閑話 大臣ズの飲み会
新しい大臣なんぞも沢山登場しますが、誰とか深く考えないで読んでいただけると良いかと思います。
「おう、お疲れ」
「お疲れ」
「バカお前風呂入ってこいよ、汗くせーな」
「風呂借りるな」
「なんでウチで入るんだよ。ここお前んちかよ」
さっさと風呂に向かっていった将軍に、太政大臣は溜息をつきながら見送った。
今日は久々のオフだ。大臣ズの労働に関しては超絶ブラックで、大きな問題があらかた片付いたので、本当に久しぶりに休みをもらえた。
みんな一度に連休をもらったので、今日は太政大臣の家で飲み会だ。
将軍は訓練終わりの汗臭い体で手土産もなしにやってくる自由人だが、次に来た客はちゃんと手土産を持ってきた。
「先生、お疲れ様です」
「お疲れディオ。それなんだ?」
「実はこれ理一から分けてもらったんですけど、なんと、トゥガーリンの肉なんですよ」
「マジか」
「しかも園生ちゃんの調理済み」
「それ絶対美味い。食おう食おう」
災害指定魔獣の肉など、生涯に一度食べられるか食べられないか。大多数の人は絶対に食べられない。
しかも園生は時々王宮の厨房で、料理人に料理の指導をするほどの腕前で、園生は王宮の調理師から食の女神と言われるほどの調理師である。
そんなお土産を持ってきた素敵な養子、科学技術大臣のクラウディオは全くできる男である。
続いてやってきたのは、内務大臣のジョヴァンニと厚生大臣の柏木。二人もお土産持参だ。
「アンジェロ、お疲れ様」
「お疲れ様です」
「ジョヴァンニお疲れ。柏木博士もお疲れ様です」
「私も参加して良いのでしょうか?」
「もちろんです。さぁどうぞ座ってください」
「つまらないものですが」
「ありがとうございます」
「俺と柏木博士で頼んで、理一に譲ってもらったんだけど」
「またあいつかよ」
「マジで理一達、珍しいもの色々持ってるんだって! アラクネの肉だって」
「アラクネ!? あれ蜘蛛だろ! 食えるのか!?」
「なんか珍味っぽくて美味いらしいよ」
「マジか。本当に珍しいもの持ってるなアイツら」
次に来た客も二人連れで、しかもすでに酔っていた。
「せんせぇ〜うふふ〜お疲れさまぁ」
「うぃーっすセンセー」
「お前らなんでもう酔ってるわけ? いつから飲んでんだよ」
「お土産にぃ、お酒持ってきたらぁ」
「待ちきれなくて途中で飲んじゃったぁアハハハハハ」
「……バカなの?」
飲み会が始まる前から出来上がってしまったのは、この国の頭脳とも呼べる法務大臣のミカエラと、財務大臣のダンテである。
国のブレインがこんなにアホでいいのかと思うが、仕事はとっても優秀なので何も言わない。
そうこうしているとドアがバンと開かれて一人が息急き切って入ってきた。
「先生、将軍来てる!?」
「きてっけど」
「マジで!? なんであの人先に行くかな! 一緒に行こうっていったの将軍なのに!」
「そうだったんか」
「そーだよ。僕がシャワー浴びてる間にいなくなってるんだよ!」
「アイツ今俺んちでシャワー浴びてっけど」
「自由か! もー……」
いつも将軍に振り回されて、今日も泣きそうになっているのは、将軍の部下の軍師である。みんなで軍師を宥めて慰めていると、更に客が二人来た。
医学研究所の所長と、女性が一人。
「お疲れアンジェロ」
「お疲れってお前、なんでジュリアを連れてきた?」
「別にいいじゃないか」
「そうよ? 私だけ仲間はずれなんてひどいじゃない。私とあなたの仲でしょ?」
「は? お前初対面時から今もずっと俺の敵だろが」
「もう、相変わらずいけずねぇ」
医学研究所の所長が同伴してきたのは、太政大臣の天敵である、薬学研究所の所長ジュリアである。ジュリアはいつもその気もないのに太政大臣に色仕掛けをしてきて、それで太政大臣が困っていたり、織姫がジェラシーを燃やしているのを見て、それを心底楽しむドS変態である。
