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黒犬旅団の異世界旅行記  作者: 時任雪緒
サルバドル教国
108/115

閑話 冒険者要らずの街の噂と、菊花の契り

 トゥーラン公国の首都、サイシュ。その花街の一角にある飲み屋「間借り貝亭」にて、八人の冒険者と、一人の騎士風の男、九人構成の冒険者パーティである、「菊花の契り」が話していた。


「なあ、キドニアス王国のフィンチ領の話、聞いたか?」

「聞いた! 冒険者要らずの町だろ」

「某も聞いたぞ。なんでも、漁師や海兵が滅法強いそうだな」

「いやいや、あの街は住人みんな強いって話だぜ」


 話していたのは、ここまで理一と菊を追いかけてきた、脳筋ことシルヴェスター=ランボーと菊の親衛隊達である。


 理一達がフィンチ領に戻って、そこそこの時間が経過した。留学期間の終了まで、およそ八週間と言ったところだ。

 理一達が戻ってしばらくは、創神魔術学会の噂がこの街を席巻していたが、今現在話題になっているのは、上記のフィンチ領に関する噂だ。


 なんでも、漁師が捕鯨用の銛だけで海賊船を撃破したとか、小型帆船がクラーケンを捕獲したとか、ガキ大将率いる子ども軍団が山賊を蹴散らしたとか、冒険者協会に行っても、ほとんど依頼書が見当たらないとか。



 理一達が去った後、フィンチ領で起きていたこと。


 爆発的に身体強化と魔力操作の上昇した漁師と海兵。彼らは自分の家族や友人知人にも、その訓練方法を伝えていた。

 そして、男性や成長率の高い子どもまで、あの地の領民は強化されている。


 魔法は指導者となり得る人物がいないとどうにもならないが、身体強化と魔力操作に限っては、訓練方法さえ知っていれば誰でも強化できる。筋トレと同じことだ。


 ふらっとフィンチ領に立ち寄った冒険者が、冒険者協会の依頼書の少なさに仰天したという話は有名な話で、張り出されていた依頼書は、犬の散歩と遺品整理と引越しの手伝い。

 魔物討伐なんてありゃしない。


 なんでこんなに依頼が少ないのか、その冒険者が尋ねると、窓口の受付嬢は苦笑して答えたそうだ。


「フィンチ領の領民は強いので」


 軒並み強化された領民達は、朝一で冒険者協会に通い、我先にと依頼書を引っぺがし、バイト感覚で依頼をこなしてしまうらしい。お陰で出遅れる外部の冒険者は仕事がないのだ。


 外部からの冒険者が減ってしまったことで、フィンチ伯爵は頭を悩ませたようだが、協会自体は潤っているわけだし、領民もバイト代が入るので生活は潤っているし、なにより市民が魔物や賊の脅威に対処できるようになっているので、安全保障や経済情勢的にはプラスなので、まぁ良いか、という結論になったらしい。



 これによって最も救われたのは貧民街の住民で、伯爵主導で貧民街の住民や浮浪者にも、身体強化と魔力操作、そして文字や規律、冒険者としての心得を叩き込んだ。そうして貧民街の住民達も、冒険者としての地位と収入を確立できるようになった。


