 その樹は乾燥に強く、半日陰でもすくすく育ち、環境が良かったのか最終的に沢山の花をつけ実りを与えてくれた。

 初めての収穫は、メシアと二人で凄く盛り上がったっけ。

 そのあと、メシアが作ってくれたお菓子が、これまた凄く美味しかったんだよなぁ。


「メシア、あの時のパイ、また作ってくれる?」

「うんっ!喜んで!!」


 ニコニコするアタシたちの足元で、きぃとフランもキュッキュ言って喜んでいた。

 なお、他の仔の名前はというと。


 よっすぃ~の翠龍:ヴェルト

 セエレの黒龍:ミュール

 黒呼の紫龍:桔梗

 白呼の青龍:空海

 月呼の黄龍:琥珀


 うん、それなりの名前になっていた。

 セエレとよっすぃ~に名前の由来を聞いてみたら。


「ふふ、ご主人様の仔が木苺なら、私の仔も黒い木苺になるのは必然です。」

「・・・・・みどり」


 うん、セエレは何となくわかっていたけど、意外とよっすぃ~もそのままだったよ!

 あとの3人も、外皮の色そのまんまだし!!

 あれ、思い入れとかの話、何処行った!?


「それにしても、姉さま、また食べ物の名前だわね。メシアも人の事言えないけれど。」


 アタシもいつも通りになっちゃったよ!!


 でも、まあ・・・龍たちは何だか喜んでいるみたいだから、いいかぁ。


 アタシは特に深く考えず、キュっキュ騒ぐ仔龍を眺めるのだった。




 そして。


 平穏な1日が終わる食後の時間。


 順番に風呂に入り、うとうとしてる白呼を月呼が世話焼いていたり、長い髪を乾かしつつ読書をする黒呼や、ストレッチしてるよっすぃ~など、各々好きにリビングで過ごしていたとき。


 突然、集まってうたた寝していた龍が起き出して、自分の育て親の足元に行ったかと思うと。


 ーーーシュバン!


 謎の破裂音を立てて、人型へと、変化した。




「「「「「「「・・・・・え?」」」」」」」


 何が起きたのか。

 アタシたちは当然、固まった。

 アタシの目の前には、真っ白な肌に白銀の長い髪に紅い瞳、少し幼さを残した顔立ちの少年とも青年とも取れる者が、困った顔で立っていたーーー全裸で。


 ふと、メシアを見やると、ピンクブロンドで紅い瞳の、割りとナイスバディなお姉ちゃんが、これまた全裸で立っているーーー推定、Fか。


 よっすぃ~の前にはシルバーの髪で深い翠の瞳、良い筋肉でとても健康そうな少年が全裸でおり、

 セエレの眼前には濡れたような黒い長髪に赤い瞳、白い素肌にクールな面立ちで細マッチョの少年がいる。


 なお、黒呼には黒髪で蒼紫色の瞳の少年が、白呼の前には黒髪で鮮やかな空色の瞳の少年が、月呼の前にはふわふわとした茶髪で蜂蜜色の瞳の少女が、それぞれ立っていた。


「えーーーーっと、、、きぃ?」

「うん、そうだよ、パパ。」


 純粋な瞳でみつめてくる、木苺。

 男の子だったのか・・・ていうかパパって。パパって!!

 元女なので、それに少しショックを受けつつ、着ていた上着をかけて冷えないようにしてあげると、座っていたアタシの膝の上に向かい合うように跨がって抱きついてきた。眠いのかな?


 ふと、メシアを見ると、メシアもとりあえず自分の着ていたカーディガンを着せているところだった。あれは、目に毒だからなー。


 その後、固まっていた各々が、ダッシュで服を取りに行ってくれたよっすぃ~とセエレによって、目の前の子供たちに服を着せていくのだった。



 騒ぎが落ち着いて、アタシは親組には珈琲、紅茶を出し、子供たちには蜂蜜入りのホットミルクを出して、席に着く。

 正直、どうしてこういう風になったのか、サッパリわからんので、直接きぃに問いかけてみた。


「きぃ、知ってたら教えて欲しいんだけど、どうして皆人型に変化したの?」

「えっとね、パパ。僕、パパから魔力をいっぱいもらって大きくなったんだけど、その上でパパが名前をくれたから、ちゃんとパパの子供になれたから、パパと同じ体になれたの。

 殻の中にいたときから、パパのこと勉強?してたから、こうやっておしゃべりできるんだ。みんな、そうだよ?」


 なるほど、龍は生まれる前から学習し、魔力を糧にし急激成長、魔力を与えた者が名を付けると、その者と同じ種族の姿形になれる、ということか。

 あれかな、大自然の中なら、擬態をして生存率を上げるとかそんな感じか?確か月呼が、伝説上の生物、的に言ってたから、出生率も悪いのかな?


 そこまで考えて、あれ、とも思う。




 ーーーじゃあ、何故、あの肉屋に卵があったのか?



 あの肉屋の店主も何の魔物の卵か知らず、むしろ、商人から色数型不揃いの見切り品でいつも安く卸してもらってる卵達のひとつ、と言っていた。

 そして商人も、中身を知らずに卸しているはずだ。龍の卵なら、確実に買い手がつく。

 それなら、その前。

 商人が仕入れた時の相手、もしくは肉屋に売る前に混入させた奴は、その事を知っているのではないか?


 ・・・つまり、この子達は、この国の誰かによって密輸された、のかもしれない。



 そう、また、巻き込まれた感があるのだ。


 アタシは少し考えて、また明日、街へ行き裏を取る事にした。

 その為、自分の考えを皆に聴かせると、大人組は実は朝からその懸念があったそうで、アタシと共にメシア、セエレが一緒に行く事になった。

 よっすぃ~はその間、きぃ達を護る為に残り、忍組も御世話メインで残る事になった。



 そして、夜が更けていくーーー

龍は伝説の土地、人の冒険者でも最高レベルの人くらいしか立ち入れないような場所で生息しているそうです。

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