おしまいのパレード
―――ががー。がが。―――
ぼくの世界は、もうだめです。
くずれ落ちた建物と、空からふり続く鉄のかたまりと、
涙さえ乾いて、うつろな目をした子供たちと。
―――がががが、がが。―――
ぼくたちが住む、この町から、
大人たちがいなくなって、もうずいぶん経ちます。
彼らは決まって「必ず帰ってくるからね」と言いますが、
帰って来たためしはありません。
ぼくたちを力いっぱい抱きしめた後、
肩をつかんで離れるほんのいっときに、
ぼくたちから目をそむけて背中を見せるその一瞬に、
彼らの目にうかぶ悲愴な覚悟を、
その奥にある絶望を。
いくら未熟なぼくたちでも、
気付かないはずはありません。
―――ど、がん。げ、ごうん。――
その時に、僕たちは、しっかりと理解してしまうのです。
ああああああ。
もう。おしまいなんですね。
ふざけて怒られたり。一緒に笑ったり。見透かされて恥ずかしがったり。分かってくれなくてグズグズしたり。寂しくてぎゅってしたり。背伸びして強がったり。ごはんを一緒に食べたり。おいしい?って聞いてくれたり。おいしいよってほほ笑んだり。頭をなでられてくすぐったかったり。眠ってしまうのがもったいなかったり。顔と顔をよせあってやっとのことで眠ったり。
全部、おしまいなんですね。と。
―――ずびゃ。ぐじゃ。ざざー。―――
そういうわけで。
僕たちはこれからどうしようか、ということなんですが。
これがね。分からないんです。
みんなでいっしょうけんめい考えました。
でもね。
僕たちが思いつくようなことはね。
大人たちはとっくに思いついていてね。
それで、今があるわけなんですね。
だからね。
どうしようもないんだなって。
そういうことなんですね。
―――がん!どー。めぐぎゃ!―――
あー。
うん。
そうですか。
大人たちが、「さいしゅうへいき」と呼んでいた。
とびぬけて大きい鉄のかたまりが、
いま、こわれてしまいましたね。
大人たちがいなくなっても、
そんなことに気づかないみたいで。
ずっと頑張ってくれていたんですけど。
―――すー。すー。―――
音もなく、来てはいけないものが、近づいてきます。
目には見えないけれど、それは確かです。
これでもう、おしまいです。
というよりも、もうとっくに終わっていたわけですから、
おしまいのおしまいです。
―――ぱりん!しゃらら。―――
―――どっどー。どどどど。どっどーどー。―――
ひかりが、みえます。
こんなに明るいひかりは、もう忘れていました。
ぼくたちは、ひかりに向かって歩いていきます。
思い思いの速度で、ぼくたちは歩きます。
ただ、前を向いて。
前をむいて?
いやいや。方向なんてものは、もうないんです。
ぼくたちは、歩きます。
歩いていきます。
ただ、あのひかりに向かって。
注意!
これはあくまで比喩です。メタファーです。
でも、そういうことなんです。