セーファ大迷宮第2階層 ゴーレム地獄
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ルート1の第1階層を突破した理一達だったが、その後に続く道は3方向に別れていた。困った時は右から攻めるというルールを決めて、右のルートに進んだが行き止まりだった。次に真ん中の道を進んだら、左側の道に繋がっていたようで、元来た場所に戻っていた。
ルート1はこれで頭打ちと諦めて、スタート地点に戻りルート2を進む。困ったことにルート2の道は、途中で別の道に分岐していった。右を選択して再度分かれ道、更に右を選択してまた別れ道。
このまま右に進んだらそのまま1周してしまいそうだが、今のところそんな兆候はない。僅かな下り坂を降りていっている。
そうして何度かの分かれ道を右に曲がったところで、理一の索敵に反応が現れた。今度は空間中に魔力が広がっている様子はない。このカーブを曲がってもまだ道は続いている様子で、その道を何かが通せんぼしている。
カーブを曲がってすぐのところに魔物がいるとわかった理一は、クロに頼んで先行してもらった。なにもやっつけて欲しかったわけではなかったが、先鋒を任されたクロは喜び勇んで走り出した。
走りながら魔法を準備して、カーブを曲がる頃にはぶっ放していた。
どうなったのか理一たちには全然わからなかったが、追いついた頃には、クロの足元に土の塊が転がっていた。
「ゴーレムだ。こいつは食えないし、小さい魔石くらいしか持っておらん。さっきの散弾の魔物といい、この大迷宮はシケておるな」
食用の魔物じゃなかったことが、クロにはよほど腹に据え兼ねるらしい。一応理一の方に、ぺしっと前足で魔石を蹴っ飛ばしてくれたが、それ以外にはゴーレムには全く興味ない様子だった。
しかし理一は、クロが蹴っ飛ばして寄越した魔石に興味津々だった。すぐに鑑定する。
■魔石(小)
魔力が結晶化したもの。魔力だまりや魔物の体内で生成されることがある。また、魔石を使ってゴーレムなどの創造が可能。一度魔石から放出された魔力は不可逆であり、魔力の貯蔵などは出来ない。
中々便利な代物だとは思う。言ってみれば使い捨ての電池のようなものだろう。これは自分よりも鉄舟の方が有効活用できそうだと考えて、鉄舟に渡した。
想像通り鉄舟は魔石に食いついて、魔石を応用した武器の妄想を始めて、鼻の穴も膨らんでいた。
そうして進んでいくと、今度はストーンゴーレムという、先ほどのゴーレムの石材バージョンのゴーレムが3体縦列で並んでいた。
なぜこんな狭い通路で、巨体のゴーレムを縦列させているのか謎である。案の定、クロに一網打尽にされていた。
魔石を拾って、ストーンゴーレムの瓦礫を乗り越えて更に進む。すると今度はアイアンゴーレムという、金属製のゴーレムが3体縦列している。
「だから何故縦列なのだ!」
クロがキレ気味で攻撃して、やっぱり一網打尽にする。金属製のゴーレムなら流石のクロも苦戦するかと思ったが、なんのことはなかった。
そうして進むと、またアイアンゴーレムが縦列で待機している。そろそろうんざりしてきた。
やはりクロが攻撃したが、今度は一網打尽とはいかなかった。5体いて、1体が残ったのだ。なんとなくこの時点で、ゴーレムの配置の目的が見えてきた。
更に進むと案の定、アイアンゴーレムが縦列待機している。今度は10体。流石にクロだけでは苦戦し始めて、クロが魔法で攻撃した後、安吾が斬り伏せた。
そしてついにクロがゴーレムに嫌気がさして、先鋒から退いた。
仕方がないので安吾が先頭に立って進む。またゴーレムが縦列している。
もういい加減にしてくれと思いつつ、安吾がアイアンゴーレムを斬り伏せていく。アイアンゴーレムも攻撃してくるが、安吾のスピードに対応することは出来ない様子で、次々と鉄くずに姿を変えていく。
魔石を拾い、素材にするからと鉄くずも拾っていくが、アイアンゴーレムの残骸が邪魔で仕方がない。安吾の行動もかなり制限されている。
なんとか安吾が全部倒したが、その数は20体。残骸が邪魔で鉄くずを拾うのも進むのも大変だった。
嫌な予感しかしないが、更に進むと案の定、ゴーレムが縦列している。どうせ今度は30体いるのだろう。
ほとほと嫌気がさしてきたので、安吾には下がってもらい、魔法を起動。
ゴーレム達の足元が、硬い岩盤の組成を崩して、サラサラとした砂に変化する。その砂がすり鉢状に陥没し、渦を巻いてゴーレム達を1体残らず引きずり込んだ。
「最初からこうすればよかったよ」
「おい理一なんだその魔法? 土魔法だろ、俺知らねぇぞ」
「本に載ってたんだ。砂渦っていう蟻地獄みたいな魔法だよ。教えるから、次は鉄舟がやってみるといいよ」
「よっしゃ」
道すがら鉄舟に砂渦の魔法の呪文と魔法陣を教えながら進む。
わかってはいたけれども、やっぱりゴーレムが縦列して待機している。どうせ今度は50体だ。
満を持して鉄舟が砂渦の魔法を発動する。いい感じにゴーレムを引きずり込んでくれているが、20体くらい引きずり込んだところで、鉄舟がふらついたのを安吾が支えた。
「これ俺には無理かもしれん。消費魔力が大きすぎるぞ」
「確かにそうかも。無理させてごめん」
「いや、理一が規格外だって忘れてた俺がアホだった」
「……」
誰が規格外だと心外に思うが、ゴーレムが迫ってくるので、残りは理一が始末した。
更に進むと、ようやく広い空間に出た。気のせいかもしれないが、空気も美味しい気がする。
いややっぱり気のせいだった。今度はその広い空間に、アイアンゴーレムが縦にも横にも数百体、隊列を組んでいた。
しかも全員槍を持っている。槍を構えてあの数で突撃されれば、絶対に倒せるという寸法である。
「もういい加減にして」
「マジつらい」
菊と雄介が白眼を剥いている。無理もない。
理一だって泣きたいくらいだ。
戦っても戦っても湧いて出るゴーレムに、体力も魔力も削り取られて、最後には気力まで持っていかれるのだ。まったくこの大迷宮の構造はえげつない。
「この大迷宮の構造を考えた人、絶対性格悪いね」
「さっさと倒して休むぞ。もう夕餉の時間だ」
クロに言われて、理一は少し考える。もう夕方なら、ここを一掃して拠点にした方がいい。
それならと理一は鉄舟に振り向いた。
「鉄舟、片付けてくれないかい?」
「アホか。んなことしたら、魔力切れでぶっ倒れんだろ」
「その分魔力総量は増えるよ。大丈夫だよ、みんなでフォローはするから」
「お前意外に鬼畜だな」
「心外だな」
悪態をつきつつも、鉄舟は自分の力量を上げたいと思っていたのだろう。理一にそれ以上反抗しようとはしなかった。
そして鉄舟が砂渦の魔法を発動し、大多数のゴーレムが引き摺り込まれていく。中央前列の100体ほどが飲み込まれたあたりで、鉄舟が魔力切れを起こして昏倒した。
雄介と園生に介抱される鉄舟に、理一は小さく微笑んだ。
「ありがとう、鉄舟。一緒に強くなろう」
そうして残りの数百体は、理一がまとめて砂渦で飲み込んだ。
ちなみに、この大規模な砂渦の魔法の行使のせいで、理一までぶっ倒れたのはご愛嬌である。




