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第5話 顔面から噛んでいくスタイルでした。







顔面から噛んでいくスタイルのフェルと、噛まれて床を転がりまくる白髪(顔は噛まれている所為で見えない)の男性。



いきなりの不法侵入者に、シャロンは慌てて双子を守ろうとしたが……ライヴィスの呆れたような溜息を吐いた。



「何してんだ、リフート」



「…………………………は?」


シャロンは固まる。

何故なら、その名前は……ライヴィスと同じ……。


「その前に、ライヴィスよ。終焉の獣を離してくれんかのぅ」

「不法侵入者だから、そいつの反応は間違いじゃない。」

「いや、そうなんじゃけどな?ほら、ライヴィスから連絡あったからの?お爺ちゃん、慌ててしまったんじゃよ?というか、さっきライヴィスか噛めって………」

「フェル、好きなだけ噛んでてくれて構わないぞ」

『臭いからヤダ』

「ぐふおっ⁉︎儂の心に言葉のナイフがクリーンヒットッッッ‼︎」


フェルが離れると、やっとその顔が露わになる。

……………と言っても、フェルの言葉の暴力に胸を押さえていたが。

真っ白な髪に、同じ白い瞳。

ライヴィスが凛とした顔立ちだとしたら、彼は柔らかな顔立ちと言えるだろう。

見た目二十代後半なのに、口調が古めかしいのがアンバランスだ。

そんな彼にシャロンは絶句しているが……双子は不思議な顔をする。


「お兄ちゃん、この人誰?」

「変な人?」

「リフート・パティーノ。こんな見た目して六十過ぎの爺さんだから、気軽に爺ちゃんと呼んでやれ」

「「(お)爺ちゃん‼︎」」

「ちなみにあの髪は白髪で、白い目は年取ったらなる白内障だ。老眼だから、基本魔術で視力を補ってる」

「サラッとバラしてるのぅ⁉︎ちょっとミステリアスな容姿風を演じようと思ったのに‼︎」


三大賢人の一人なのだ。

世界規模で偉い人が目の前にいるのだ。

最初は敬おうとか思ったが……ライヴィスとの会話を聞いて、シャロンの中の敬おう精神は低くなった。

結論、そこそこ丁寧に接する。


「ちょ……ちょっと……サイファ、キャロル……取り敢えず……お爺ちゃんだと思ってても……一応は、フリート様って呼んであげて……」

「………一応なんじゃな……(地味にライヴィスと性格似とるのぅ……。)まぁ、構わんけどな。儂をお爺ちゃんと呼んで親しくしてくれる者は少ないのじゃ。ライヴィスも儂のこと、お父さんと呼んで構わなーーー」

「なんで来たんだ?」

「……………………相変わらず扱い酷いのぅ」


ライヴィスとリフートの、のほほんとした会話をしているが……今だにライヴィスの膝の上にいるシャロンは頭を抱えていた。

どうして立て続けにこう面倒ごと(?)が起こるのか。

ライヴィスを拾った所為なのか。

百パーセント、その所為だった。


「座っていいかの?」

「椅子はないから自分で作れ」

「ほいよ」


ライヴィスの言う通りに、リフートは魔術で簡単な木の椅子を生み出す。

あまりの手際の良さに、シャロンは目を見開いた。


「さて……改めてご挨拶を。儂はリフート・パティーノ。《創造の魔法使い》なんぞ呼ばれておるが、どこにでもいるお爺ちゃんじゃ」

(どこにでもいるお爺ちゃんは、三大賢人と呼ばれないと思うのだけど……)

「儂がここに来たのはライヴィスから連絡が来たからじゃ」

「え?」


シャロンがガバッと後ろを振り返るが、連絡した本人は不思議そうな顔をしている。

リフートは呆れたように顔を顰めた。



「いきなり、カトラちゃんがライヴィスを呪いかけてから、塔から追い出したと聞き。慌てて探そうとしたが、やっぱり呪いに阻害され、ライヴィスは連絡が取れんし。で、やっと連絡が来たと思ったら〝弟子。新しい魔女。魔法ギルド登録。手続き頼む〟の四文しかなかったんじゃぞ?慌てるじゃろ?転移するじゃろ?そしたら、いきなり頭からがぶっじゃぞ?」



