第0話 行き倒れ拾いました。
新連載です‼︎
よろしくね‼︎
朝。
シャロン・マクスウェル(十六歳)は大変困っていた。
貧乏人でありながらも、魔術師の才能を有していたシャロンは、出稼ぎに出ている両親の代わりに、貧民街に近いボロ小屋で幼い弟妹の世話をしつつ……王立ヴィルシーナ魔術学園での勉学と忙しい日々を送っていた。
そこに……自宅の前に倒れている人物が加わりそうになっているのだ。
「お姉ちゃん、人が倒れてる‼︎」
「お姉ちゃん、助けてあげなきゃ‼︎」
泣きそうな顔でそう言う双子の兄サイファと妹キャロル。
だが、シャロンはそんな二人の訴えを受けて葛藤していた。
(ボサボサの黒髪……顔の判別は…汚すぎて無理。だけど、無精髭らしきものから見て男性……?ボロボロの服装……これ、完全に不審者じゃない……)
格好いい姉としては、双子の要望通りに助けてあげたい。
しかし、見た目完全不審者……もしもこの人が凶悪な犯罪者などだったら……。
(弟妹が危ないかもしれないっ……‼︎)
シャロンは目の前の人をどうするか悩み、双子の安全を優先することにする。
しかしーー。
ヌッ………。
「っ⁉︎」
倒れていた男の腕が伸びる。
その腕は近くにいた双子に触れそうになり……シャロンは慌てて、双子を庇うように抱き締める。
そして……。
「…………腹、減った……」
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………。
「「「…………………」」」
なんともまぁ、間抜けな音が響き渡る。
シャロンと双子は顔を見合わせて……お腹を鳴らし続ける不審者に目を向けた。
「「………お姉ちゃん」」
「……そうね……なんか、気が抜けたし助けてあげましょうか」
「「うんっ‼︎」」
(もし犯罪者だったのなら……その時は私が………)
シャロンは倒れていた男に、浮遊の魔術を発動させて自宅へと運ぶーー。
これが……波乱の幕開けになると、知らずにーー。