 当初は貧民街での暴力事件発生率もかなり上昇したが、金にならない暴力よりも、金になる暴力に飛びつくのは、火を見るより明らか。

 貧民街の住民達は、定職がないのも手伝って、今やフィンチ領を代表する一大冒険者組織だ。


 そしてフィンチ伯爵は強い領民達に、言い方は悪いが商品価値も見出している。

 傭兵派遣会社を設立して、他領の貴族などへ傭兵を派遣してレンタル料を稼ぐ事業を立ち上げたそうだ。

 相変わらずフィンチ伯爵は利に聡く行動が素早い。


 とにかく。それで他の地域でも「フィンチ領出身者が超強い」と噂が広がり、現在フィンチ領は「冒険者要らずの街」と呼ばれている。




 親衛隊長の話を聞いて、興味深そうに聞き入る仲間達と、その話に聞き耳をたてる他の客に気を良くしたのか、親衛隊長は更に笑みを濃くした。


「それでな、そもそもの発端は、フィンチ領での魔物討伐を、領民だけでどうにできないかって、黒犬旅団が海兵と漁師を訓練し始めたのが切っ掛けらしい」


 親衛隊長の言葉を聞いて、彼らは溢れる感動を抑えられなかった。涙を浮かべる者、口元を抑える者、感動にむせぶ表情を隠すようにうつむく者、それを隠しもせず立ち上がる者。


「うおぉぉ! 流石だぁぁ!」

「やっぱそうだよな! そうこなくっちゃ!」

「流石黒犬旅団!」

「流石キクちゃん!」

「まぶしすぎる……」

「女神かよ……!」


 あくまで彼らは菊の親衛隊だ。黒犬旅団の功績=菊の功績である。その中でシルヴェスターも微笑んでいた。それを見て、親衛隊長が笑って言った。


「言い出したのは団長だ。主導したのも指導したのも団長。最早団長は伯爵だからな。フィンチ伯爵と渡り合えるのも団長くらいだ」


 満足そうに、シルヴェスターが頷く。


「あぁ、それにリヒト殿は、伯爵令嬢と婚約されている」

「うん。恐れ入るよ、黒犬旅団は。色白なのにさ」

「全くだ。何故某は色白を劣っていると思っていたのか、今ではもうわからない。そう思っていた頃の某を、今の某は殴り倒してやりたい」

「わかる!」

「超わかる! 昔の俺、どうかしてた!」


 やいのやいのと「菊花の契り」は黒犬旅団を崇め奉っていたが、ややもすると一人の団員が、ポツリとこんなことを零した。


「でもさ、俺らを差し置いて、他の人に指導するって悲しくね?」


 彼らはすでに一端の冒険者。ランクはCなのでそれなりだ。クロに煽られたり、菊への愛情などで頑張ってきた彼らだが、それでも実力の限界は感じていた。

 そこでこの呟きに、意気消沈せざるを得ない。


「そうだよな。団長の嫁さんの故郷ってんだから、わかるけどさ」

「俺らはそんな風に指導とかしてもらったことないのにさ」


 先程までの興奮は何処へやら。菊花の契りを嫉妬と悲愴が覆っていくのを、シルヴェスターは慌てて遮断するように声をかけた。


「そ、そう悲観するでない! 某がリヒト殿に頼んで進ぜよう! リヒト殿なら、きっと嫌な顔はせん!」


 シルヴェスターの言葉にも、隊員達は難色を示す。


「そんなの、わかんないだろ」


 隊員の一人の返答を聞いて、シルヴェスターは眉を吊り上げた。


「何を拗ねておるのだ! 某はリヒト殿を、そなた達はキク殿を、世界の果てまで追いかけるのではなかったのか!」


 嫉妬や劣等感。そういうものに人は足元を掬われやすい。それをシルヴェスターは意図せず煽りという手段で回避した。


「おっ、追いかけるに決まってる!」


 隊員の一人が追いかけると宣言したことで、他の隊員にもそれは伝播した。

 それを見てとって、シルヴェスターは満足そうに言った。


「リヒト殿もキク殿も、我々を見捨てるようなことはしない。キク殿は菊花の契りをとても気にしておられる。リヒト殿は菊花の契りを某に託した。某達はこれまで、リヒト殿達に助けを求めなかった。だが、求めれば助けてくれる。そういう人たちだ」

