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十:洞窟掃除と迷子

 



『キュッキュッ!』

「え!そうなの!?」

『わぅ、わぅお、わうぅ・・』

「えー!何それ、大変!!」

『グルル・・グルゥルゥルル・・・』

「うん、其だったらメシアたちも力になれると思うよっ!」


 洞窟の奥に逃げていた魔物は、まだ成長期の子供の魔物が、何種類か身を寄せあっていたものだった。

 親は、更に奥の地帯にいる人間を追って行ってしまったらしい。


 魔物の子が言うに、ここ1年で洞窟に来る人間が増え、それと同時期に突然凄く強くなった魔物が出てきて、そして、その強くなった魔物は間もなく狂い初めて、同族であろうと本気で襲ってきたのだそうだ。

 子の親たちは、最初はその魔物を外に追い払うので精一杯だったが、数を重ねる内に次第に自然と強くなり逆に速攻追い出す迄になり、現在は更に人間を追い払うようになったのだとか。

 それで、今日も人間が侵入した気配を感じて、子供たちには強い気配が近づいてきたら逃げるように指示して、人間を追って奥へと行ったらしい。


「なるほど。じゃあ、アタシたちは洞窟内の異変を突き止めて解決すれば良いんだな。そしたら、洞窟の中も平和になるんだろ?」

『キュー!』

「うん、わかった!それじゃあ姉さま、パトロール行こっ!」


 こうして、子供たちを護るのにセエレを置いて、アタシたちは魔物の親を追いかけた。

 なお、セエレは意外にも子供の扱いが上手く、聖母のように輝いていたのだった。




 メシアを抱きかかえ、よっすぃ~と共に爆走する事5分。

 前方で魔物の叫び声と戦いの音が聞こえてきた。

 よっすぃ~はこちらを見て合図すると、更にスピードを出して戦いの場に突っ込んでいった!!

 爆音と、人間の悲鳴と、混乱する魔物の声が聴こえてくる!!


「メシア、魔物のかーちゃんたちに、説明お願いね。」

「うん!行ってくるね、姉さまっ!!」


 混乱する魔物へと駆け寄ってゆくメシアを見送り、アタシは無双乱舞中のよっすぃ~の元へと向かった。

 相手は・・・・黒っぽい衣装のが15人と、気絶した白装束の少年がひとり。地面には、何かの召喚用の魔方陣がある。

 これ、少年を生け贄にして、何か呼び出そうとしたんだろうなぁ。

 よっすぃ~が黒い人たちを、ちぎっては投げちぎっては投げしてるのを横目に、生贄な少年を抱き起こし、メシアの方に連れていく。


「メシア、この子気絶してるだけかもだけど、お願いできる?」

「うん!・・・こんな少年にも酷いことするなんて、人間許さないっ!」


 おお、メシアが魔物のかーちゃんみたいに、母性溢れる戦闘体制になっている!

 回復しながら怒るって、正しくかーちゃんだよなぁ。

 子供ができたら、メシアはこーいう風になるのかーなんて考えていたら。


「・・・う、ん・・・?」


  少年が、目覚めたみたいだ。

 周囲を見回し、自分の状況を思い出したのか、倒れている黒い服の奴らを見て怖がっている。

 それをメシアは抱きしめて落ち着かせながら、視線でエターナルブリザードを黒い奴等に食らわせていた。




 それからしばらく、魔物の親から色々質疑応答され、アタシたちの事、森の仲間たちの事、魔物の子供も守ってること、そして魔物たちも外に出る気はなく平穏に過ごしたいことなど話し合いながら、よっすぃ~が捕縛し終わるのを待っていた。

 生け贄の少年も、ポツリポツリと彼自身の事を話し始めたので、それを通訳しながら皆で聴くと。


「僕は、大人になるための儀式を受けに、ここに来たつもりだった。でも、着いてから、僕は大人になれないままこの世から消えるって言われて、無理矢理変な薬を飲まされたんだ。そうしたら、何だか眠くなって・・・後はわからない。」

「そっか・・・君の村は、どこにあるんだい?」

「・・・わからない。僕、村から出たことないんだ。ううん、僕だけじゃなく、村から出るには試練と儀式を受けないと、みんな出られない。僕、兄さんのように強くなりたくて、がんばって戦いの試練は受かったんだ。だから・・・こんな、騙されて・・・うぅ。」


 よっぽど騙されたのが悔しかったのだろう。少年はまた、下を向いてしまった。

 魔物たちも、少年を不憫に感じたのか、どこからか蜜飴を出して与えていた。


 そうこうしてるうちに、よっすぃ~が15人全員を紐で括り、紐の集合体を肩に担いで此方に来た。もう、準備OKって事かな?


 アタシと魔物は協議して、全員引き連れて残したセエレたちの元へ戻る事にした。

 ちょっと魔物のスピードが早かった為、よっすぃ~に引きずられた黒いのが、中々のフルボッコフェイスになってしまったが、まあ、問題はないだろう。


 アタシはメシアと少年を左右に抱えながらのダッシュだった為、行きよりもがんばってダッシュしたが、魔物のかーちゃんはとっても素早かった。


 それから5分ほど駆けてゆけば、魔物の子が集まっていた広場に到着した。

 その奥の樹の下で、丁度、聖母セエレが魔物に子守唄を歌ってお昼寝タイムに入ったようで、みんなすやすやと寝息をたてている。


 アタシはとっさに黒装束たちへ拘束魔法と、移動可能・監獄タイプで消音設計の檻を用意し、そこへよっすぃ~に全員ぶちこんでもらって、安心のお昼寝タイムを守ったのだった。







タイヤ引いてダッシュ!は基礎体力作りの基本です。

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