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友人

あいつに初めて会ったのは、お互いに学生だった頃だった。田舎の学校で寮生活している悪ガキ二人といえば僕らの名前をみんなが口をそろえて言った。しかし違う。むしろ僕だけは模範的な生徒であったと思う。そんなことをお前に言うときっと失笑して「この嘘つき野郎」とか他にもいわれのない虚実を愚痴ってくるだろう。

黙とうを済ませた僕は目を見開く。そう、お前は死んだ。僕はらしくない格好でお前の墓の前にいるよ。かなり昔のことばかり思い出してしまって

「あの時の怒りが再発して、収まらねえよ」

イライラしてきた。墓を掘り起こして一発ドカンと殴ってやりたい。そんなお前は学校の授業より、バカみたいなことが大好きで、他人のことなんか考えもしない、いや違ったか。小さな子供たちに対しては別人のように接していたらしいな。周りはロリコンだのペドだの囁いていたが、僕は違うと確信していたし純粋な生き方だと代わりに叫んでやったよ。…死ぬほど恥ずかしかった。いつもはお前の暴走にも似た行動を止める側だった僕が少し慣れないことしてしまった。

空を見上げると粉雪がユラユラ震えているのが可愛く見えた。毎週のようにお菓子やおもちゃをどんなに意地悪な子供にも分け与え、それも毎週のように繰り返して…。

「どうやったらコレを毎週のようにできるんだよ…」

彼が死ぬを知る前日、家のポストに一枚の紙きれ(結局、彼の遺書が見当たらなかったらしいので)、もとい遺書の最初で最後の願いを叶えようと残業に続く残業。貯めても貯めても目標額まで果てしなく、途中で「こんなことしたって意味なんかない」「そもそもアイツと僕は親友でも、もしかしたらトモダチとも思ってないかもしれない」諦める理由ばかり考えるようになってしまう一歩寸前で、聞いてしまったんだ。

母と子供の温かな会話を。今年はサンタは来るかな?いい子にしてたからきっとくるよ。

その様子を見ている孤児の瞳を、見てしまった。これは…ずるいね。それまで悩んでいたものが雪のように解けていった。

クリスマスイブ、ギリギリのところでプレゼント全部と配る予定の子供を確認して。服装も赤く、トナカイは…いらないな。そして今、お前の前で約束を果たす。もし警察にでも掴まったらお前を一生恨んでやる。そして、僕は一個果実を供えると何故か無性に寂しくなった。今更悲しくなってきた。聞いた話によると、お前の体はボロボロで、食事もろくに摂っていなかったらしい。毎日どこかでギャンブルばかりで、三回ほど山を当てると何も言わずにどこかへ去っていったという。どこかの大富豪の女だ、巨額の借金が、いやいやもしかして…。誰もが予想だにしてなかった彼の人生の終わり。だから、葬儀には胡散臭い人間ばかりが集まって異様な雰囲気だった。ある人が言っていた。「まるで彼はサンタクロースだ」と。それは褒め過ぎだ、と少し笑ってしまった。わらってしまった…。

働きもしないで、毎日ギャンブルなどで集めた大金を知らない子供の為に使ってしまって。自分の食べたいもの、家、なんだって買えたし、もっと生きていただろう。都合のいい時だけ僕の所に来て危険なことに巻き込んで。囮にされたこともある。肩車を100回したら99回は僕が下になる。そんな関係。

今でもずっとお前の行動や考えにハラハラしてばっかりだ。

コレが終わったら久しぶりに酒でも飲もうか。

ガキの頃、無理やり飲まされた時以来だな。

そろそろ時間だ。僕らはめそめそ泣くなんてこと、ありえないな。

「メリークリスマス」





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