「そうだな。キクちゃんたちは、そういう人達だ」


 親衛隊長がそう返したことで、シルヴェスターはすぐに理一と連絡をとった。 話を聞いた理一は、予想通り快諾してくれた。


 予想外だったのは、その訓練がかなりスパルタだったこと。


「ダグさん気を抜かないで! 足への魔力操作が乱れてる!」

「はい!」

「ほらケインさん油断しない! 魔物は待ってくれないよ!」

「はい!」

「右翼正面から魔法攻撃! 左翼突撃!」

「はい!」

「遅い! 感知を怠るな! 僕の指示を待っていられるほど、現場は甘くないぞ!」


 菊花の契りは、死ぬ思いで理一の訓練を受けた。魔力操作と身体強化の基礎訓練ーーこれもハードだったーーを終えた後、経験と実績があるからと、ほとんど放り出されたようなセーファ大迷宮。

 何度辞めたいと思ったかしれないが、それでも彼らは耐え抜いた。


 地獄のような訓練から約二週間、彼らは黒犬旅団との力の差を思い知ったと同時に、自分たちが成長したことも知った。


 当初なら逃げることすらも困難と思っていたキーラビーやゴーレム、断崖の支配者パリデスさえも、どうにか倒すに至ったのだ。



 ぜーはーと荒い息をして、菊花の契りの面々は、谷底の硬い岩の上に腰を下ろした。理一が配ってくれた水を、口の端から零しながらもゴクゴクと喉を鳴らして流し込む。

 何故かわからないが、理一のくれる水を飲んだら元気になるのだ。


「ぷはぁ、生き返るぅ」

「復活!」


 元気を取り戻した隊員達に、理一も満足そうにしている。クロの腹時計がないので、正確な時間はよくわからないが、おそらくまだ昼頃だろう。

 このまま昼食を摂って休憩して、もうひと頑張り。

 理一がそう計画を立てているだろうことも菊花の契りは察して安堵した瞬間、理一が顔色を変えた。


「ど、どうしたんだ?」

「距離はあるけれど、強い魔物の反応がある」

「えぇぇぇ〜!」


 ちょっとは元気になったとはいえ、まだ回復しきっていない。お腹も空いてきたし、気持ちは完全に休憩モードに入っていた。

 そのタイミングで強い魔物の到来である。


 菊花の契りは一様にうなだれたが、感知の得意な一人が顔を上げた。その顔は、せっかく元気になったというのに、さーっと血の気が引いて真っ青だ。


「や、ヤバイ。これは本気でヤバイ!」


 理一も腕組みをして唸る。


「ヤバイかもね。この魔力、ガーゴイルっぽい」

「「「ガーゴイル!?」」」

「おかしいなぁ。僕が倒したのに。神殿を護る魔物みたいだし、なんか復活するようなシステムでもあるのかな」


 理一がどうでも良いことを言い出した。菊花の契りはそれどころではない。シルヴェスターが立ち上がって理一に詰め寄った。


「リヒト殿には余裕でも! 某達には無理だ! 逃げようぞ!」

「いや、僕だって余裕じゃないよ。本当に死にかけたんだから。あの時クロが間に合わなかったら、僕は確実に死んでたよ」

「尚更無理だ!」


 更に詰め寄るシルヴェスターと、同調する菊花の契り。それを見てやはり理一は腕組みをしたまま唸る。


「でも、今の僕と君達なら、多分いけると思うんだよね」

「いけない! いけない!」

「無理無理無理無理!」

「絶対無理だから!」

「団長、命大事にして!」


 命大事にと言われて、理一も思うところがあったのか、腕組みを解いてくれた。そして眉を下げて微笑んだのを見て、逃げられると安堵した菊花の契りに、理一はこう言った。


「そうだね、じゃぁ僕がある程度弱らせるから、それから頑張ってもらおうかな」

「結局やるんかーい!」


 菊花の契りが揃ってずっこけた。


「だって前回はバカスカ攻撃しすぎて、肉以外の素材がほとんど取れなかったんだよ。あれは勿体無かった」

「物欲かよ!」

「金に目がくらみやがったぞ!」

「何を言うんだい。冒険者の大事な収入源じゃないか。素材と肉の七割は君達、残り三割は僕。ガーゴイルだよ。きっとランクも上がるし、すごい大金になるよ。どう?」


