#66:あり得ない
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【前話のあらすじ:戻ってきたロブ、ガストンと合流したクロムたち。キールはその前に、既に「エクリプシア」へと足を向けていた。少年は、「クロム」の名を連呼したと聞かされ、嫌な予感を覚える。キールは少年から話を聞き、クロムたちのもとへ、引き返すのだった……】
クロムはいささか驚いていた。
キールが戻ってきたからではなく、キールが少年を連れていたからである。
キールは、レイ以外のことには、冷めた対応をする。
興味のあること以外への意識が希薄なのだ。
そういう意味では、自分と同種の類なのだと思う。
緊張した面持ちの子供の手を引いている。
キールは、顔は澄ましているが、それでも、異様な光景だった。
キールの認めた子供。利発なのは、まず間違いないだろう。
「貴方のお友達からの伝言を預かってるわ」
キールの言葉に少年の顔がさらに強張る。
クロムは、少年をじっと見つめた。
武術の腕はない。
体は華奢で、そのうえ、構えも隙だらけ。
昔のキールと同じ。
行動する時は、荷物になるタイプだ。
「クロム、貴方、無表情すぎて、怖いわ」
キールが、レイ様以外に思いやりを持つ。
それは珍しいことだった。
「長年の”仕事”で染みついた癖だ。気にするな」
クロムの言葉に、キールが”やれやれ”とでも言うように、首を横に振る。
「ゼノさんから、伝言を預かっているんですよね?」
ロブが少しかがんで、少年と目線を合わせる。
ロブもガストンも、"キール"について、踏み込んでこなかった。
理由はわからなかったが、今は、その方がありがたかった。
ロブの穏やかな笑顔で、少年の緊張は少し解れたようだった。
「そ、その……」
少年は、そう言って、事の顛末を話し始めた。
少年の話を聞いた一同は、皆、何かを思案するように黙っていた。
既に夕刻だった。
陽が落ちかけ、明後日には、文議が始まる。
「レイ様に会いに行く」それがクロムの言葉だった。
「危険すぎる」そんな言葉は誰も吐かなかった。
レイが捕まり、ゼノも捕らえられている。
五大公爵家が敵に回り、魔族や教会も敵である可能性が高かった。
そんな状況下で、冒険者パーティーを探さなければならない。
それも明日までに。
「明朝、ここに集合だ。いいな?」
クロムは、皆の返事を待たずに、人混みの中をかき分け、裏路地に入っていく。
裏路地を進みながら、クロムは考えていた。
けれど、考えれば考えるほど、わからなくなる一方だった。
レイは、五大公爵家に陥れられたのか。
五大公爵家ではない、別の何かに陥れられたのではないか。
そんな気がした。
レイがリアンのもとを尋ねたのは必然だったが、尋ねた時分は偶然だった。
もし、自分がレイを陥れるとしたら……
そこまで考えて、ぞっとする。
レイが敵になる。
少なくとも、自分には、レイが負ける姿が想像できなかった。
たとえ、どんな状況であろうと、最後には、”勝利”を手にしている。
それが、クロムの知り得る限りのレイだった。
とにかく、どう考えても、リアンが殺された直後にレイがリアンのもとへ辿り着く。
この状況を意図的につくるとしたら、レイが牢へ向かうと誰かに告げた時に、それを知る必要があった。
しかし、当然そうなれば、実行犯とレイはどこかで鉢合わせになる。
つまり、レイの目をごまかせるだけの実力をもった魔族。
ベルー・ドンギヌスとやらが、魔族だとしても、大した情報は持っていないように思えた。
ただ、発端はベルーとやらなのだろう。
学園の試験で、散々に打ち負かされたと聞いた。
もし、それを漏らせば、リアンの事も含めて、気づく魔族もいるはずだった。
寮内にいた魔族を討伐したとも聞いた。
そうなれば、尚更だ。
ただ、セドリックはあり得ない。
あれは弱すぎる。
何より、監視していた。レイに近づく、学園の生徒を。
レイがリアンのもとへ向かうことを、誰かに漏らす挙動をした生徒はいなかった。
しかし、五大公爵家が事に便乗したとしても、アーノットが来た。
ゼノはそう言っていた。
いくらなんでも、アーノットが来るのが早すぎた。
その前に、ブラスター家当主、ヘインツ・ブラスターと面会していたようだった。
そして、ロブたちから聞いたハップス家。少年が口にしたグラスナー家。
そこまで考えると、一つの結論が浮かび上がった。
「そんな……いや、あり得ない」
裏路地だというのに、今日は人が多かった。
殺気はない。構えも隙だらけ。
裕福そうな手。
問題ない。普通の民だ。
ドン。
肩と肩がぶつかる。
「悪い……」そう呟いたクロムのそばに、一通の手紙が落ちる。
