高校生活(1)
高校生、あぁなんて素晴らしい言葉の響き。
それは物語の始まりで、青春の始まり。
多くのラノベのように俺の身にも何か起こるんじゃないか。そんな勘違いも甚だしい期待に胸を膨らませながら、俺は高校の校門の門をくぐる。今日は入学式だ。お偉いさんの長話をBGMに体育館でうつらうつら。前日の寝不足を解消させるて、配布されたクラス表に従って教室に向かった。創立64年の公立高校は県内でも指折りの進学校であったのが幸いして、校舎は建て替えられたばっかり。税金の無駄遣いってニュースで取り上げられたほど豪華な造りの校舎は、想像以上に立派で。付け加えるならば、アニメの作画班が取材にくるのも時間の問題だろうと思われた。
そんなこんなで辺りを見渡しながら校舎の観光を済ませ、ようやくたどり着いた先が一年Bクラス。黒板に貼られた座席表を見て驚いた。相坂優雅なんていう名前のおかげで常に一番前だった俺の出席番号はめでたく二番になり、座席も窓際二列目という中々な高ポジション。テンションが盛り上がる中、俺の9年間に渡る出席番号一番の座を奪った名を見ようとして、何かとぶつかった。
視線を下に下げてみれば、胸元にあったのは黄色い塊である。
それがひよこの着ぐるみを着た人間だと気付くまで、僕の頭は一瞬の間を必要とした。そうして直感的にこの小さいひよこの着ぐるみを着た人間の大きさを想像して、僕は思わず、脳からダイレクトにつぶやいた。
「ちっさ、、、」
衝撃と共に視界は真っ白に。
天を仰ぐようにして、僕は気を失った。
僕の意識を昇天させた着ぐるみ人間の名をを藍丘恵という。