まだ全員ではないが、あらかたメンバーも集まったし、将軍も風呂から出てきたので、飲み会をスタートすることにした。というか、風呂から出てきた将軍が、乾杯も待たずにさっさと飲み始めた。
「グダグダなんだけど」
「いつもだろ」
「たしかに」
グダグダでスタートを切ったが、飲み始めると会話も弾んで、みんなでワイワイ言いながら酒を飲んだ。
もちろんお土産の肉も食べる。
「トゥガーリンの肉、マジうま」
「なにこれ、世界観変わる勢いで美味い」
「いいなぁ、アイツらいつもこんな良いもんばっか食ってんだな」
「俺いつも惣菜なのに」
「チクショー糖尿になれ」
「痛風になれ」
「あんた達心狭いわね」
なんだかんだ言いつつ、もらった肉はどんどん減っていく。アラクネの肉も珍味っぽい味で、酒に良くあった。
そういえば、と柏木が紙を取り出してみせた。
「視察に出た時に市民からもらったのですが」
「なんすかこれ。新聞?」
この国はちゃっかり印刷術まで発明している。王宮には業務用プリンタまである。もちろんプリンタが市井に出回ることはないが、この世界の一般人向けに印刷術が発明されていて、この国では出版社や新聞が当たり前のようにある。
そのうち他国にも流通するようになるだろう。すでにピオグリタなどの大きな都市では、印刷術の権利を買っていて、開発された印刷機が新聞や広告やチケットの印刷などに使われている。
柏木が持ってきた新聞の記事を見て、一同はブッと吹き出した。
「地上の太陽www」
「舞い踊る告死天使www」
「誰が考えたのこれ、イジメだろ」
新聞には黒犬旅団の特集記事が掲載されていて、インタビュー記事やらなんやらあるのだが、彼らが笑っているのは理一達に付けられている二つ名である。
「本当にこの世界の人って、こういうの好きよね」
「娯楽が少ないからでしょうね」
「アイツらこれ知ったら身悶えすんだろーな」
「意外ともう知ってるかもよ。あれから面会希望者がメチャクチャ増えたって言ってたから」
「カワイソー」
一しきり黒犬旅団をネタにして笑った後、話は太政大臣の結婚問題に。
「陛下まだ許してくんないの?」
「まだ睨まれる」
「またあの氷点下の睨みきかされてんの。ウケるんだけど」
「どーせ先生がヘタレてるからでしょ」
「ヘタレてねーよ。政略結婚の相手としても、俺がベストだと思うんだけどな」
「つーか陛下は織姫を嫁にやる気がないよな」
「娘ラブだもんな。そこだけは昔っから」
「……俺、織姫と駆け落ちしようかな。誰か俺と仕事変われ」
「先生やめて。先生の仕事引き継げる人いないから本当にやめて」
「俺も先生のポジション嫌だな。くっそ忙しいじゃん」
「ハァーア、育てた恩も返してくれないとは、先生悲しいぜ」
「うわ、そういうこと言っちゃうんだ」
「うるせぇ、既婚者爆ぜろ」
「僻むことないわ。私が結婚してあげるわよ」
「いやジュリアとかマジ無理だし。つーかお前なんで上から目線なの?」
そうしてワイワイ話していると、ドアが開いてまた一人やってきた。
「ごめん、遅くなっちゃった!」
「お、ちょうど話してたんだよ」
「先生が奥さん来るの待ってたよ」
「え? そうなの? 遅れてごめんね」
「いいよ。疲れてねーか?」
「うん」
「先生優しっ」
「織姫だけには優しいよな」
「あ? 俺は地上に舞い降りた天使だから、全ての人に優しいぞ?」
「よく言うよ、名前負け大臣め」
「え? それ言わないでくれるか? アンジェロに名前つけた俺も傷つくんだけど」
「あっ、将軍ごめん」
「まぁいーよ。織姫カンパーイ!」
「かんぱーい」
自由人の将軍だって、傷つくことくらいあるのだ。すぐに忘れるが。
織姫も混ざって、更に宴会は盛り上がる。主に国王に対する愚痴が多いが、これも酒の肴だ。
次の日も休みだったので、彼らは酔いつぶれて酒に酔って暴れて、太政大臣の家の家具を破壊するまで飲み尽くした。
お堅い職業ほど、酒癖が悪いものである。




