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二十一:聖母、ふたたび

 

 バッキバキに卵を破って出てきた、小さな爬虫類は、キュウキュウ言いながらテーブルの上を動いていた。


 皆、あまりの可愛さにテーブルへ顔を近づけ、ニコニコ見つめている。


 しばらくすると、こちらへ真っ白な仔が近づいてきた。

 思わず抱き上げてやると、嬉しそうにキュッキュ鳴いて肩の上へ登って行った。

 他の仔も、今いるメンバー全員に一人一匹、という感じで懐かれていた。

 そのなかで、一匹だけ余った仔がいたが、キューキュー鳴いていたと思ったら、背中にある翼を広げて必死にはためかせ、浮遊した後にヨロヨロ扉から出て行ってしまった。


「え、どこに行・・・月呼のところ?」


 扉から見上げていたら、薄黄色の爬虫類は半開きの月呼のいる客間へと入って行った。

 ふむ、ひとり一人、相性でもあるのだろうか?

 とりあえず、わちゃわちゃ戯れている皆を観察すると。


 アタシは白い仔、メシアは桃色の仔、よっすぃ~は薄緑の仔、セエレは黒い仔、黒呼は薄紫の仔、白呼は水色の仔がとても懐いているみたいだった。


 そして、ある程度魔物の仔が落ち着いてきたところでーーー



「キャアアアアア!!」

 という悲鳴と共に、月呼が階下まで転がり落ちてきた。

 落下した月呼を心配するように、薄黄色の仔がキュッキュ鳴いている。


「おお、目が覚めたかー?身体は平気?」

「何を呑気に言っておる!?龍の仔だぞ!?とんでもなくレアな魔物だぞ!?子供とて、一匹で国を滅ぼせるのだぞ!?それ、を・・・。」


 月呼は、何かを言いかけて止まってしまった。

 目を見開いて、アタシ達を見つめている。

 ふむ、そうか。


「そうか、お前は龍なんだな~!名前、どうしよっかー?」

「わあ!姉さまそれなら、みんなで一匹ずつ育てましょう!子育てだわ!楽しみ~!」

「うふふ、どの仔も本当に良い仔ですね。育て甲斐がありそうです・・・おや、おチビちゃん、少し眠いのですか?それともお腹が空きましたか?」

「ふ。こうして抱いてると、白呼の幼い頃を思い出すな。」

「あはは、どれくらいで一緒に遊べるかなぁ?」


 各々、思い思いに龍の仔をあやして、話し合っていた。

 セエレに関しては、いつぞやの洞窟でみたような優しい表情で、子守唄を歌っている。

 そして、制限版の無限の腕輪から数種類のミルクと粉を取り出して混ぜ、少し温めて、哺乳瓶に入れて黒龍に飲ませていた。



「だから、どうしてこんなに龍がいるんだ!?そして何故、お前達は平然としている!?伝説上の災害神クラスの魔物なんだぞ!?」

「だって、産まれて来るの見ちゃったし。孵った以上は育てないと。ねぇ?」

「きゅーーー!!」


 動揺する月呼の肩にポンと手を置き、アタシは笑顔で告げた。


「ああ、そういえば先ほどの戦いの報酬なんだけど、月呼にはここで住み込みで働いてもらうから!だから、月呼の龍もちゃんとお世話宜しく!!」


「は?・・・はあぁぁぁぁぁぁ!?」


 絶叫する月呼を背にして、アタシは寝る前の龍の授乳を済ませて、メシアと共にニッコニコになるのだったーーー






 翌朝、日の出前。


 余りの息苦しさと、メシアの魘される声で目覚めたアタシは、襲いかかる重さに薄暗い布団の上をまさぐった。


 そこで手に触れる硬い感触と、手を舐める感覚に一気に覚醒した。


 上体を起こして見つめる先には。

 大型犬程の大きさの白い龍と紅色の様な龍が、アタシたちの上で丸くなり、揃って此方を見上げていた。


 そりゃー、こんなに大きい龍が上に乗ってたら、息苦しいよねー。

 っていうか、どうして一晩でこんなに育ったんだ!?そりゃー子供の時期は早く過ぎるってよく言うけれど、寝る前迄は肩乗りサイズだったのに!!


 色々思う所はあったが、とりあえず白い龍と紅い龍をアタシたちの間に寝そべらせ、二匹に腕枕をしつつ、もう一度眠りに着いたのだった。





 それから、朝になって二匹の龍にアタシたちは起こされ、驚くメシアに明け方の事を説明して、階下に降りた。

 顔を洗い、キッチンでセエレ式ミルクを作って紅白の龍たちに皿で飲ませる。


 その後、サンドイッチ用の肉を焼いていると、紅白の龍がギャウキャウ言うので、コピーした照り焼き肉を食べさせたら、喜んで食べまくっていた。

 まあ、一晩でこれだけ成長したら、そりゃーお腹空きますよねー。


 その後、紅白と同じくらい大きくなった黒龍を連れたセエレに聞くと、セエレ特製ミルクは育てる者の魔力がプラスで反映されるので、成長する仔は一気に大きくなるそうだ。


 外のパトロールから帰ってきたよっすぃ~と翠龍も大型犬並みになっており、雰囲気も警察犬のようになっていた。

 しかし、黒呼、白呼の紫龍と青龍は猫サイズ、月呼の龍はそれより一回り小さいサイズだった。




「結構、差が出るもんだな~」

「フフ、魔力の吸える大きさに比例して育ちますからね、私のミルクは。」

「セエレくんも、よくそんなミルク開発したわよね~」

「ふふ、魔界で生きるには、とても厳しい環境を育ち切らないといけませんから。少しでも多くの幼子に、健康に生きてほしいだけなんですよ?」



 ・・・聖母だ。後光が射していらっしゃる!

 というか、セエレは本当に子供に優しいよね。それが、セエレの本当の姿なのかもしれないな。なんで悪魔・・・いや、堕天使か。それになっちゃったのやら。

 ぼんやりとセエレを見つめながら考えていたら、うっかり目が合って思いっきり舌舐りされた。うん、それが怖いんだよなー、この変態め。




「ところで、皆、名前は決めたのかしら?」


 突然、メシアが皆に問いかける。

 ふむ、そーいやこの白龍に名前つけるの、忘れてたなぁ。


「メシアは良い名前つけたのか?」

「ううん、まだ悩んでいて、決まってないの。」

「私もです。やはり、名前は一生ものですから、適当なペットにつけるようなものではなく、きちんとした名前をつけたいですね。」

「・・・・。」


 聖母セエレの御言葉に、よっすぃ~も力強く頷く。

 あー、そういや、メシアの元の名前もキラキラ名前で、幼い頃に散々からかわれ苛められてたな。

 その都度、よっすぃ~と相手をフルボッコにした善き思い出が・・・一日一善って大切だよね!


「姉様、この子にどんな名前をつけるの?」

「ん~、何にしようかなぁ?大福、とか?」

「それ、ハムスターにつけてた名前でしょ!?」


 ああ、そういえば、そうだった。

 アタシのペットは、大体が食べ物の名前だったから、被らないように、人名で付けなきゃな。


 白・・・?白茶・・・白百合、白子、白魚、白檀、白桃白米ハクビシン・・・いかん、色々脱線してきておる!

 うんうんと唸りながら名前を考えていると、月呼もうぬぬ、と唸っていた。

 何だかんだで、月呼も黄龍を育てるらしい。

 他のメンバーもあらかた龍の名前は決まったみたいなので、ちょっと本気で名付けを考えるため、アタシは自分の思考の海に潜るのだった。





名付け、本当に大変です。

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