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黒犬旅団の異世界旅行記  作者: 時任雪緒
インスリーノ辺境伯領レオザイミの町
52/115

旅立ちと縁

竜などを倒したと言うのなら、雄介はよほど強いのだろうと思って聞いて見たのだが、本人によると違うらしい。


「今まで比較対象がいなかったからわかんねぇけど、イメージしてたのより魔法とかあんまり使えねぇから、多分そんなでもねぇよ。ただ俺、死なねぇんだよな」

「死なない?」

「そ。最初から殺されかけたって言っただろ? 普通の高校生がいきなりあんな所に放り出されて、生きてられるわけねーじゃん。なんの知識も力もねぇのにさ」

「確かにそうだね」

「今まで手足も首も食いちぎられたし、丸呑みにもされた。でも俺、死ななかったんだ。多分不死身」

「でも痛覚はあるんだろう?」

「そーだよ。だから発狂するところだったんだ。勝てるようになるまでは、俺は魔物のサンドバッグになって、あの苦痛が延々続くんだって絶望した」


死なずに済んだと安心できるようになったのは、本当に最近のことらしかった。それまでは、雄介にとってただの生き地獄。それが変化し始めたのは、自分の損傷が大きければ大きいほど、修復した際に一時的だが爆発的に強くなっていることに気づいたからだ。

だから最初に魔物に攻撃させて、損傷した腕の腕力をあげ、足の脚力をあげ、皮膚の防御力をあげてから攻撃していたらしい。


「本当は魔法とかバンバン使えたら、あんな痛い思いせずに済んだんだろうけどさ」

「よかったら僕が教えるよ。一通り勉強はしたし」

「マジ? 助かる」


雄介が余程苦労したと言う話を聞けば、これくらいの手助けはしてやりたい。理一は一度インスリーノ城に戻って、みんなを連れて再度猫の手亭に戻り、雄介を紹介した。雄介の話を聞いて、女子二人はたいそう気の毒がった。


「高校3年生なんて、あたしの孫と同い年じゃない。まだ若いのに苦労したのね」

「ちゃんとご飯食べてるぅ? 作り置きでよかったら、これ食べて?」


2人は老婆心で甲斐甲斐しく雄介の世話を焼き始めたが、雄介には美少女2人に構われているようにしか思えなかったようで、なんだか色々と戸惑っていた。思春期は何かと難しいお年頃である。それに気づいて2人にそれとなく伝えたのだが、2人は「ゆーくん、ゆーくん」と御構い無しで、もう好きにすればいいと思った。

雄介が助けを求めるような視線を投げかけてくるが、いい笑顔を送り返しておいた。



その後理一達はインスリーノ伯爵にお願いして、雄介の身分証も作ってもらった。この町にやってきた時に、雄介は森で拾った身分証を見せて、なんとか入れてもらったらしい。なんとか、と言うのは、この世界の言葉がわからなかったからだ。どうにかこうにかジェスチャーで一生懸命門兵に伝えていたら、どう伝わったのかは不明だが冒険者協会に案内されたそうだ。


それで冒険者協会に拾った身分証を届けがてら、自分の身分証を作ってもらえないか交渉しようとしたところで、理一が声をかけたらしかった。つまり雄介は身分証を持っていなかったので、作ってもらう必要があった。

伯爵は少し悩んだようだったが、町長からよくしてやってくれと頼まれていたのもあってか、一応作ってくれた。その後色々買い物などもして、雄介も旅立ちの準備ができた。


「他の神殿の場所は?」

「全部はわかんねぇけど、次はセーファ大迷宮ってところ」


雄介に言われてマップを検索してみる。セーファ大迷宮の位置は、ターゲス王国から東に向かって、2国ほど跨いだところにある天嶮クロスト山の麓にあった。次がこの距離では先が思いやられる。


「長旅になりそうだ。この世界はとにかく広くてね」

「マジかぁ。でもしょうがねぇよなぁ」


初っ端から肩を落とす雄介をみんなで励まして、理一達はレオザイミの街を後にした。





その様子を覗き見て、ほっと安堵の溜息をつく女性が1人。


「主様、助っ人さん達に仲間が増えたのです」

「そうね。あの子と理一さん達のエニシを繋げた甲斐があったわ」


雄介と理一の出会いは、女神によってもたらされた必然。それには勿論理由がある。


「これであの子は、あの男の手に落ちる可能性が極めて低くなったわ。不死身の人間なんて、何かのバグとしか思えないけれど、そんな子をあの勘違い男に渡してたまるもんですか。あの子が壊れるまで利用されるに決まっているもの」

「あの子はお家に帰るのです」

「拉致された上に利用されるのは可哀想なのです」

「そうよ。でももう大丈夫。理一さんとの縁が繋がったから、あの子が悪い方に転ぶ事は、もうないわ」


とはいえ、女神だって好き放題に世界に干渉できるわけではないから、雄介を元の世界に勝手に戻したりは出来ない。扉を開けるのは雄介自身。雄介が扉を開けて、元の世界に帰る手伝いくらいなら出来る。


「あの子のことも、少し応援してあげましょう」


女神はディスプレイの中の雄介に手をかざすと、その掌がほんのりと光った。そして女神が優しく微笑んだ。


「無事に帰れるといいわね。あなたの旅路に祝福を」




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■六月一日雄介 ユースケ=クサカ


ジョブ:学生 飽食の悪魔

スキル:健康体 回復再生 不死 金剛化 帯電 麻痺耐性 天歩 縮地 豪腕

ギフト:女神の祝福 言語干渉 異空間コンテナ 鑑定 リミッター(オフ)

禁忌:強欲4 色欲1


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