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1話 追放されました

新作です。

読んでいただけると嬉しいです。

「弟子、募集中」

「は?」


 突然のパーティリーダーであるソルバのありがたいお言葉で俺の頭の中は真っ白になった。


「弟子を募集すると言ったのだ。ヨシュアよ、そんな頭の悪さで世界を背負えるのか?」

「いや、意味分かんねぇよ」


 どうやら聞き間違いたわけではないらしい。

 だが同時にこれほどまでに聞き間違えであってくれと願ったことはない。

 そうだな。

 流石に考え直して欲しい。


「弟子募集って何だよ、他にやる事あるだろ?」


 俺達のパーティ【デイライト】にはやる事が山積みだ。

 それこそ弟子募集なんてしてる暇はない。

 特にこの無能リーダーソルバのおかげで、だ。


「俺に口答えするのかお前」

「言わせてもらうが弟子募集なんかしてる暇俺らにはないだろ?」


 今も仲間が俺達デイライトにくる苦情についての対処をしてくれている。


「ソルバさん!装備のメンテナンスが終わらない件についての問い合わせが来ています!」


 こんな風に今現在進行形で苦情が来ている。

 ちなみに装備のメンテナンスが時間内に終わらないのは毎度のことだ。


「いつも通りメンテ終了時刻は未定にして延長しておけ!あいつらは馬鹿だからこれで引き下がる!決して怠けてたことを表に出すなよ?必死にやっていた感を出すんだ!」

「わ、分かりました!」


 こいつを一言で表すならクズだ。


「ソルバさん!不良品を送られた件でお客様が!」

「あいつか、何度も何度も手間を取らせやがってしつこいやつだな!今回ばかりは【特別】に返金してやると伝えておけ!勿論しつこく連絡してこない奴にはそのままゴミを押し付けとけ。それにしてもこのクズ共がクソ忙しいのによ。俺に利用されるだけしか能のないゴミ共の癖に」


 クズはお前だろう、頭の中がどうなっているのか見てみたい。

 こんな有様なのにその横でこいつは弟子を募集すると言ったのだ。

 それにしてもこの無能に教えてもらいたい弟子なんているのだろうか。


「で、弟子募集なんてしてる暇ありそうか?良かったら考え直してくれ」

「腐ったリンゴに役職を与えなくてよかった」


 次にソルバの口から出たのは答えではなかった。

 腐ったリンゴ?


「なんの事か分からないが対応してる奴らが見えないのか?あんたのやらかしの尻拭いをさせられてるんだぞ?」


 ソルバの下した命令に従った結果あちこちで不都合なことが生じるということが多かった。

 そのための尻拭いをやらされているのが俺達の仲間だ。

 その数は日に日に増加している。


「うるさいぞ外圧。俺は外圧に対して臆病にならないパーティ運営をしているつもりだ」


 ソルバが俺に厳しい目を向けてきた。

 それにしてもその言葉は心外だ。


「が、外圧………?」

「お前明日から来なくていいぞ」

「は?」

「死ねよ無能が。はぁこんな無能を傍に置いていたのはやはり失敗だったか。俺を崇拝しない奴は━━━━捨てる」


 ソルバが急に殴ってきた。

 それよりなんだ?俺は今追放されたのか?


