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てんとう虫のサンバ メル編

作者: まこたろう

初めて投稿させていただいております。

なにかを書きたいという欲求の赴くままにおバカ物語を書きました。

しばらくの間、お付き合いの程お願いいたします。

ある日結婚式場で披露宴が開かれていました。

幸せそうな新郎新婦、彼らの両親、親族そして友人たちも本当に幸せで楽しそうでした。宴もたけなわ、来賓の挨拶、酔払ったおじさんの‘めでたい’唄、その後定番の新婦側の友人たちによるてんとう虫のサンバ。

‐今時マジかよ‐と思いながらも、みんな手拍子をして、楽しむのでした。


手拍子の友人の中にもうすぐ結婚するという男女がいました。敏夫とメルです。メルヘン好きのふたりは結婚式をメルヘンなものにしたいと考えていました。敏夫は新婦友人達のてんとう虫のサンバを聴きながらひらめきました。曲が終ると敏夫が 「メルちゃん、ちょっと」と耳元でささやき、ふたりは会場の外に出ました。


「メルちゃん、僕たちもさあ、虫たちに祝ってもらおうよ、きっと楽しいよ」

目を輝かせながら言いました。

「そうね、いいわねえ」

メルも目をキラキラさせて答えました。

 

 メルヘンなふたりは実行に移すことになったのです。ふたりが思い描いたのは、キリギリスがバイオリンを弾き、コメツキムシが葉っぱの上で拍子を取り、てんとう虫や蝶が乱舞する、その真ん中でメルと敏夫が踊るみたいな、まずありえない情景でした。


 敏夫はてんとう虫が‘発生する’時期をネットで調べ‘決行日’をメルに伝えました。

そして、その日がやってきました。ふたりは、借りてきたウエディングドレスやピカピカの靴、髪飾りなどブライダルグッズを満載したスーツケースを車に積んで予め調べておいた、その場所に向かいました。

森を抜け、しばらく行くと広い原っぱに出ました。車を停めて、ふたりは着替えを始めました。すっかり新郎新婦に変身し、敏夫がメルの手を取り、原っぱに入っていきました。

「メルちゃん、てんとう虫来るかなあ」

「きっと来て祝ってくれるわ」

青空いっぱい、いいお天気に気持ち良い風が吹き、ふたりは最高の気分でした。

様々な蝶が舞い、メルは嬉しくなり、タリランタリラン踊りました。

「ほら、としくんも来て!」と敏夫を呼ぶと、敏夫はメルのところに駆け寄りました。


      タリランタリラン、タリランタリラン


 ふたりが踊っていると、一匹のてんとう虫が敏夫の手の甲にとまりました。

「ほら、メルちゃん、てんとう虫」

「あ、ほんとだ!かわいい!」

メルが目を輝かせました。しかし、その後様子が一変します。一匹のてんとう虫がメルの手の甲にとまると、

「きゃー、わたしのとこには来ないでー」

メルが叫びました。敏夫は知らなかったのです、メルが実は虫が大嫌いだった事を。そして悲劇が始まりました。一匹だったてんとう虫は、二匹、四匹、そして八匹と倍々ゲームで増えていきました。近くのジャガイモ畑で異常発生したてんとう虫が、ふたりに襲いかかったのです。メルの香水か体から醸し出すなんらかのにおいに誘われたのでしょうか、特にメルの体に多くまとわりつきました。

「ひえー、とし君―ん、なんとかしてよお、気持ち悪いよお」

「メルちゃん、だいじょうぶー」

と敏夫は、メルの体についているてんとう虫をメルが持ってきた鳥の羽の扇子で必死に払いました。お構いなしのてんとう虫はメルの首から胸の谷間から中に侵入しました、そしてふとももからも。この日のために新調したエロいヒラヒラのパンツの中へと侵入していくのでした。

