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第8.5話 王太子は悪人で、双子は勉強を始めました。






(クソッ……‼︎)



サウロは苦虫を噛み潰したような顔で、教室へ向かう。




先ほどはみっともないところを露見してしまった。

まさに、シャロンの従魔……フェルに一杯食わされたというヤツだ。


(クソ、クソ、クソ‼︎ここまでいい調子で行っていたと思っていたのに‼︎)


フェルが宣言したように……このサウロという男は、大きな野望を抱く悪人とも言える人間だった。



彼の目標は、この国の王位だけでなく……この大陸の王の座だ。



そのために、早急に王位を継承する必要があり……大陸の王となるための、戦力を必要としていた。

王位の方は、長年実の父に毒を飲ませてきた甲斐があり……もう少しで国王の命は散ることになる。

しかし、問題はその後だ。

国交なんかで、この大陸の王座は手に入らない。

手段は一つ………。



ーーーーーーーーー戦争だ。



だが、そのためには力がいる。

全てを跪かせるほどの大きな力がいる。

サウロは秀才ではあるが、大きな力は持たない。



どうするか……と悩んでいた彼に、その解決策を教えてくれたのが〝探求者エクスプローラー〟と名乗る魔法使いだった。



曰く、この国には幻想種に愛される娘がいる。

彼女を利用すれば、簡単にこの大陸……いや、世界すら手に入ると。


そうして出会ったのが……シャロン・マクスウェルという少女だった。


庶民、という身分に天と地ほどの差があるのに、シャロンに接触しなくてはいけないのは度し難かったが……彼女を利用するためには、我慢するしかない。

自分に惚れさせた方が良い……というのもエクスプローラーのアドバイスだったからだ。



『人質などを使い利用すると、何かあった際には裏切られてしまいます。ですが、愛する人のために協力するならば……そう簡単に裏切らない』



そのアドバイスを実行するために始めたのは、シャロンの孤立だった。

学園で積極的に接触することで、周りの悪意に晒す。

敵を増やす。

効率的に敵を増やすために、自分の取り巻き……側近達にも協力させている。

叔父である理事長も、シャロンに接触している理由は分からないが……それでも、高貴な身分の者達が特別扱いすれば……彼女が学園で孤立するのは必然だった。

加えて、私生活でも監視をしており……彼女が自分の弟妹以外とは接触(・・)できない(・・・・)ようにしているのだから……弟妹に心配をかけないようにしていて、誰にも相談できない彼女の孤独感は更に酷いもののはずだ。



そんな孤立状態で、孤独になれば……側にいる人(サウロ)に頼るしかなくなると思ったのに。



そう思っていたのに。


(クソッ……従魔なんかいたら、彼女の心の支えになってしまうっ……‼︎)



彼は考える。

シャロンを再び孤独にするために、あの従魔を排除しなくてはならないと。


そして、彼は知らない。

ライヴィスの接触を報告をしようとした監視が、リフートに記憶消去(始末)されたことを。




サウロの野望を壊さんとする者がいることを……彼は知らなかった。





*****





(また何かあったら連絡する〜‼︎)




フェルからの念話(報告)がそこで途切れて、ライヴィスは頭を掻く。

まさかの出かけて直ぐに何かが起こると思ってなかった彼は、若干呆れ顔になりながら溜息を吐いた。



幻想種……特に幻獣種は、悪意に敏感だ。

フェルが悪人と評価した以上、王太子は要注意人物とした方がいいだろう。

ライヴィスは軽く頬を叩くと、テーブルでお絵かきをしている双子に声をかけた。


「サイファ、キャロル。二人はいつも何をしてるんだ?」

「ん〜?家で留守番だよ」

「お外出ちゃダメなの。ゆーかい、されちゃうかもなんだって‼︎」

「………………なんと……」


ライヴィスは記憶を漁る。

確か、魔術大国ヴィルネスは魔術を使える者を尊ぶ選民意識が高い国だと、どこかの本で読んだ気がする。

つまり、魔術が使えない一般人はあまりいい暮らしができないのだろう。

ただでさえこの家は貧民街スラムに近い。

小さな子供はよく売れる(・・・・・)とも聞くし、危ないのだろう。


(魔法の力が制限されてなければ……あの場所(・・・・)に連れて行ってやれたんだけどな……クソババアめ)


ライヴィスは顎に手を添えて考える。

そして、二人に再び聞いた。


「サイファとキャロルは将来、何になりたい?」

「「シャロンお姉ちゃんみたいな魔術師‼︎」」

「………(息ぴったりだな…)どうして?」


ライヴィスが質問すると、双子はその顔を泣きそうなほどに歪める。

彼はその顔を見て大きく目を見開いた。


「だって、魔術師ならお姉ちゃんと同じ学校いけるよね?」

「そしたら、お姉ちゃんのこと、守ってあげられるでしょ?」

「…………………」


どうやら、この双子はシャロンがずっと無理をしてきたのだと分かっていたらしい。

子供は大人が思っているよりもよく見ている、というヤツなのかもしれない。

ライヴィスは双子の頭を撫でながら、答えた。


「はっきり言おう。サイファとキャロルは、シャロンと歳が離れているから……学園には通えないんだ」

「「っ‼︎」」

「でも、シャロンを守ろうとする気持ちはよく分かった。なら、守るための力になるかは分からないが……俺が二人に知識と技術を教えてやろう」

「「え?」」

「忘れたか?二人も俺の派閥……つまりは弟子なんだ。学びたいという意欲がある弟子の願いを、師匠は叶える義務がある。まぁ、まだ幼いからあんまり身体に負担がかかることは教えてやれないけどな」



ライヴィスは自身の魔術でしまっていた亜空間から、紙やペン、本を取り出す。

そして、にっこりと微笑んだ。


「まずは簡単な文字から教えよう」

「「うんっ‼︎」」




…………後に、サイファとキャロルは《双魔の魔法使い》と恐れられることになるのだが……。




それはまた、別に機会にーーーー。






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