リフートの言葉に……シャロンはどんどん胡乱な目になっていく。

何故か、こう思うのも烏滸おこがましいかもしれないが……リフートが苦労人に思えてきてしまった。

だが、そう言われたライヴィスは本当に不思議そうな顔をしていた。


「だから?」

「「………………………」」

「リフート。シャロンの手続きを」

「…………相変わらず我が道を往く(ゴーイングマイウェイ)じゃのぅ……カトラちゃんそっくりじゃぁ……。ちょっと外に出たぐらいじゃ直らんか……はぁ……」


リフートはブツブツと文句を言いながら、再び魔法陣を出現させ……銀色のネームタグを作る。

ついでにと言わんばかりに質問した。


「そーいや、名前を聞いとらんかったのぅ」

「しっ……失礼しました、リフート様‼︎シャロン・マクスウェルです‼︎あっちは双子の弟サイファと妹のキャロルです」

「「よろしくね、(お)爺ちゃん‼︎」」

「よろしくのぅ。シャロンちゃんもお爺ちゃんで良いからの」

「え、無理です」

「………………のぅ……(しょぼーん)」


分かりやすく凹むが、シャロンは無理だった。

行き倒れを拾ったライヴィスならまだしも、流石に二人目は無理過ぎる。

リフートはちょっと悲しげにしながらも、更にネームタグを二つほど増やした。


「双子達も才能がありそうじゃ。ライヴィスの保護下に入るよう、魔法ギルド登録をしておこう」

「フェルもだ、リフート」

「フェル?」

「終焉の獣の子供。シャロンと契約している」


ライヴィスが指差すと、フェルはいつの間にか床にデローンッとお腹を晒してゲップをしていた。

リフートは「ふむ」とフェルのお腹を撫でようとして……『グルルルルルッ……』と威嚇した。


「ふ……ふむっ……(超威嚇されとるのぅ……(涙))終焉の獣か。こやつらは気に入らん奴じゃと頭からパクリと逝かれてしまうからの。先ほどのわしのように。気に入られてよかったの、シャロンちゃん」


そう言われてシャロンはピシッと固まる。

ギギギギッ……と鈍い動きで、ライヴィスを見上げた。


「ラ、ライヴィス……‼︎そ、そんな危険があったの⁉︎」


知らぬ間に命の危機に晒されていたのだ。

シャロンが驚くのも当たり前だろう。

しかし、ライヴィスはキョトンとしながら首を傾げた。


「…………?シャロンなら問題ないぞ?」

「………えぇぇぇ……」

『そーだよ‼︎あのジジイは嫌いだけど、シャロとかライ、サイファ達は大丈夫‼︎』

「あぁ、良い機会だから幻想種の講義といこうか……と思ったが、先にご飯を食べ終わってからだな」



ぐぅぅぅぅぅぅ………。



「「「あ。」」」


お腹が鳴ったのは、シャロン達三人で。

そこで彼女達は思い出す。

リフートが来たのは食事の途中だったのだ。

彼の登場で食事の手が止まっていたが……三人は普段からひもじい思いをしていたから、かなーりお腹が減っていた。

それが分かっているからか、ライヴィスは笑顔を浮かべながら……リフートに指示を出した。


「食事の邪魔したんだ。お詫びとして高級食材持ってこい」

「えっ⁉︎ここは儂も食う流れじゃないのか⁉︎」

「シャロン達の食事の邪魔をしたお前が食う飯はない。フェル、外にポイしてこい」

『あいあい‼︎』


ライヴィスが扉を魔術で開けて、フェルが首根っこを掴み外に放り投げる。



「のぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅうっ‼︎」



ゴロゴロゴロゴロ〜〜‼︎



外で叫び声が聞こえたが、ライヴィスは容赦なく扉を閉めた。

シンッ……と静まり返った室内。

ライヴィスはパンッと手を叩いた。


「よし、食べよう」

「………………(三大賢人の扱いが酷過ぎる……というか、お爺ちゃんなんじゃ……)」

「安心しろ。そこら辺の爺さんより若いし、下手したらそこら辺の若造より猿だ」

「……………………………(心の声を読んでる……)というか、猿?」

「(にっこり)」

「………………(これ以上語る気は無いってことなのね……)」



その後ーーー。



シャロンはいつまでライヴィスの膝の上に座ってるの?と双子に指摘され慌てたりしたが……。



四人は満足いくまで食事をしたのだった。






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