PROLOGUE 武器を持った子供
世の中うまくいかないことのほうが多い。
やりたいことをやっていたい。
ずっと中学生でいたい。
大人には縛られたくない。
つらい目には遭いたくない。
――――自己中心的に生きていたい。
中学三年生の半田裕人は現在自分のクラスである三年六組の教室で数学の授業を受けている。席は前から二番目の中央に位置する。四十人の生徒を前に円周角の定理を解説しているのは生徒からの人気が高いA先生だ。生徒からの人気が高いため、生徒に攻撃をされることは普通に考えてないだろう。ましてや殺されることなどありえない。そして先生本人は生徒からの人気に気付いていた。
半田はその場で起立し、どこから取り出したのか、銃を右手に持って銃口をA先生へと向けた。
――――先生は―――――――固まった。何もしゃべらなかった。数秒たった後に一瞬何か声を出したような気がしたが、同時に銃声が鳴り響き先生は頭から血を吹いて倒れた。教室中の生徒が悲鳴を上げたが、半田は興奮していて聞こえていなかった。それよりも予定通りに教室を出て三年四組の赤月亮也と合流することが重要であり、むしろそれ以外のことはどうでもよかったのだ。
教室を出て廊下を突き当りまで走り、そこで立ち止まった。
半田は階段をじっと見つめて赤月が三階から下りてくるのを待った。
赤月が下りてきて、半田は安心したように笑顔を見せた。
ただ赤月は半田を確認するや、階段を一気に飛び降りて両手に持った剣のうちの右手に持つ剣を半田にめがけてとてつもないスピードで突いた。
―――――血。・・・血だ。
半田は腕に付着した血から足元に視線を移した。―――そこには腹部を真っ赤にしたB先生が倒れていた。
「・・・すまん赤月、気付かなかった。」
危なかった。赤月が来ていなかったら半田はB先生に殺されていたかもしれない。
「・・・ああ」
赤月は初めて口を開いた。赤月が無口であることを半田は幼いころから知っているが、時々恐怖を感じるのだった。
――――――――それでも赤月のことを理解している、半田はそう思っているし、思いたかった。