3話 ケルベロス
「だ、誰か!」
村の外から声が聞こえ移動してきた俺達。
「グルゥゥゥゥ………」
声の聞こえた方にいたのはケルベロスだった。
「ケルベロスです!」
指さすシェラ。
そうだな。ケルベロスがそこにいた。
「うざいのだわ!吹き飛んでしまいなさい!エクスプロージョン!」
それを見てリラが速攻爆発魔法を使っていた。
ドカーン!
ケルベロスを中心に爆発が起きた。しかし
「グルゥゥゥゥ」
そこにはピンピンしたケルベロスの姿。
「効いていないのだわ!」
「ちょっと待っていろ」
そう口にしてケルベロスに魔法を使った。
「もう一度使ってみろ」
「エクスプロージョン!」
すぐさま使ってくれた。
今度は………
「す、すごいのだわ!塵一つ残っていないのだわ!」
彼女の言うようにそこには骨ひとつどころか塵一つ残っていない。
「な、何が起きたんですか?」
シェラの質問に答える。
「爆発魔法の被ダメージ量アップと防御力ダウンの両方をあいつにかけた。それが黒魔道士の仕事なんでな」
一仕事終えて俺は目を閉じてそう語った。
「これが私達のパーティを支えてきた私と、私のダーリンことヨシュアの連携なのだわ」
瞳を閉じて胸を貼ってそんなことを言っている。
「ダーリン?」
それを聞いて不思議そうな顔をするシェラ。
「ダーリンなのだわ?」
それを聞いて何故か聞き返すリラ。
「こいつが勝手に言っているだけだ。話半分に聞いておけばいいぞ」
シェラにそう答えておくとホッと胸をなでおろしていた。
「何故そこで胸を撫で下ろすのですか!」
「負けませんから!」
何故か2人の視線がぶつかり合っていた。
「何だか分かりませんが望むところなのですわ!」
更によくわからない会話に進化していた。
※
ケルベロスに邪竜。
短期間にこれだけの強いモンスターが現れるとなるとやはり何も無いでは済まされない。
両方討伐難易度の高いモンスターだ。
小さい村なら両方1匹で潰せるほどだと言われている。
「これからどうするつもりなのだわ?ヨシュアは」
リラにそう聞かれたので答える。
「あのヒゲダルマに一泡吹かせたいところだが。それをどうしようかと考えているところだ」
「奇遇ですわね。あのヒゲダルマは放っておけませんわ」
共に古巣を取られた者同士考えることは同じようだな。
「ヒゲダルマとは何なんですか?」
キョトンとした顔でシェラが聞いてきた。
「ソルバのあだ名だよ。ヒゲを生やして遠い国のダルマとかいうのに似ているからヒゲダルマって呼ばれてる」
「そうなのですねー」
となると一先ずは王都に戻りたいところではあるのだが俺達は戻りにくい。
「なぁリラ」
「何なのだわ?」
「あいつの独演会がいつか分かるか?」
あいつは今までにもパーティの溜めてきた資金で好き勝手やってくれた。
その中でも1番多かったのがやはり独演会というもの。
1人でペラペラ話すものだ。
「明後日なのですわ」
「そうか」
シェラの顔を見る。
「シェラ、1つ頼まれてくれるだろうか?」
「勿論!ヨシュアさんの頼みならば何でも聞きますよ!」
よし。そうか。
聞いてくれるとなるならさっさと作戦を立てることにしよう。
目標は勿論ヒゲダルマに一泡吹かせることだ。
さぁ、どういう風に攻めようか。
※
「やはりヒゲダルマの自信家なところを利用しようと思う」
「確かにヒゲダルマは自信家だわ。でもどうするつもりなのだわ?」
それを踏まえて俺は色んなことを考えていた。
「偽の情報を掴ませる。例えばの話だが誰もクリア出来ないダンジョンがある。それを聞くとあいつは飛んで食いつくだろう」
金になることには全力を尽くす奴だ。
きっと食いつくはずだ。
「で、のこのこと出てこさせる、そこで待ち伏せて一言言ってやるつもりだ」
「その後は?」
「激昂したあいつを誰か発言力のある奴に見せればいい。態度次第では1発であいつは地に堕ちるだろうよ」
やるのはそれだけだ。
あいつのために手を汚すつもりは無い。
勝手に自滅してもらいたいところではあるのだが。
「でも発言力のある人はどうやって用意するのでしょうか?」
「ギルドの誰かに話を通してみせる」
「そんなに上手くいくのかしらね」
疑問に思っているらしいリラ。
あのヒゲダルマはしょせん脳みそなんて詰まってないから大丈夫だと思うが。
「まぁ、その辺はやってみないと分からないし何よりとりあえず王都にいったん戻ってみようか」
協力者も探さなくちゃならない。
とりあえずのところは戻ってみることにしようか。
向こうに戻ることができたならば協力してくれそうな奴の当てがある。
ただ、俺たちは勿論の事あいつに名前も顔も覚えられている。
そこをどうごまかすかだがやはりあまり接触はしないという方針になるし。
シェラには頑張ってもらわないとだめだな。