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第2話 まさかのペット宣言されました。


読んで下さりありがとうございます‼︎

日間ランキングに入りました‼︎頑張ります‼︎







《呪いの魔女》エルカトラ・ロブリフト。


《創造の魔法使い》リフート・パティーノ。


《虚無の魔法使い》ライヴィス・クロノス。




この世界に住む人なら誰だって知っている有名な三大賢人。

雲隠れをしながら暮らすエルカトラは戯れに人前に姿を現し、そして〝災害なにか〟を起こしてまた消えていく。

とある国に在住しているリフートは、人々を支え、崇め奉られながら暮らしている。

そして……ライヴィス・クロノスは、その姿を見た者は同じ三大賢人ぐらいだと言われている存在だ。



人前に出ることがなく、エルカトラやリフートの口でのみ語られる彼は……分かりやすく言ってしまえば〝引きこもり〟だった。



塔に暮らし住み、日々研究漬けの毎日。

そう噂では聞いていたのだが……何故、行き倒れているのか?

ベッドに横たわったシャロンはおでこに濡れたタオルを乗せながら……甲斐甲斐しく世話をしてくれるライヴィスを見つめた。


「どうした?」


不思議そうにしたライヴィスは、林檎を剥く手を止めてシャロンの頬を撫でる。

そんな彼に……シャロンは怪訝な顔をした。


「………いや……本当にライヴィス・クロノスなのかと思って……噂じゃ引きこもりだって……」

「まぁ、引きこもっていたからババアに呪いをかけられたんだよ」

「ババア?」

「エルカトラ・ロブリフトと言えば分かるか?」


………《呪いの魔女》をババアと呼ぶのは、彼くらいだろう。

ライヴィスは呆れたような溜息を零しながら、林檎の皮剥きを再開した。


「長らく引きこもって実験をしていたら……ババアに〝引きこもり過ぎだ〟とか〝人間としての情緒が未熟だ〟とか〝いい加減孫を抱かせろ〟とか言ってきて……」

「ちょっと待って。エルカトラ様とライヴィス様は親子なの?」

「様付けなんてしなくていい。俺はババアに拾われたんだよ」


思わぬ新事実にシャロンは言葉を失う。

まさか……三大賢人の内の二人が義理の親子だったなんて……知っている人どれだけ少ないのだろう?


「まぁ、そんなこんなで。俺は力を制限する呪いをかけられて、こうして放り出されたという訳だ」


器用に切られた林檎ウサギが彼の手から跳ねて、双子の方へ向かっていく。

部屋の中で風の妖精と遊んでいた双子は、その林檎ウサギを見て楽しそうにはしゃいだ。


「………だから我が家に置いて欲しいって?」

「まぁ……俺がライヴィスだとか信じられないよな……」

「いえ。風妖精の召喚なんて魔法使いぐらいしかできないから、貴方がライヴィスだとはほぼ信じてるんだけど……やっぱり行き倒れてたのは……ねぇ?」


ライヴィスはそう言われて「まぁ、そうだな」と納得したように頷く。

しかし、キリッと真剣な顔で……答えた。


「いきなり引きこもりが外に放り出されたんだ。室内なら問題ないんだが、外だと挙動不審になる」

「…………………いや、そんな真剣な顔で言うこと……?」

「当たり前だ。外での俺は挙動不審の不審者。それどころかテンパって行き倒れるような奴だぞ。今は室内にいるから普通にしてられるが」

「ねぇ。外に出ると精神状態が狂うような呪いでもかけられてるの?」

「かけられてない。単に俺が、引きこもり過ぎた所為で外に出るとパニック状態になるだけだ」


シャロンは目の前にいる重度の引きこもりに頭が痛くなる。

どんだけ室内が好きなんだ、とか。

どんだけバカらしいんだ、とか。

そんなどうでもいいことが頭の中に満ちる。


「だから、現在の俺は室内にいれるかいれないかの瀬戸際……君の家に置いてもらえるか置いてもらえないかが死活問題なんだ」

「……………(なんて阿呆らしい死活問題……)」

「……と言うか、今更なんだが」

「ん?」

「君の名前は?」


そう問われてシャロンはハッとする。

なんか色々とあり過ぎて忘れていた。


「………私はシャロン・マクスウェル。ヴィルシーナ魔術学園高等科の一年生よ。あそこにいる双子の弟の方がサイファ。妹の方がキャロルよ」

「あぁ、分かった。なんか、色々とあり過ぎて名前を聞くのが遅くなり申し訳ない」

「………そうね……結構話してたのに、逆に名前を聞かずに進めてたことに今更ながら驚いてるわ」

「だな」


シャロンはなんとも言えない顔になり、ライヴィスも苦笑する。


「ワザワザ我が家にいようとする理由はなに?」

「……………ん?」

「だって、貴方は三大賢人の一人でしょう?いろんな国の王侯貴族が貴方を手に入れたがってる。それなのに我が家みたいなボロ家にいたいなんて……」


そう、それが分からないのだ。

彼ほどの者なら誰だって引き抜きたがる。

その力は最高峰であり、世界で三人しかいない魔法使いなのだ。

そんな人がこんなボロ家にいる理由は、ない。

ライヴィスはシャロンの質問に真剣な顔で答えた。


「まず俺とババアは誰かに仕える気がない。リフートは比較的マシな能力だから人々と共に入れるが……俺らのあだ名は《呪い》と《虚無》だぞ?どれだけ危険か……分かるだろう?」