「落としたぞ……」手紙を拾い上げた先に、男はいなかった。
「はぁ……」少しため息をついたクロムは、ふと署名に目を留めた。
「アストラル商会 会頭 ゼノ……」
ゼノの字ではない。
それは確かだった。
ただ、自分に届けられたものだというのは確かだった。
アストラル商会 副会頭をしていた時、ゼノと一緒に市井を回った。
その時に、自分とゼノのつながりを知ったのだろう。
封を切る動作が、いつになくぎこちなかった。
手紙が来るということは、ゼノはまだ生きているということ。
そして、向こうに、まだ何らかの目的があるということだ。
手紙は一行だった。
「助けにきてほしい」
さっきから、視線を感じる。
となると、キールやゼファールたちと一緒にいたことも、いずれ、人伝にバレるだろう。
「……ふぐぅっ……」嗚咽を漏らしながら、座り込む。
予想通り、一人の男が寄ってきた。
「……兄ちゃん、どうしたんだい?」
クロムは泣き腫らした目で男を見上げる。
心配そうな表情。口調。目線。
それしきで騙せるとでも思っているのだろうか……
瞳の奥は無表情。
かがんではいるものの、最低限の防御はいつでも取れる体勢。
なにより、鼻に微かに届いてくる、”死”の匂い。
暗殺者特有のにおいだった。
人を殺めれば、それは拭いきれないほどの因果を伴って、纏わりつくのだろう。
「ああ。大丈夫だ。ありがとう」
男は安堵した。
「そうか。気をつけてな」
男が去っていく。
肩が少し揺れている。
どうやら、答えは正解だったようだ。
ゼノを真剣に探さないことを不審に思い、人質としての効力を失ったと危惧した。
そんなとこだろう。
あの少年も、大方、逃げたのではなく、逃がされたのだろう。
レイの指示がないと、ここまで後手に回ってしまう。
そのことが、ひどく自分を惨めにしている。
少なくとも、ゼノはまだ生かされるはずだ。
映像ではなく、手紙が来たということは、きっとゼノが屈していないということだろう。
まずは、レイに会う。
それは、指示を仰ぐためではなく、レイの意図を探るため。
何を考え、何を思い、何を狙っているのか。
夜が深まっていく。
この先に待つ運命が険しく長い道のりであるかの如く、不気味に、煌々と、月がその姿を晒していた。
―――――――――――――――――
【今話の極小情報:】今回は、「キール」について
・キールがレイのメイドになった理由:レイの父、グリフィス王が任じたから。
キールは、元々、孤児だった。
キールが5歳の時、王都の視察にお忍びで出ていた、グリフィス王と偶然出会う。
利発で気が利き、容姿も整っている。
そういった理由で、レイが生まれるちょうど、1週間前に、メイドとして、王宮に上がった。
レイが生まれると、グリフィス王は、キールに世話を頼んだ。
というのも、キールは、国の為ではなく、レイの為に動いてくれる。
そう判断したからであった。
・グリフィス王が判断した理由は、キール以外のメイドが、皆、自分の顔色をうかがうからである。
歯に衣着せぬ物言いのキールなら、人の顔色を伺うことなく、きちんと教育すると思ったのである。
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、「レイ」登場します!
ふっと二言:「活動報告を初めて、書いてみました。というのも、修文作業があったからなのですが。徹夜しても、未だに修文が終わらないということは、筆者の文章力が上がった(自称)ということなんでしょうか?読者の皆様の応援・お付き合いのおかげです。「昼までにはなんとか終わらせよう」と思っておりますので、「昼頃、作品を投稿する」ときに、またお伝えできればと……」
~これからも、応援・お付き合い頂ければ、幸いです!~
—―—―—―—―【他作品もよろしければ!】
更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!
—――・『神々の審判ー選定された最強の「駒」は、五度目の「今世」、「神」を屠るー京亮ver』
「そろそろ、終わらせようか?神々の遊戯。会いたい人がいるんでね」
理不尽な運命を、圧倒的な力で覆す!
【無双×成り上がり×転生×最強×ゲーム】—―「普通」を演じることを辞めた俺の叛逆の先には!?
―――
・「一生を病室で終えた俺、呪いが解けて、天下獲る~貧村に捨てられたけど、"最強"に魔改造します~ 」
「俺だけが自由なんて意味ないよ。天下も自由な場所にならないとさ」
不自由だった前世を、自由を得た今世で破壊する!
【戦×無双×成り上がり×領地経営】 —―自由を得た俺の天下取りの果てには!?
⇧※本作です。これからも、応援・お付き合いのほど、よろしくお願いいたします!