「明日から来るなよ。お前は中々に役に立つから置いてやっていたがやはり不要だ。お前みたいな腐ったリンゴが組織をダメにするのだよ」

「ま、待てよソルバ!」

「ソルバさんだろ?それと早く俺の前から失せろクズが。それとも正当防衛にしてやろうか?俺から仕掛けても正当防衛にしてくれるからなガハハ」


 その後ソルバに指示された元仲間によって強制的に酒場を追い出された。




 食い扶持を失った俺はとぼとぼと道を歩いていた。

 もう、王都にはいられないかもしれない。


 王都ユガーシェ。

 俺がこれまで生活していた都市だ。


「くそが………」


 悪態を付きながら王都の外に出ていた。

 ソルバは名前だけは知られている。


 最悪なことに有能として、だ。

 そんな奴に追放された俺はよっぽどの無能と映りどんなパーティも取りたがらないだろう。


「はぁ………」


 そうして草原を歩いていたらしばらくしたところに村が見えた。

 のだが………


「キャー!」

「誰か!助けてくれ!」


 火の手が上がっていた。

 俺が歩いている方とは真逆の方にドラゴンが立っている。

 しかもあれはかつて世界を灰にしたと言われる最悪。


「………邪竜………だと?」


 一瞬の逡巡。

 しかし俺は走り出した。

 俺が行って何が出来るかは分からない。

 でも何もしないことだけは選択肢に上がらなかった。


「おい、何が起きてるんだ」


 村に入ると近くにいた村人に訊ねた。


「あ、あなたは?」

「通りすがりだ。あれは?何が起きてる?」

「わ、分かりません。急に邪竜が現れたんですよ!」


 よく分からないがあんなものが急に現れるわけがない。

 しかしそんなことを考えている場合でもないのだ。

 少し先の邪竜はその口を大きく開けてエネルギーを溜めていた。

 もう少ししたら放つつもりなのかもしれない。


「邪竜よ鎮まり下さい!」


 どうしようか悩んでいると遥か前には中年の男とその娘なのか女の子が立っていた。


「生贄を捧げます!」


 男が叫ぶ。

 古来から邪竜が現れたら生贄を捧げろという話は聞くが。


 それでは女の子が救われない。

 急いで駆け寄ると女の子の前に手を出した。


「生贄は最終手段だ」

「あ、あなたは?」


 突然の登場に驚いたのか聞いてくる男に先程と同じ言葉を返す。


「俺に策がある。まぁ見ていろ」


 そう言い邪竜に駆け寄る。

 小山くらいの大きさはありそうだが図体にビビっている場合ではない。


「邪竜の弱点は確か………目だったよな」


 何かの本で読んだことのある知識を思い出した。

 そうして


「闇よ」


 魔力で作ることの出来る魔剣を手に生み出した。

 何処までも黒い剣。

 それの切っ先を邪竜の目に向ける。


「どうなさるつもりですか?」

「こうする!」


 男の声に答えて切っ先から闇の弾を飛ばした。

 するとそれは直進して邪竜の目に当たった。


「ギャァァァァ!!!!!」


 叫び声を上げながら首を下ろしてくる邪竜。


「喰らえ!」


 そうしてそれの首に俺の魔剣を突き刺した。


死の誘い(インバイトオブデス)


 魔法を発動させた。

 死の誘い。


 対象を確実に死なせることの出来るデバフを付与する魔法だ。

 しかし、魔法が強力なため効力が表れるのに時間がかかる。

 そこで、とあるアイテムを取りだした。


「これで終わりだ!」


 左手で石を砕く。

 魔力鉱石だ。

 これには魔力が溜まっており使用した時に使用者に魔力を与えるというもの。


 それもSランクの魔力鉱石だ。

 かなりの魔力が得られた。

 大量の魔力を使い強化された死の誘いを付与する。

 効果はすぐさま表れる。


「………グァァァ………」


 だからそれだけで倒れた邪竜。


「………ふぅ………討伐完了かな」


 息をしていないのを確認してから男達の方に戻ることにした。


「これで討伐完了だ」


 男にそう報告する。


「それは本当ですか?あの………邪竜を倒したのですか?」

「あぁ」


 振り向いて起き上がる素振りも見えないのを確認してそう答えた。


「あの………不滅と言われた邪竜を………ですか?」

「あぁ、そうだけど」


 そう答えると今度は少女の方が反応を示した。


「あ、ありがとうございます!王子様!」


 そう言い俺に抱きついてきたのだった。


「え?」

「貴方が私の王子様なのですね?!結婚してください!」


 そして急に求婚されたのだった。

 訳が分からない。


「え?俺、今求婚されたのか?」

「どうでしょうか?だめですか?」


 モジモジと両手の指をくっつかせて訊ねてくる少女。

 金髪の髪をツインテールにしている金色の瞳を持った美少女だった。

 だが、記憶はそこまでだった。


「くそ………」

「王子様?!」


 俺の意識は混沌へ沈んでいった。

 魔力を使いすぎたようだ。


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