ごめんなさいね
私はもう死んでいる!!
はい、ごめんなさい。何か書こうとしたらこんな書き出しになってしまいました。反省はしてない!
そんな訳でこの手紙を読んでいるということは、私はもうこの世にはいないということになります。
まあ、末期ガンだったから仕方無いな。
さて、あなたのこれからの話をしましょう。
まずは家の隅に溜まっているであろうゴミを出して下さい。出したら掃除ですが、細かいことは私の文机の引き出しに入っているメモを読んでくれ!説明が面倒くさい。
ちなみにこの手紙は死期が近いのではっちゃけて書きました!その場のノリで書いているので文体がよく変わります。
次にやることは料理です。どうせ私が入院している間、ずっとインスタントでいたでしょう。ボケますよ、そんな生活していると。
本棚に置いておいた『60歳から始める料理本』を読んで作って下さい。昔から私の味付けに文句言ってたクセに自分で作らなかったんですから、自分の味をお探しなさい。
ご近所さんとの付き合いは欠かせません!
どうせ年寄り扱いされるのを嫌がって老人ホームには入らないでしょうからね。
孤独死なんて世間に迷惑をかける死に方はしないでほしいですよ。
いい加減にあの子と仲直りしてもいいんじゃないですか?
そりゃあの子が悪いですけど、いつまでも引きずってると後悔しますよ。
孫もできたようですし、6ヶ月だそうです。
女の子ですよ、あなたが望んでいた。
私が産めなかった、といえば恨んでいるみたいですけど、別に恨んでませんよ。ただ、「自分で産んでみればいい」とは思いましたけど……オホホホ。
孫を可愛がって下さいな。
私は生まれる前に死んでいるでしょう。そんな気がします。私の勘が当たるのは知っているでしょう?お願いしますよ。
私のことは美人で清楚で優しくて気立てがよくてまさに大和撫子だったと教えておいて下さい。死んでいるので真実は墓の中ですよ(笑)
このぐらいですね、伝えておきたいことは。
最後に
ごめんなさいね、先に逝くことになってしまって。
本当ならあなたを看取って悠々自適な老後を過ごして、世界一周でもして土産話を持ってあなたのところに逝くつもりでした。
まさか私が先に逝くことになるなんて、予定が狂いました。
あなたは頑固の文句言いで口が悪かったですけど、それでも私には優しい人でした。
ただ、不器用なだけの人でした。
私には勿体ないくらい、いい男でしたよ?
昔、自分がおモテになっていたの知らなかったでしょう?
口は悪いけど根が優しい人だって、女学校の頃は噂になってましたよ。
そんなあなたに選んでもらった私は幸せ者ですよ。過去形ではなく、死んだ今も幸せですよ。
長くなってしまいましたね、終わりにしましょう。
私の代わりに世界一周してきて下さいね?
あなたの土産話を楽しみにしております。
「このバカが」
「最後の最後で俺を泣かせるんじゃねぇよ……」
「……仕方無ぇな、孫の顔見て、世界一周行くか」
綺麗な死に方がしたい
そんな風に考えてしまいます