「きゃー中に入ってきた、とし君、車から殺虫剤持ってきて、早く! あー気持ち悪いよう!」

叫びながらメルはドレスを脱ぎ始めました。脱ごうと思うと、なかなか脱げません。

「とし君、ちょっと手伝って!」

メルが叫ぶと、殺虫剤を取りに行った敏夫は途中で戻ってきて、メルのドレスを脱がせるのを手伝いました。てんとう虫はメルの下着の中にも侵入していたので、メルは下着も脱ぎ始めました。敏夫が殺虫剤を手に戻ってきたときには、メルが素っ裸で又についたてんとう虫を払おうと狂わんばかりに絶叫していました。

「あー気持ち悪い、早く殺虫剤をかけてちょうだい!」

と、叫びました。

敏夫が背中からスプレーを浴びせかけると、メルが手で顔を覆い、

「早く、こっちも」

と正面向き、たわわな乳房を揺らすのでした。

メルの全身に殺虫剤をかけるとてんとう虫はばたばたと地面に落ちました。敏夫の体にも大量のてんとう虫がたかり、襟首や裾から内部に侵入していました。メルにスプレーしている間我慢していましたが、メルに付いたてんとう虫を全滅させた後、

「メルちゃん、交代」と言って、殺虫スプレーをメルに渡し、敏夫もタキシード、ワイシャツ、ズボンを脱ぎ棄て、そしてパンツを脱ぎ、メルは敏夫の全身にスプレーをかけると、てんとう虫はばたばたと地面に落ち、最後の一匹が命からがら、敏夫の突き出た部分の先から飛び立つと、ふたりのからだからてんとう虫は一匹もいなくなりました。

 

 メルはあまりの気持ち悪さと恐怖に泣きじゃくっていました。敏夫はメルを抱き寄せて頭をなでながらなだめました。

「メルちゃん、ごめんね。僕が悪かったよ。こんなことになるとは思わなかった。」

敏夫の腕の中でしばらく泣いていましたが、メルが顔を上げると視線の先には一本のりんごの木があり、涙を拭いてよく見ると、‘中くらいの長さの狡猾な蛇’が木の幹に巻き付いていました。蛇はこれまでの一部始終を見ていました。舌をペロペロ出しながら、蛇がメルに言いました。

「お嬢さん、俺はこの森の主だ。大抵の生き物は俺の思うがままになる。さっきの蝶もてんとう虫もそうだ。俺がやったんだ。しかし、見事にてんとう虫を殺してくれたもんだなあ。お前たち人間は勝手なもんだ、メルヘンだの勝手な想像をしおって、体に付かれれば気持ち悪いだのなんだの騒ぎやがる。しかし、今日はいいものを見せてもらったからお嬢さん、お礼にいいものをやろう。」

蛇は尻尾を一振りし、大きくておいしそうなりんごをぽとりと落としました。敏夫の肩越しに蛇の方を見ていたメルは敏夫に耳打ちしました。

「としくん、さっきからさあ、あそこにいる蛇が何か言ってるんだけど、としくん聞いてくれる?」

敏夫は、モノを半立ちにしながら、蛇と対面しました。

「なにをさっきからメルちゃんに言ってるんだ!俺が聞いてやる!!」

「おっつ、その女何も聞いてなかったのか、そして半立ち」

全部繰り返すのもばかばかしいので、蛇は敏夫と目をそらせながら、話を変えてさらに短くして敏夫に告げました。

「お前たちふたりの門出を祝って、俺が守ってきたりんごをやろう、さっき下に落としたから見てみろ」

蛇が尻尾で指す方を見ると大きなおいしそうなりんごが落ちていました。

「メルちゃん、蛇がりんごくれるって」

と、メルの前に差し出すと、

「あーおいしそう!食べようよ」

と、りんごを敏夫の手から取って、がぶりとかじりつきました。

「おいしいー、としくんも食べなよー」

メルは自分がかじった面を敏夫の口元に持っていきました。そのまま敏夫はがぶりとかじりつき、

「うーま、メルちゃんうまいねえ」

ふたりは大はしゃぎで、蛇などほったらかしにして、かわるがわるりんごを食べました。りんごを食べているうちにふたりのきもちに変化が起きました。なぜだか裸でいるのがすごく恥ずかしくなったのです。普通の人なら既に感じているのでしょうが、ふたりは特別でした。車の中にある普段着を着ようと、貸衣装と殺虫剤を持って車に向かう途中、敏夫が何かを思い、はたと止まりました。