シャロンはそう言われて納得する。

そんな危険な力を持つ者が王侯貴族に仕えたら……何が起きるか分からない。

雇い主が善いことに使うならまだ良い。

しかし、悪いことに使おうとするなら……それこそ国すらも滅ぼせるだろう。


「だから、王侯貴族でなくて……尚且つ、魔術もしくは魔法の知識がある者の家に匿ってもらうのが最善なんだ」

「…………それで、我が家に?」

「後、俺がもう室内に入ったから外に出たくない」

「ねぇ、それが本音の気がするんだけど」

「こっちが八割ぐらいの理由だ」

「………………………」


シャロンは額を押さえて考える。

ライヴィスをこの家に置くか置かないか。

重度の引きこもりらしい彼は、また外に出ればあの見窄らしい姿になるのだろう。

だが、このまま置いておいても……只でさえカツカツなシャロン達の生活が、成り立たなくなる可能性がある。


「ちなみに、置いてくれたなら……生活費の援助と双子の面倒(護衛)をしよう。ここら辺は治安が悪そうだ」

「よし、いて良いわよ」

「流石だ、シャロン」


シャロンは双子の護衛と言われた瞬間、ライヴィスがこの家にいることを了承する。

双子はシャロンの命と言っても変わりないのだ。

シャロンが守ろうとしても……限界がある。

それをライヴィスが手伝ってくれるなら、万々歳だった。


「あの双子は風妖精が気に入ったようだから、基本もう大丈夫だろうが……」

「…………(もう既に護衛が付いていたわ……)」

「後は君だな」

「…………私?」

「あぁ」


彼が言ったのは双子の護衛だ。

だから、シャロンは入っていないはず。

不思議に思って彼女が首を傾げていると……ライヴィスはクスッと笑ってその手の甲にキスをした。


「この家に置いてもらう以上、俺は君のモノだ」

「……………はい?」

「言うなれば君のペットと言うところか。飼い主は守るモノだろう?だから、俺は君も守らなくてはな」


シャロンは頭痛に見舞われ、顔を顰める。

こいつは何を言っているのか。

自分よりも実力がある人が……自らペットを自称するなんて……おかしすぎる。


「いや、貴方はペットじゃなー……」

「うーん……《終焉の獣よ、来てくれ》」


ライヴィスはシャロンの言葉を無視して、銀色の魔法陣を出現させる。

煌めく光にシャロンは目を逸らす。

そして、光が収まったその先にいたのは……。



「…………わん、ちゃん……?」



銀色と夜空色の毛並みを持つ、可愛らしい仔犬だった。


「……やはり力が制限されているな。子供の方を呼んでしまったか」

『ライだ〜。どうしたの〜?』


可愛らしい仔犬はきゃるんっと首を傾げる。

ライヴィスはそんな仔犬を抱き上げ、シャロンに見せた。


「この子と契約してやってくれないか?」

『この子と〜?』


仔犬の黄金色の瞳がシャロンをじーっと見つめる。

見つめて、見つめて、見つめまくる。

流石のシャロンもそんなに見られまくって、若干気まずさを覚えてしまった。


「…………あの…」

『名前は?』

「………シャロン・マクスウェル、です……」

『シャロだね‼︎僕に名前を頂戴?』

「ふぇ?」


意味が分からずライヴィスを見ると、彼はちょっと驚いた顔をしてから……優しく微笑んだ。


「こいつはフェンリルの子供だ」

「はいっ⁉︎」

「名付けを許したということは、本契約を結んでくれるということだ。良かったな」


シャロンは再び気絶しそうになる。

フェンリルとは終焉の獣、凡ゆるモノを喰らい尽くす終わりの象徴だ。

まさにお伽話の存在ーー。

子供とはいえ……そのフェンリルが契約を結ぼうと言うなんて。

シャロンは頭がクラクラした。


『なーまーえー‼︎シャロ、早くっ‼︎』

「えっ⁉︎えっと……そのっ……」


仔犬から発せられる威圧にシャロンは慌てる。

そして……思いっきり叫んだ。



「《フェル》‼︎」



銀色の光が、シャロンとフェンリルの子供……フェルの間で繋がり契約となる。

フェルは嬉しそうに笑いながら、シャロンに飛びついた。


『シャロが僕のご主人様だ‼︎よろしくねぇ〜‼︎』

「おめでとう、シャロン。君はこの世界で四人めの魔法使いだ」


その言葉にシャロンは固まる。

そう……フェンリルも幻想に住む者。

つまり、魔法使いが魔法を使うのに手伝ってくれる存在。

それと契約したシャロンは、魔法が使えるようになったということで。



シャロンはとんでもなく簡単に、魔法使いになってしまったのだ。



「…………………(きゅぅ)」

「えっ、シャロン⁉︎」

『シャロ⁉︎』






余りのキャパオーバーで、シャロンが再び気絶したのは、仕方ないことだろう。







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