 理一の話を聞いて、彼らの頭の中に金貨の音がした。元々花屋などの商売人なので、金額計算はとても素早い。


 ガーゴイル。本来ならBからAランク相当の魔物。本来Cランクの彼らが敵う魔物ではない。

 あの理一ですら死にかけたと言うのだから、きっとここのガーゴイルはAランク相当の個体か特殊個体の可能性もある。


 だが、彼らだって訓練を頑張ってきたし、強くなった自覚はある。なにより理一が一緒にいると言うことが、滅茶苦茶心強い。


 そして、大金も冒険者ランクの格上げも捨てがたい。


「いや、でもな……」

「流石に自信ない……」


 迷いはあるが、やはり命は惜しい。そう考えて話し合っていると、理一がシルヴェスターの肩を叩いた。理一の表情は既に、緊張で強張っていた。


「残念、時間切れ。来たよ」



 バッサバッサと石の翼を羽ばたかせた、石の体を持つ魔物が高速で飛んできている。理一の背後にその姿が見えて、同時に真っ青になる菊花の契り。理一の言う通り、魔物は待ってくれないのである。


 理一はすぐに前方を向いて、早速魔法を起動した。


「前のようにはいかないからな」


 そう呟いた理一の発動した魔法は、彼らの見たこともない魔法。

 風の刃と氷の刃が乱舞して、ガーゴイルを縦横無尽に切りつけていた。


 気温が下がり、空気中の水分が氷に変化する。ガーゴイルに当たった氷の刃の破片と合わせて、理一の光灯が反射してキラキラと舞い降りてくる。


「綺麗だ……」


 初めて見る、ダイヤモンドダスト。この世界では雪も氷も相当に希少で、雪など彼らは見たこともない。

 理一は戦闘中だと言うのに、うっかり彼らはその幻想的で美しい光景に見入っていた。


 だが、それをガーゴイルの放った火炎がかき消したことで、彼らはハッと我にかえる。


 気づくと理一は空中を駆けて、ガーゴイルを翻弄している。きっと自分たちに攻撃が向かないように、理一が引き付けているのだ。


 理一が氷の槍を構えて、それを投擲する。最早その速度は彼らには視認できない程の速度が出ていたが、ガーゴイルはひらりと槍を躱して見せた。だが、躱した先でガーゴイルの視界から一瞬理一が消えた瞬間、右の翼に氷が突立ち、翼の根元から弾けた。


「槍が一本だけだと思ったら大間違いだ」


 理一の手には新たにもう一本の槍が握られている。右翼を失ったガーゴイルがぐらりとバランスを崩したのを見て、理一が更にもう一本の槍を左翼に投擲し、避けることもままならなかったガーゴイルは、左の翼も失って落下した。



 ズゥンという衝撃音と共に僅かに地面が揺れ、もうもうと土煙が捲き上る。理一も地面に降りてきた。


「さ、これでガーゴイルは飛べなくなった。出番だよ」



 マジか、と頭を抱えたくなったが、ここまでお膳立てされたらやるしかない。

 理一が教えてくれたので、仲間の魔法使いは全員パワーアップしているし、みんな身体能力はかなり高くなっている。

 シルヴェスターの剣技だって磨きがかかった。


 元々花束を抱えていた親衛隊長の手には、今はロングソードが握られている。

 魚屋だったダグの手にはショートソード。

 床屋だったケインの手には魔道具の杖。

 靴屋だったリックの手にはハルバード。


 もう、商人じゃない。今は冒険者。彼らは各々自分の武器を握りしめて、覚悟を決めた。



 ガーゴイルが立ち上がり、その顎門を開く。放たれた火炎に対し、ケインが同じく火炎の魔法を当てて、その魔法は拮抗する。

 炎と炎のぶつかり合いは拮抗し、周囲にとんでもない熱量をもたらしたが、元々理一が気温を下げていたせいか、グニャリと景色が歪む。


 蜃気楼、この世界ではよく見られる自然現象。彼らはよく見知っていたが、この谷から出たことのないガーゴイルは知らなかったのか、彼らの位置を誤認したようで、明後日の方向に魔法を打ち始めた。


