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幻騒のカルネヴァーレ  作者: 武石まいたけ
chapter.0 In dream everything is fine
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0☆

夢の中では すべてがうまく行く

in dream everything is fine


夢の中には 悩みなんてない

in dream everything is fine


夢の中では すべてが手に入る

in dream everything is fine


あなたの悦びも

you got your good thing


わたしの悦びも

and I've got mine


夢の中では……

in dream……





「……空って歪むものだったんだな。まだまだ研究不足だ」

「関心している場合じゃないでしょ……」

「これが世界の終わりというものか……思ったより幻想的な光景じゃないか」


空が歪む。雲ひとつ無い晴天はまるで渦を巻くように捻じれ、それに呼応しているかのように大地が揺れる。地面からは青い蛍の光のような小さな光球が次々と浮き上がり、まるで一つ一つが意思を持っているかのように揺らめきながら 一人の少女 の元に集まっていく。


「さてどうする? このまま放っておけば面白いものが見れそうだが」

「ふざけないで! 世界が滅びかけているのよ!?」

「いいじゃないか、別に。皆で滅べば怖くないよ」


少女の前には3人の男女の姿があった。眼鏡をかけた華奢な男、白衣の長身男性、そして白い髪の少女。いずれも身体に深い傷を負っており、既に息も絶え絶えだった。


「何処で、間違えたんだろうな……俺たちは」

「最初からじゃないかな」

「……お前さ、本当に嫌な性格になったよな」

「……貴方も、()()()に死んでおけばよかったわね」

「はっはっ、もしかすると()()()に僕は死んでしまったのかもしれないね」


静かに口喧嘩する傷だらけの男女3人に向かって、無数の光線が放たれる。彼等は咄嗟に魔法杖から防御障壁を展開して攻撃を凌ぐが、圧倒的な手数を前に押し切られて障壁ごと吹き飛ばされた。


「ぐあっ……!」

「ううっ!」

「はっはっ……! キツイなぁ、これは!!」


地面に倒れ伏した眼鏡の男は、苦しげな表情で前方に立つ少女を睨みつける。金糸のように煌めく黄金色の長髪に、宝石のような真紅の瞳。その姿はまるで女神のように美しいものだったが、彼女が3人に向ける眼差しには明確な敵意が滲んでいた。


「邪魔をしないで……もう、邪魔をしないでよ。()()()は、お前たちが大嫌いなの!」

「……君は」

「うるさい!」


眼鏡の男が何かを言おうとした瞬間に金髪の少女は激昂し、彼に向かって青いレーザーのような攻撃を放つ。その攻撃は男の右肩を貫き、苦痛に顔を歪ませながら彼は膝をつく。


「うぐっ!」

「……ウォルター!」

「お前さえ、お前さえいなければ……お前さえいなければあたしは!」


激情する少女に呼応するように、空は更に大きく歪んでいく。


「……諦めろ、彼女にお前の声はもう届かない」

「……」

「……知っているさ」


眼鏡の男は力を振り絞り、震えながら立ち上がる。そして歯を食いしばりながら絞り出すように呟いた。


「知っていても……辛いなぁ」


その姿を見て白衣の男も溜息混じりに起き上がった。だが白髪の少女にはもう立ち上がる力も残されていないようだ。彼女は悔しそうに地面を掻き、苦悶の表情を浮かべながら呻いた。


「その目が、嫌いなのよ……」

「……ん?」


金髪の少女は眼鏡の男を睨みながら呟く。男に向けられたその一言には、凍りつくような殺意が込められていた。


「お前のその目が、大嫌いなんだ!」

「ああ、ごめんね。この目は生まれつきさ……」

「……これ以上、彼女を挑発するなよ ウォルター」

「ごめんね、この性格も 生まれつきさ」


金髪の少女は両手を広げて叫んだ。彼女が叫ぶと同時に近くの建造物は根元から引き抜かれるように浮かび上がり、大地の振動はより激しさを増していく。彼等を除いて、この周囲に動く者はもういない。地面に倒れる人らしきものはどれも生命の躍動を止め、物言わぬ死体と成り果てていた。


「お前なんか、お前なんか、お前なんかああああああ!!」


少女を囲む青い蛍の光は徐々にその色を変え、彼女の瞳のような赤色の光球へと変貌した。昂ぶり続ける感情に応えるかのように光球は激しく振動する。


「どうするんだ?」

「どうにもこうにも、僕たちには殆ど力が残ってない」

「……だから、どうするの?」

「つまり、あと一撃しか【魔法】が放てない」

「……そうだな。で、どうする?」


少女の周囲を漂う赤い光が槍状の物体へと形を変え、その刃先は満身創痍の3人に向けられた。


「その一撃に、全てをかけるしか無いだろう」


眼鏡の男は手にした杖を少女に向けて意識を集中する。杖を握る彼の手から()()()()()()()が伸び、杖を覆うようにして伸びていく。やがて光の筋が杖先に届き、前方の空間に大きな魔法陣が発生する。隣に立つ白衣の男もうんざりしながら彼と同じように杖を少女に向け、白髪の女性も残った力を振り絞りながら杖を構える。


「今だから言うけどさ、やっぱりそのひげは似合わないよレックス!」

「うるさいよ! ()()()()()()お前らがおかしいんだ!!」

「こんな時に喧嘩しないで!」

「あとやっぱり君は髪を伸ばしたほうが素敵だよ、ロザリー!」

「……ッ!!」


眼鏡の男の言葉を聞いて、白髪の女性の顔は真っ赤に染まる。その青い瞳には大粒の涙が浮かぶが、彼女は涙を拭って小声で何かを呟いた後に金髪の少女を見据えた。白衣の男は眼鏡の男と白髪の女性の顔を二度見した後で乾いた笑い声を上げ、眼鏡の男も二人の反応を見て満足そうに笑う。


「お前たちなんか、消えちゃえええええええ!!」


金髪の少女は絶叫し、彼等に向けて無数の光の槍が一斉に放たれる。


その槍の一撃一撃には人を容易く屠るだけの威力があり、命中すれば命はない。そんな攻撃がまるで 赤い雨 の如く眼前に迫る……絶体絶命の状況を前にしても、眼鏡の男は精一杯の笑顔を浮かべながら叫んだ。


「最後に、君たちに会えてよかった!!」


そして彼等の杖から魔法が放たれる。三つの杖先からは極大のレーザー光線のような魔法が放たれ、目前に迫る 赤い雨 にぶつかった。



そしてガラスが割れるような大きな音を残し、周囲は眩い光に包まれた────。





でも夢は いずれ覚める

but to awake from a dream


あなたは 夢から目を覚ます……

till rise out from your dream……




That's where the story begins. Welcome to Limbo city……

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