地下第1階層 スケルトンジェネラル戦
菊は器用に並列起動した光輪を操り、全方位に光輪の帯が届く。それだけで殆どのスケルトンがただの白骨へと戻ったが、スケルトンジェネラルといくつかの個体は残されていた。
カタカタと音を立てて寄ってくる数体のスケルトンに、鉄舟が右手に握った鉈を振り下ろし、その刃先が頭蓋骨にめり込み、振り抜き様に破砕する。彼の鉄を打つ腕力と、「6級:業物」である鉄舟作の鉈が合わされば、魔物すらも一撃だった。
鉄舟が次々とスケルトンを白い瓦礫に変えていく側を、とん、と地面を蹴った影がすり抜ける。安吾が走りながら鯉口を切り、剣を抜き放ち一閃。そのスピードに対応しきれなかったスケルトンジェネラルは、剣を構えた格好のまま、両腕と胸骨を切断される。それでも倒れないのは立派なものだが、続け様に唐竹割りに刃を振り下ろされた時には、防御するすべもなく、竹のようにすっぱりと左右が分断された。
その骨がからりと崩れ始めた瞬間に、安吾に向かって風が届く。もう一体が安吾が攻撃に出た隙を狙って攻撃してきたのだ。咄嗟に安吾は後ろに飛びすさり、避けながらも剣を振るう。もう一体の持っていたハルバートが上に弾かれ、胴が開く。
安吾が距離を取ったのを見て、クロが風の刃をお見舞いする。クロから舞い上がった風がひゅんひゅんと風鳴りを上げて、生まれた真空波がスケルトンジェネラルをバラバラに切り刻んだ。
スケルトンジェネラル2体を倒した証拠に、その一際大きい頭蓋骨を拾って、異空間コンテナに放り込む。この空間にバラバラに飛び散っている武具を拾い集め、骨も一応一箇所に集めて置いた。
スケルトンジェネラルを倒した後のスケルトンは、襲っては来るのだが、光壁や光灯などの光魔法に近づくと、それを嫌がってかあまり近寄らなくなった。スケルトンジェネラルという指揮官が居なくなったので、嫌いなものに近寄るという行動をしなくなったようだ。
近づかないならこれ幸いと、しっかりと光壁で防御して、一旦遺跡の外に出ることにした。
遺跡の外に出ると、日が少し傾いていた。早く野営の準備をしないと、危ないところだ。理一達は多少の慣れた手つきで野営の準備をしていく。野営地として選んだのは、岩山のてっぺんだ。高い所は標的としても目立つかもしれないが、襲ってこられた時もわかりやすいし、高所からの攻撃は有利だからだ。
夕食に出されたラザニアに、クロは「肉が少ないぞ」と不満げだったが、味は気に入ったようで量で稼いでいた。理一達もラザニアをつつきながら、今日の反省会をする。
「クロがフォローに入ってくれるのがありがたいですね」
「そうね、あたし達魔法使い組は、どうしても詠唱時間でタイムラグが発生するから、すぐに対応することができない」
「予め詠唱して魔法を保持ってのはできねぇのか?」
「魔力操作を訓練すれば、できると思う。しかし、今はまだ難しいね」
「そうだよねぇ。クロに頼りっぱなしってわけにもいかないんだけどねぇ」
「仕方がなかろう、青二才なのだから。気にせずとも、わしだけでもこの程度の遺跡なら踏破できるわ」
「はは、クロは頼もしいな」
「おい理一? そこは怒っていい所だと思うぜ?」
「悲しいけど事実だからね…」
結局クロの上から目線に誰も反論できないまま、夜が更けていった。
ちなみにこの夜は光壁とクロの風壁を張って就寝した。当初はレイス達の不愉快な悲鳴がうるさすぎて全く眠れる気がしなかったのだが、なんとなく双子幼女のラッパの音が頭に流れていて、案外すんなり入眠できた。