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エピローグ

泣き疲れた私はおんぶされている。さっきまでのことを思い出してしまい恥ずかしくなって、今は寝ているフリをしている。「医者にも聞いたから大丈夫だ」って言ってくれたけど、実感が湧いてこない。本当に、このまま二人で生きていってもいいのだろうか。何度も祈った願い事が叶ったから、喜んでもいいんだよね?

「あれ?もしかしてあの時の」

カップルの男の人が話しかけてきた。

「ああ、アイツの友人か。久しぶりだな」

アイツ?アイツって誰なの?ていうか友人って…。

「あの時以来だな。…っと邪魔だったか。話はまた今度にでも」

「ちょ、ちょっと待って。これから墓参りに行くんだけど一緒にどうかな?」

遠慮しますって言え、遠慮しますって言え。

「もしかしてアイツの?だよな」

「そう、サンタクロースの墓」

頭が痛くなってきた。



街から少し離れた墓地は、本当に何もない。中には名前も刻まれていない墓石もあると聞いたことがある。いわゆる嫌われ者や路地裏で死ぬような人達が行き着く終点駅。カップルの女の人が花をそっとサンタクロースに送ると、ふうっと男の人が空気を漏らした。一仕事終えたような、そんな雰囲気を感じた。

「今年はサンタやらないんだな」

おじさんが口を開いた。

「ぐふっ、…き、君も同じこと言うんだね」

ウフフと女の人が笑った。何を言っているのか何一つわからないが、仲がよろしいことで。

「仲がよろしいことで」

「もう…。ところでその子は?」

「あ、私も気になってました。もし宜しければ教えてもらえますか?」

「コイツは、その…拾ったんだ」

二人が驚きの声を上げる。口元を手で隠してヒソヒソ話を始めた。なんだか私が恥ずかしくなってきた。

「まあ、複雑な理由があるとはいえ、君にとって大事な人なんだね」

カップルの二人がすごくニヤニヤと笑っているのが見えなくても想像できる。

おじさんは何を思ったのか、ハッとして、

「お、俺はロリコンじゃない!」

「「いえ、まだ何も言ってないです」」

え?違うの?

「俺は、コイツと初めて会った時、…可哀そうだと思ったんだ」

空気がスーッと整えられていく。背中に触れているだけでも真剣に伝えようとする必死さが感じられる。

「それまで俺は他の人間なんてゴミ屑以下としか見てなかったんだ。アイツが死んで、友人のお前に会ってプレゼントを貰って。その後、お前が落とした一個のプレゼントを見つけてしまったんだよ。」

男の人が、あちゃーと声を漏らす。おじさんの話は続く。

「今になって思えば、コイツとの日々は奇跡なのかなと思うときもあった。だけど、コイツに出会ったことが例え偶然だとしても、これから先は偶然なんかじゃない。俺とコイツの二人で選んで歩いていくって、そう決めたんだ」

思わず、うわあああっと叫んでしまうかところだった。起きていることがバレないように我慢するのは、大変で、また泣いちゃいそうになってきた。そんなこと言われたら、私の返事なんていらないじゃないか。引き出しの一番奥にしまい隠している気持ちが「嬉しい!」って声を荒げている。ああ、本当に生きててよかった。

それから恋人たちと別れた後、家に帰る道のりが長く、とても長く感じた。






サンタクロースが死んでしまった。もうプレゼントはもらえない。だけど、これからは自分たちが同じように誰かに渡す番だ。好きな人へ、愛してる人へ。一緒に過ごす時間が短くても長くても、離れたくないと二人が思い続けているという合図を風船を投げあうように確かめ合おう。気分が優れない時は同じように落ち込んで泣いたり、どこか楽しいところへ遊んでみよう。それだけが誰かのサンタクロースであり続ける秘訣だろう。

来ない来ないと嘆いていないか。

渡す人がいないなら、墓参りすればいい。きっとサンタクロースたちが眠っているだろう。お疲れの意味もこめて、何か渡してみたらどうだろうか。


 

「プレゼントを誰かに渡してみないかい?」



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