2話 求婚の理由
次の日起きてから自己紹介をした。
「それでヨシュア様はこの村にいらしたのですね!」
求婚してきた少女シェラ達には全部話した。
今までにあったこと全部だ。
「それで結婚の件どうでしょうか?」
「その前に聞かせてくれ。何故出会って数秒の男に求婚したのかを」
そう聞くとポッと頬を赤らめた彼女。
「命を救ってくださるなど私のことを愛してくれていると思ったからです」
そう言って頬に手を当てている。
「とにかくありがとうございました。ヨシュアさん。この村が救われたのはあなたのおかげです」
涙を流して俺に感謝する男。
こちらは父親らしい。
そして村長だ、そうだ。
「別に何だっていいがどうして邪竜が?」
「分かりません」
首を横に振るシェラ。
なるほどな。
これは調査がいるかもしれないな。
本来ここどころかこのタイミングで表れるはずのない、モンスターというか最早災厄だ。
絶対に何か裏にあるのだが。
それを何とかした方がいいかもな。
「あ、あのヨシュアさんは暫くここにおられるつもりでしょうか?」
「そうだな。しばらくは世話になるつもりだが迷惑になるようならすぐ出ていくよ」
俺にとっては都合の悪いことにソルバの名前はかなり知られている。
誰も俺を雇わないどころかソルバに歯向かった何だったか、外圧として私刑に遭う確率も0ではない。
そんな風にここにいることがバレたなら出ていく方が得策か。
「しばらくと言わず永住しては頂けませんか?娘もヨシュアさんの事を気に入っているようですし」
ふんふんと頷くシェラ。
俺の何がいいのかは分からないが。
「永住………か」
「この村長の座を譲渡しますよ!」
要らねぇ!!!!!!!
声には出さないが余りにも要らなさすぎる権利だ。
「悪いが村長には興味はないが」
そう答えて立ち上がろうとしたのだが。
「お願いしますよヨシュアさん!あなただけが頼りなんですよ」
俺の右腕を掴んで引き留めようとしてくる村長。
「分かったから離せって」
「村長になってくださるのですか?」
「分かったよ。形だけでいいならなるよ」
思えばそんなに大きな村でもなさそうだ。
活動の拠点として使えるかもしれないしな。
形だけでもいいのなら考えることくらいはできる。
「私とも結婚してくださるのですか?」
「………それは保留だ」
何故いきなり結婚に飛躍するのかが分からない。
まぁ、なんでもいいのだが。
「断られてしまいました………」
シュンと落ち込んでしまったシェラ。
俺が悪いみたいだな。
だが簡単にOKを出せる話でもない。
「あの、では一生に暮らす程度はどうですか?」
結婚の前にやることがあると思ったのかそう聞いてきたシェラ。
「別に構わんが」
自慢ではないが俺は朝に弱いし。
家事は何一つできない。
それらをこなしてくれるのなら有難い話だが。
「あ、ありがとうございます!一所懸命御奉仕しますので」
俺に擦り寄ってくる彼女。
「私は娘を生贄にしかけた父親失格です。よろしくお願いしますねヨシュアさん」
そう言われてしまった。
「分かったよ」
親としてもやはり気まずいのかもしれないな。
「それよりもあんなレアな魔力鉱石を持っていて更には魔法剣士だとしても追放されてしまうんですねぇ」
意外なのかそんなことを口にするシェラ。
待て。何か勘違いをしているな。
「俺は魔法剣士じゃないぞ?」
「え、じゃあ何なんですか?」
「黒魔道士だ」
「「えぇ?!!!!!!!!」」
2人して驚かれた。
「黒魔道士って序列最下位の職ですよね?」
シェラの質問に頷いて答えた。
「そうだな。俺はこれしか適性がなくてな」
そう答えておく。
黒魔道士は現状必要ないと言われている職だ。
しかし俺はこれにしかなれず小さい頃からずっと黒魔道士として修行してきた。
その結果か俺は封印指定されている【死の誘い】を習得したのだった。
この魔法は危険すぎて太古に封印指定された魔法だ。
使い方が封印されただけで使用は許されているのは幸いだ。
「今回俺が邪竜を倒せたのは相性によるものだな。死の誘いは付与さえすれば強制的に相手を死に追いやるから生物としての格がどうとかいう話ではない」
俺の言葉をポカーンとした顔で聞いてる2人。
「どうしたんだ?」
「す、すごいなとおもいまして」
そう口にしたシェラ。
「凄いですよ!黒魔道士が邪竜を討伐してしまうなんて!」
俺の手を取ってそう言ってくれる彼女。
「そうか?」
「そうですよ!これは国始まって以来の偉業ですよ!」
そう言われてしまった。
※
「来てあげたのだわ。ヨシュア」
外に出ると見知った顔に出会った。
「どうしたんだ?こんなところに」
俺と同じくあのパーティに初期から所属していたリラだった。
見た目は巻かれた金髪の髪を伸ばした見るからにザお嬢様といった感じだ。
「あの自分のことをリーダーと思い込んでいる精神異常者には付き合いきれず脱退してきたのだわ」
オーホッホッホッと高笑いしていた。
「要するに追い出されたか」
「鋭いのだわ」
ギリギリと歯を鳴らしている。
「あのーお2人はそう言えばどういう経緯で追い出されたのですか?」
細かく説明することにしようか。
「まず今のリーダーになる前に先代がいたんだよ」
ソルバの前のリーダーは凄くいい人だった。
「で、俺らのパーティが勢いに乗っていて大きめのパーティになりそうって時にソルバが大手のパーティから追放されてウチにノコノコやってきたんだよ」
思えばそれが全部の始まりだった。
「先代は歳だったからソルバにリーダーを譲ってしまったんだよ、大手のパーティ出身だからって安心し切ってな。それからはめちゃくちゃだ。俺らの築き上げてきたもん全部ぶち壊してくれた」
「あのヒゲダルマはゴブリンの餌で十分なのだわ」
普段は温厚なリラですらこんなことを口にしたくなるレベルの奴だ。
と、そんな不穏な話をしていた時だった。
「だ、誰か!」
村の外から声が聞こえてきたのだった。