 自分たちの見ているガーゴイルも、本物ではないかもしれない。彼らは気配感知を使って、正確にガーゴイルの位置を把握し走り出す。


 砂漠を駆けるチーターよりも早く、彼らはガーゴイルに迫る。気温が安定して蜃気楼が消えたのか、ガーゴイルが側面の彼らに気づいた。


「だがもう遅い!」


 魔力を剣に何層にも渡って纏わせたシルヴェスターが、大きく跳躍してガーゴイルに果敢に切りつける。

 背中を叩き切られたガーゴイルが、前方によろめく。


 今までなら、きっと自分たちの刃ではガーゴイルに傷すらも負わせられなかっただろう。

 だが、斬れた。そのことが彼らの戦意を大きく向上させた。


「うおぉぉぉ!」


 バランスを崩したガーゴイルの左膝を、親衛隊長が叩き折る。更にガーゴイルはバランスを崩したが、倒れざまに火を吹こうとしたのを、ケインが先に炎弾を頭にぶつけて、それを阻止した。


「ナイスだケイン!」


 更に飛び出したリックが、今にも倒れそうなガーゴイルの左脇腹にハルバードを突き立てる。

 ガーゴイルが右手でリックを薙ぎ払ったが、リックはしっかりとハルバードで身体を防御して、吹き飛ばされた先で地面を削って踏みとどまった。


 そして、反撃に出たことで更にバランスの崩れたガーゴイルが、右肩から地面に倒れた。


 悪いが今はリックに構っていられない。バランスを崩して倒れたとしても、ガーゴイルは魔法を使えるし、まだ起き上がる力はある。

 今が絶好の機会。


 魔法を放とうと、ガーゴイルがその首をもたげる。それよりも早く、彼らはすでに走り出していた。


「うおぉぉ!」

「食らえ!」


 親衛隊長とシルヴェスターとダグが、跳躍して落下の速度も加え、それぞれの剣をガーゴイルに突き立てる。


 頭と心臓に深々と刺さった剣を素早く抜いて、彼らはすぐにその場を離脱する。もたげられていた頭が、ズシンと地面に力なく落ちた。


「し、死んだか……?」


 親衛隊長の呟きに帰ってきたのは、パチパチと響く拍手の音。見守っていた理一がパチパチと拍手していた。


「頑張ったね。ガーゴイルの魔力は消えた。討伐成功だよ」


 理一の言葉を聞いて、ようやく実感が湧いてきた。


「うわぁぁ! マジか! マジかぁぁぁ!」

「勝てたなんて信じられない!」

「よっしゃぁぁぁ!」


 彼らは、大声をあげながら大層喜んで、抱き合いながら互いの健闘を称えあった。ついには理一から順番に、全員を胴上げした。



 そういうわけで、彼らはガーゴイルを倒したということで、素材を売って沢山の収入も得た。

 何より素敵だったのが魔石で、その鑑定結果からやはり特殊個体だったらしい。


 Aランク相当の特殊個体を倒したということで、彼らは二階級特進して目出度くAランク冒険者になった。


 理一の手伝いもあったし、彼らは自分たちがAランクになったことが未だに信じられないようだが、理一から見れば、そのくらいの実力はある。



「もっと自信を持っていいのに。菊花の契りは強いよ」

「Sランクに言われても」

「そこはSランクに認められたって、発想を逆転してほしいね」


 そう言われてみればそうか、と彼らも考えを少し改めた。


 だが彼らはずっと堅実で慎重だったし、驕ったところもなかった。理一達や菊の思想を尊敬していたし、黒犬旅団の迷惑になりたくなかったからだ。

 だから町の人たちからは、「感じがよくて強い冒険者」と高い評価を受けた。




 その後「菊花の契り」は、黒犬旅団に次ぐ西大陸を代表する冒険者になるのだが、それはまた別の話。


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