桃園開幕
天空を舞う鷹を眺める、地を這う犬のように。
彼らにもはや届くことはない、と悟ったのはいつだったか。
才能の差……ばかりとは言えない。
さぼった時もあった。
回り道も随分してきた。
元来た道を戻った時もあったし、ずっと足踏みを続けてきたこともあった。
だからこれは自業自得……自分がしてきた行いが招いた当然の結果なのだ。
寝転んだ時に感じる桃の香しい香りを遠くに感じる。
本日の儀式に俺は呼ばれず、そして今後も呼ばれることはない。
高みへ至る道を、既に転がり落ちていた。
成すこともなく、ただ無駄に過ごす日々。
だがそんな俺にも少しばかりのプライドはあるのだ。
異世界に来て十五年……理不尽な目に合うことも多かったが、それなりに知り合いも出来たし、俺なんかに付き合ってくれる人間も少なからずいる。
ふと下を見れば、銀髪の青年と、白髪赤目の少女が丘を登って来るのを見かける。
異世界にて新しくできた弟と妹、家族だ。
せめて彼らに幸せな日々を……。
新しくできた家族に健やかなる一生を……。
それだけを想い、俺は目を閉じる。
戦乱は……すぐそばまで迫っていた。