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黒犬旅団の異世界旅行記  作者: 時任雪緒
新しい仲間とメトホルの町
22/115

女神の憂鬱

明けましておめでとうございます。読んでいただけて嬉しいです。

どうぞ今年もよろしくお願いします\\\\٩( 'ω' )و ////

「「ヌシさまーっ」」


トコトコと小さな足音が2人分、軽快なリズムで駆けていく。ともすればそれはコミカルな光景だったはずだが、その2人は目的の人物のところに到着すると、びくぅと足を止める。何故なら2人が目指した主様とやらが、何か物凄く苦悶の表情でウィンドウにかじりついていたからだ。


「主様?」

「どうしたのです?」


ツインテールの亜麻色の髪の幼女が2人、緑色の目をして白い貫頭衣を着ている。その2人が恐る恐ると言った具合に、自分たちの中で最高の存在へと近づく。

声を掛けられたその美女は、苦渋の表情の残渣を残しながらも、なんとか笑ってみせる。


「よく来たなぁ、お嬢ちゃんたちぃ」

「どんな時でも主様は通常運転なのです」

「尊敬するのです」


うっへっへと笑いながら、わきわきと指を動かしてみせる主神に、そんな事をのたまう幼女2人。慣れたものだ。

その退屈な反応には、彼女も溜息をつく。


「ノリ悪ーい。つまんなーい」

「私達は主様の暇つぶしに生まれたんじゃないのです」

「私だって暇じゃないわよ」

「わかってるのです。だから来たのです」


幼女2人が並んで立って、真剣な顔でそんな事をいう。少しポリポリと後ろ頭をかきながら、「参ったねぇ」と彼女は相好を崩す。そして、当初睨んでいたウィンドウを示して、それを幼女が覗き込んだ。


「主様が送った助っ人なのです」

「どうしてるかなーって見てみたらさ、ちょっとまずい事になってるのよ」

「大きなワンちゃんに乗って、どこに向かってるのです?」

「それよ。まだ彼らには早いのよ、グルコス遺跡は。私は今彼らにばかり構っていられないし、どうしようと思って」


困った顔の美女の憂い顔を見て、幼女2人は発展途上の胸を張ってみせる。


「主様、任せるのです!」

「こういう時の私達なのです!」

「なんとかお願いできる?」

「「頑張ってみるのです!」」

「じゃぁ頼んだわよ」

「「はいなのです!」」


元気よく返事をすると、「わーい」と駆け出す幼女2人。あの2人は幼女に作ったものだから、どうも言動が見た目に引っ張られていると、どうでもいい事を美女は考える。

一旦理一達に視線を戻してから、ウィンドウの画面を切り替える。その画面に映り込む相手に、美女はぎりっと爪を噛む。


「理一さん達の手助けもしてあげたいけれど、私はこっちの勘違い野郎をどうにかするのが精一杯だわ」


画面に映っていた男がふと、美女の方を見て。にやりとその口元を歪める。


「くっ! 馬鹿にして!」


画面から伸びてきた、帯状の紫色の靄に絡め取られる前に、美女はそれを切り裂く。


「こんなもので私を捕捉できると思ったら、大間違いよ。このストーカー勘違い野郎」


互いに監視して、互いにせめぎ合うイタチごっこ。この男さえ、いなければ。そう思って、神の鉄槌を食らわせてやろうと、何度思ったことか。そんな事をしたら、地形を変えるくらいでは済まないので、それはできないが。

いくら全知全能の神とはいえ、一つの世界に干渉し続ければ、他の世界とのバランスが崩れる。彼女がこの世界に干渉できるのはこれがリミット。最後に苦し紛れに、ちょこっと男の邪魔をしておいて、遮断する。

一旦遮断すれば、こちらからもあちらからも一切の干渉も監視もできない。また彼女が開かない限りは。

はぁ、と美女は深い溜息をつく。


「これで理一さん達が全滅でもしたら、もう笑えないわね…」


美女はとにかく、あの幼女2人がうまくやってくれるように、神の分際で願ってしまうのだった。




その頃。




「すごいのー」

「おっきなワンワンなのー」


遺跡に向かう途中にある、コリンの姉が嫁いだというスルホン村に1泊する事になり、理一達は立ち寄っていた。村に入るとすぐに2人のツインテール幼女に絡まれて、クロは珍しく「キューン」と一鳴きして伏せる。幼女2人はここぞとばかりに、クロに触ったりよじ登ったりしている。


「君たち、怖くないの?」

「怖くないの」

「可愛いの」

「クロを怖がらないなんて、すごいね」

「「えへへなのー」」


大の大人でも泡を吹いて倒れる者がいるのに、この幼女はどうなっているのかと理一は首をかしげる。そんな理一に幼女2人がクロを解放して寄ってくる。


「お兄ちゃん達どこに行くのー?」

「グルコス遺跡だよ」

「亡霊退治なのー?」

「そうだね」

「頑張るのー」

「応援するのー」

「ありがとう」


お礼を言うと、幼女に手を出すように言われる。そうすると幼女が2人でハイタッチしてくる。


「お姉ちゃんたちもなの」

「ありがとう。タッチ」


幼女2人がみんなにハイタッチして回る。これは中々に嬉しい応援だった。何しろ可愛い。流石の鉄舟も思わず笑顔になっている。幼女強し。

続いて幼女達がラッパを取り出し、プピプピ吹き出して、それを背中に受けて手を振って別れた。


村の宿に入って、宿の女将に幼女のことを尋ねてみた。女将は首をかしげる。


「ツインテールの双子の女の子? そんな子は見たことがないね」

「え? そんなはずは」

「じゃぁあの子達は、どこの子だろうねぇ?」


理一達は謎の幼女に首を傾げたが、いつまでも頭の片隅にラッパの音が鳴っている気がして、なんだかその音を思い出すと、胸が熱くなるのだった。



スキル:即死耐性 暗闇耐性 魔力操作 を獲得しました。

ギフト:天使のラッパ を獲得しました。

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