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黒犬旅団の異世界旅行記  作者: 時任雪緒
新しい仲間とメトホルの町
18/115

ペットを飼うことになった

犬(?)は夜もしこたま餌を食べた後、満足したのかテントのそばで寝転んでいる。何故立ち去らず寝転んでいるのかと言うと、園生が食事代を請求したからだ。


「ねぇ、知ってる? 無銭飲食っていうのは、犯罪なのよぉ?」

「肉はわしが調達したではないか」

「調味料とかの、見えない経費っていうのがあるの。それに、ご飯のために予定を変更することになったし、私が料理を作った労力も、対価が必要になるんだよぉ」

「む、対価か…」


ポクチンとしばらく考え込んで、犬(?)は何事か閃いたらしく、園生に言った。


「良いだろう。ならば交換条件だ」

「なぁに?」

「脂身の程よい女、そなたをわしの主人あるじとして認めよう。そのかわり飯を寄越せ」

「要するにぃ、ペットになるから餌ちょうだいってことねぇ。いいよぉ」

「……」


何か言い返したかったようだが、園生を攻撃してしまうと美味しいご飯にありつけないと諦めたのか、犬(?)はグッと何かを飲み込んだ。


「では、脂身の程よい女、いや、主人よ。わしに名を与えることを許す」

「名前かぁ。う〜ん」


悩み始める園生に、犬(?)は期待と不安を綯い交ぜにした視線を投げかける。しばらく悩んだ園生が、パチンと手を叩いた。


「じゃぁ、待てが出来てお利口さんだから、ハチ公にしようねぇ」

「…」


耳をペタンと倒して、悲壮感あふれる表情で園生を見つめる犬(?)。


「あれぇ、不満? じゃぁシロ?」

「黒いわ!」

「じゃぁクロにしよっかぁ」

「解せぬ」


納得行かないらしいが、結局クロになった。とりあえずこの犬(?)がなんなのかわからないのも心配だったので、鑑定してみた。


■クロ

種族:バンダースナッチ

LV:129

ジョブ:猛獣 怪物

スキル:捕食 貪食 威圧 身体強化 高速移動 超嗅覚 火属性 風属性 毒耐性 麻痺耐性 精神耐性

ギフト:言語干渉

禁忌:暴食9 傲慢8 憤怒5


バンダースナッチというのは、昔童話で読んだことがある気がする。確か獰猛で暴れ狂っている、忌避すべき怪物だとか、そういう設定だった気がする。同じ生き物なのかはわからないが、コリンがドン引きしているので、恐らく似たような生き物だ。


スキルだけ見たら、ただの食いしん坊だが。


というわけで、バンダースナッチのクロが園生のペットになったので、園生の休んでいるテントのそばに寝っ転がっているわけである。


道中もクロがいる間は、誰も近寄らず遠巻きにしていたし、近くに生き物がいる気配もない。コリンが大丈夫だと言っていた通り、有象無象はクロに近づかないのだろう。そう考えると安全な番犬だ。



翌日になって、朝食もしこたま食したクロは、園生と怪我人のコリンを背中に乗せてくれることになった。コリンに負担がかからないようにそっと走ってほしいことをお願いすると、風の魔法をかけて、衝撃を殺してくれたらしく、園生とコリンは快適そうだ。


「それじゃぁ、コリンだけでも先に街に向かった方がいいんじゃないかな?」

「そうだねぇ、そうしようかぁ。一応理一も一緒に来てくれるかなぁ?」

「わかった」


道中が女性とペットだけというのは、少し不安があったので、理一は二つ返事で了承した。そしてクロを見上げる。


「僕も乗せてもらえるかい?」

「良いぞ、早く乗れ。赤身の少ない男よ」

「…」


どうしても他者評価を食料視点から離せないらしいクロには参るが、理一が背中に乗ったのを確認すると

3人纏めて風の魔法をかけ、自身にも魔法をかけて走り出す。

周りの景色が目まぐるしく移り変わり、残してきた安吾達があっという間に見えなくなった。


そして、ものの30分ほどで、メトホルの町の門前に到着したのだった。

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