-長さはともかく、狡猾な蛇、りんご、全裸の男女-


すごくひらめいた敏夫が目を爛々と輝かせ、

「メルちゃん、もしかして俺たちってさあ、選ばれしものなんじゃね?」

メルは敏夫が何言ってるのか分かりませんでした。敏夫はおぼろげな記憶をたどって旧約聖書、創世記のさわりをメルに説きました。

「えー、そうなのかなあ、私たちって選ばれしものなのかなあー」

まじモードでメルも目を輝かせました。


 「てんとうむしもいいけどさあ、やっぱり僕たちは‘民’に祝ってもらおうよ」

「そうよね、たみよね、やっぱりたみが一番」

‘たみ’の意味が分からなくても、メルは流せちゃう人でした。


 そして、これまでの‘惨劇’がまるで無かったかのように、ふたりは山の中腹にある、‘日帰り温泉なごみの湯’で一風呂浴び、殺虫剤を落とし、アナザーメルヘンを求めて、貸衣装を返しがてら、ウエディングプランナーに会いに行きました。蛇はバカップルを相手に疲れて、頭痛を覚えながら自らの棲家に帰るのでした。


 「初めまして、本日対応させていただきます、私、古川と申します。本日はお越しいただきまして誠にありがとうございます。」

「あのお、僕たち今度結婚式を挙げたいのですが」敏夫が結構いけてるウエディングプランナーの女性に切り出しました。

「早速ですが、お日取り、ご予算などお話しできればと存じます。それから、これは必ず入れたいという事がございましたら、お聞かせいただけますか?」

するとメルが、

「私ゴンドラに乗りたーい」

「ありますか?ゴンドラ?」と敏夫。

「もちろんございます」

古川がパンフレットの写真を二人に見せました。それは出入り用の小さな扉がついた真っ白な箱型の囲いに、これもまた真っ白な二人掛けの椅子が入ったものでした。

「あー素敵!」と目を輝かせるメル。

「座っているだけなので、まず落ちる危険性はございませんが、お二人とも命綱を着けていただきますので、安全性は万全でございます。この写真実は私ですが、とても気持ち良かったですよ」

ニコニコしながら古川は続けた。

「囲いがございますので、新婦様のお衣装がミニでも大丈夫でございます、私もこの撮影の時ミニでした。」

メルはミニの衣装と決めていたので、それを聞いて喜びました。


 古川と敏夫がその他の、しかし肝心な事について話し始めました。

メルはゴンドラとミニの衣装がクリアできたので、あとのことには興味がありませんでした。ただ、敏夫の前の女への視線が気になっていたので、敏夫の方をちらちら見たり、たまに会話にちゃちゃを入れたりしていました。

「民の数は六十くらいを考えております」敏夫が告げると、

「た、たみ?」古川は聞き返しました。

「そ、そうよ、民が60くらい!」ここぞとばかり、メルが口を挟みました。

「ねっ、としくん」

メルが急に入ってきたので、敏夫も面喰い、メルの顔を見ました。

「う、うん、あの、要するに60人くらい呼ぼうと思いまして」

多少常識のある敏夫が古川の方に向き直りました。

また敏夫が前の女の方に向き直ったのが面白くなくて、メルは周りをきょろきょろ見まわしたり、足をぶらぶらさせたりしていました。そうこうしているうちに話はまとまり、ふたりの結婚披露宴に向けての準備が始まりました。


