わがまま糞野郎。
週末、今日は念願のある音楽イベント出演。
持ち時間は15分の1ステージ。
ちょうどオリジナル曲4曲いける、いい感じのステージだ。
しかし、来なーい。
ドラム担当エリカが来なーい。
なんとプロレスの試合に行ってしまったんだ。
ぐぬぬ。
ダブルブッキングで、バンドよりもプロレスを優先してしまった。
ドラムがいない。
ドラム無しで行くか。
しょうがないから、我々はギターの弾き語りだけでなんとかやりくりした。
多少は失敗は、したがドラム無しでやり遂げた。
いやー困る。
こんなことがこれからも起こったらたいへんだ。
エリカに聞きたい。
プロレスとドラムどっちが大事なのか。
我々はステージを終えたあと、エリカが試合してるプロレス会場へ行った。
まだ新人のプロレスラーだからか、もう試合は済んでいた。
関係者だと言い張って、楽屋へ突撃した。
そこには肩にテーピングをしたエリカがいた。
ちょっと痛々しい。
「おいエリカ!! ふざけんなオラ!!」
もうすでにキレてる口の悪いギター担当サヤがエリカに詰め寄った。
「今日はバンドのライブだろ、なんでプロレスなんてしてんだ!!」
「辞めろよ!!プロレス!!怪我したらバンドできないだろ!!」
暴れだしたら止まらないサヤはもっともっと詰め寄った。
しかし力強いエリカにぶっ飛ばされた。
「私は、プロレスが好きだ!!バンドも」
「辞めないよ!!どっちも」
いやいやどっちもやるのはいいけど、できてないから、今こうして問題になってるんだ。
「マネジメントが悪い」
「プロレスがある日は、バンドの活動入れないでくれよ」
なんてわがまま。
わがまますぎてあきれた。
わがまま糞野郎。
我々は事務所なんて入ってないし、レコード会社との契約なんてしてないし、マネージャーなんているわけがない。雇えない。
でも、ここでケンカしてもしょうがない。
我慢か。
いやいや、むしろ最初からバンドとプロレスラーの二刀流なんておかしいだろ。
どっちかをひとつ本気でやらないと、中途半端でどっちもダメだったりする。
本当は選んでほしい。
プロレスか、バンドか。
でも我々にはエリカが必要だ。
ドラムはエリカしかない。
エリカのドスン、ドスン、と1回1回叩く音の厚みが好きだ。
この糞バンドにはエリカが必要なんだ。
変わりはいない。
我々はずっと一緒。
小さい頃からの幼馴染。
同じ街で生まれ、同じ空気を吸い、同じ景色見て育った仲間。
ちょっとしたことでは壊れない絆がある。
ケンカしても、仲直り、今日もまたそう。
プロレスの試合がある日は、バンド活動はしないよ。
なんだかそれでうまくいくなら、それでいい。
長く続いていくには相手に合わす必要がある。
そしてまた曲が出来た。
♫
紐がひとつ 解けた
紐を結んだ
紐がひとつ 切れた
紐を繋げた
なんでもいつかは壊れてしまう
壊れないものなんてないから
壊れたなら直せばいい
捨てたりはしない
人もそう 壊れやすい
大事に
壊れないように
大切に
優しく そっと
オリジナル曲5曲目
【壊物注意】
完成。
曲を作るのは楽しい。
いつかは作品にして、世に出したい。
形として残したい。
夢は日々膨らむばかり。
どんどん成長していく。
やりたいことがいっぱいなのは幸せなこと。
何もやりたいことがなければ退屈なだけ。
よし、今度はあれやろう……。