 いよいよ披露宴当日、メルの2回目のお色直しの時、敏夫もいっしょに会場を出ました。メルは楽しみにしていたミニのドレスに着かえ、案内人に導かれ敏夫と合流し、メインイベントたるゴンドラに乗り込むと、壮大な音楽と司会の声が会場に響きました。さて、‘選ばれし者’が空中から登場しました。頭には二人とも月桂樹の冠をいただいていました。勘違いの敏夫は手のひらを上に向けて手首をちょっと下げ、腕を広げ、歓喜に満ちたメルに囁きました。

「僕たち民からの祝福を受けてるね」

「そうね、私たちってやっぱり選ばれしものだったのね」

メルも浸りきっていました。


 この式場の窓の外は庭になっており、きれいに手入れをされている庭木が植えてありました。ちょうど天井くらいの高さの木に‘中くらいの長さの狡猾な蛇’が巻き付いていて、人知れず中を覗いていました。蛇の鼻の頭にはてんとう虫が一匹、原っぱでメルのエロいパンツの中に侵入しましたが、メルがパンツを脱ぎ捨てたときに一緒にくっついて見事脱出し、殺虫スプレーの攻撃を受けずに生き延びた悪運の強い、そしてエロいてんとう虫でした。


 蛇がペロッと舌を出して合図をすると、エロいてんとう虫はプーンと飛び立ち、窓のサッシの間を難なくすり抜けて披露宴会場に侵入しました。プーンと飛び立つと、新郎新婦が乗っているゴンドラの方向へ向かいました。民の祝福を受け、ご満悦な新郎新婦、うっとりしているメル新婦の太ももにてんとう虫が到達、メルは「キャー」と言って、ゴンドラの中で立ち上がりました。あの時の恐怖がよみがえったメルはゴンドラの中で大騒ぎを始めました。何が起こったのか分からずおろおろしている敏夫。てんとう虫はまたもやメルのパンツの中に侵入、ごそごそと中で這いまわり、メルはパニック状態に、それでも少し冷静になって、位置を特定すると、メルは自分の股に向けて手のひらを振り下ろしました。


「このーエロてんとう虫いー」


てんとう虫はメルの指と指の間にいたので、つぶされずに済みました。死という最悪な事態は回避したものの布の圧力に押され口からオレンジ色の液を出し、パンツの表面に沁みました。メルは撃退したと思い、攻撃を止めた、その時を逃さず、てんとう虫は素早くパンツを伝わって、またもや脱出に成功しました。

股からプーンとてんとう虫が飛び立ったのを見て、メルは逃がすまいと、両手でを伸ばしてたたこうとしました。そのとたんバランスを崩して、上半身がゴンドラの外に、勢い余ってゴンドラにぶら下がりました。「キャー」

ゴンドラは大きくメルの方に傾き、敏夫はメルを助けようと必死に命綱をつかみ、引き揚げようとしました。下からはメルのミニスカの中が丸見えの状態に。メルは敏夫にかっこ悪い形で引き揚げられ、無事ゴンドラに戻りましたが、ゴンドラは出てきた方に引っ込み、このイベントは終了しました。


 メルと敏夫は疲れ果て、次のプログラムには遅れて登場しました。新郎新婦には災難でしたが、出席した男性客は、この上なく良いものを見せてもらい、皆大変満足していました。司会者は思いもよらないハプニングに慌てましたが、かろうじて次の出し物を読み上げました。


「はい、次は新婦ご友人によるてんとう虫のサンバです。どうぞー」


さて、新郎新婦の友人の中に結婚を予定している男女が出席していました。大輔とマリンです。てんとう虫のサンバが終ると、大輔が何かひらめいた様子で、まりんに耳打ちをし、ふたりは式場を出て行くのでした。


その光景を外から見ていた‘中くらいの長さの狡猾な蛇’は尻尾でおでこを叩き言いました。


 アチャ~


終わり



とりとめのない文章にお付き合いいただきありがとうございました。





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